【岸田首相暗殺未遂―有識者の視点】 襲撃の再発 教団叩きより警備の強化を

元英BBCアジア特派員 ハンフリー・ホークスリー氏

筒状の物体が投げ込まれ、身をすくめる岸田文雄首相(中央)= 15日午前、和歌山市(目撃者提供)(一部画像処理しています)

日本の元首相が恨みを持つ単独犯に殺害されてから1年も経(た)たないうちに、現職の首相が恨みを持つ別の単独犯が投げ付けたパイプ爆弾で攻撃されそうになった。

和歌山の漁港で行われた選挙集会の警備は驚くほど緩く、最前列の聴衆は岸田文雄首相に手が届きそうな距離だった。

Humphrey Hawksley 1980年代から英BBCの海外特派員として世界各国を取材。中国支局開設に携わるなどアジア情勢に精通。中国の南シナ海進出をテーマにした『Asian Waters』など著書多数。

犯人を地面にねじ伏せたのは、地元の漁師たちだった。漁師たちは、木村隆二容疑者(24)だけが聴衆の中でリュックサックを背負っており、疑うべきだったと振り返った。

安倍晋三元首相が暗殺された後、国家的な反省点となるべきは、有力政治家の警護を強化することだった。ところが、なぜかメディアや議論は、旧統一教会に集中してしまった。

この2度目の襲撃は、まるでリンドン・ジョンソン米大統領が、前任のジョン・F・ケネディ氏が射殺された数カ月後に、屋根がオープンのリムジンで選挙活動を行うようなものだ。米大統領警護隊(シークレットサービス)は事件を受け、リムジンの屋根と窓を装甲化して大統領を守るという対応を取った。

これに対し、日本の対応は、首相の警護にはほとんど変更を加えず、代わりに、視覚的に華やかな合同結婚式を行うことで知られる型破りな宗教団体に対して国民的議論を向けてしまったようだ。

旧統一教会に対する非難は、強引な資金集めや、安倍氏を含む与党・自民党議員との関係を実力以上に築いたことなどに向けられた。政府の閣僚が辞任に追い込まれ、日本から教団を追放する動きが起きている。

しかし、なぜなのか。

この比較的小さな宗教運動は、故文鮮明師によって1954年に韓国ソウルで設立された。文師は神との直接的なつながりを主張し、他のキリスト教の解釈とは一線を画してきた。文師の運動の特徴は、朝鮮半島の統一と公然とした反共主義だった。

日本では、1億2500万人の人口のうちわずか7万人の会員しかいない。ほとんどの日本人は神道・仏教を信仰している。旧統一教会は小さな存在である。

安倍氏殺害に対する日本の反応は、まるでヘッドライトの光で動けなくなった鹿のようであり、メディアは安倍氏暗殺について、警護の不備や銃撃犯よりも大きな理由を探し出そうとしている。

旧統一教会への追い打ちは、まるで燎原の火のようだ。どのメディアも教団について良い言葉を言うことができない。どの政治家も近づくことができない。

だが、旧統一教会は一体どんな過ちを犯したのか。世界中では宗教と政治と権力が絡み合っているが、そのやり方と何が違うのか。

銃撃犯の不満は20年前にさかのぼり、教会が母親から1億円を奪い、家庭を崩壊させたと非難している。確かにこれは大金だ。教団はこの献金方針をやめたとしている。

宗教団体の不謹慎な資金集めは、今に始まったことではない。

実際、マルティン・ルターは1517年、ヴィッテンベルク教会の扉に、金銭的支払いによる罪の償いに対する不満を釘(くぎ)で打ち付け、プロテスタント宗教改革に火を付けた。

旧統一教会の政治とのつながりは、おかしいことではない。この教団ははっきりとした保守派であり、米国の共和党や価値観と強いつながりを持つワシントン・タイムズ紙を所有している。要するに、教団は立場を明確にしているのだ。

spot_img
Google Translate »