世界日報 Web版

傾いた石垣島の悲しい伝説の岩


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 石垣市で地元の人々に愛され、観光スポットになっている「野底(ぬすく)マーペーが 傾いた」。石垣市は1月末、野底岳、別名「野底マーペー」山頂の岩が傾いていることを確認。さっそく地元では大きなニュースとなった。

 市農政経済課は、地盤侵食などの影響を受ける可能性もあるとみて、「岩に登ったり、岩の下に入らないように」と注意を喚起。石垣市長選があった4日には、登山口に立ち入り禁止のテープが貼られていた。

 マーペーとは女性の名前だ。特徴的な形のこの山には、マーペーにまつわる悲しく切ない伝説が残されている。

 八重山諸島の黒島出身のマーペーはある日、石垣島に連れて行かれ、野底村で朝から晩まで畑仕事をしていた。そんな中、マラリアが村を襲い、マーペーもマラリアを患うと、幼なじみで愛するカニムイの住む黒島を見ようと野底岳に登った。ところが、石垣島最高峰の於茂登(おもと)岳に視界をさえぎられ、黒島を見ることができず、悲しみのあまりそのまま岩になってしまったという話だ。

 物語の背景は、1730年代に首里王府による八重山開拓のための政策の一環として強制移住させられたこと。八重山諸島の住民は石垣島に移住するも、マラリアで命を落とした人が多いとされる。

 野底岳の頂上は黒島の方向を向いているのだが、これが傾いてしまったとあれば、あまりにも悲しいというわけだ。

 実際、2人の間に立ちはだかった於茂登岳は標高526㍍と、野底岳の約2倍の高さ。今では、恋愛成就を目的に登山する女性が多く、恋愛のパワースポットとなっている。

 復旧の目途は立っていないというが、一日も早く元の姿に戻ることを願う市民や関係者は多い。

(T)