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自衛隊明記を聞かず抽象的質問重ね回答誘導する朝日の憲法世論調査


◆朝日調査も改憲増加

 憲法記念日の3日、各紙に憲法をめぐる世論調査結果が載った。いずれも改憲賛成が反対を上回っている。

 ざっと紹介すると、読売=改憲56%、護憲40%。毎日=改憲48%、護憲31%。朝日=改憲45%、護憲44%。護憲の朝日調査をもってしても改憲が増えた。新型コロナウイルスなどの感染症や大規模災害に対応する緊急事態条項の新設については、共同通信=改憲57%、護憲42%(4月30日配信)。読売=改憲71%、護憲26%。朝日=改憲33%、護憲54%。憲法9条を改正して自衛隊の存在明記は、読売=改憲55%、護憲38%。毎日=改憲51%、護憲30%。

 いつものことだが、朝日の調査では護憲が異様に増える。郵送調査で回収率は73%とあるから、3割近い無回答者の多くが保守派だったか。新聞の世論調査とりわけ朝日にはバイアスがかかる。とりわけ疑問なのは9条と自衛隊に関する調査だ。朝日の質問と結果はこうだ(数字は%)。

 ◆憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか。

 変えるほうがよい30▽変えないほうがよい61

 ◆いまの自衛隊は、憲法に違反していると思いますか。違反していないと思いますか。

 違反している16▽違反していない73

 質問はこれっきりだ。憲法学者の多数派は自衛隊違憲論だそうだが、朝日調査ではわずか16%。このギャップは大きい。9条護憲派の多数も自衛隊違憲論に与(くみ)さない。ならば、憲法と自衛隊について読売のようにこう聞くべきだ。

 ◆自民党は、戦力を持たないことを定めた憲法9条2項を維持したうえで、自衛隊の根拠規定を追加する案を検討しています。この案に賛成ですか、反対ですか。

 あるいは毎日のようにズバリこう聞くべきだ。

 ◆憲法9条を改正して自衛隊の存在を明記することに賛成ですか。

◆安倍改憲案強く意識

 読毎の回答は前記のように改憲が20%ほど上回り、護憲を圧倒している。なぜ朝日は自衛隊明記を聞かなかったのか。逃げたな、朝日。賛成派が多数を占めると想定して敢(あ)えて問わなかったように思えてならない。

 というのも朝日3日付「記者解説/改憲 拮抗する世論」で世論調査部の磯部佳孝氏がこう書いていたからだ。

 「(安倍晋三氏は)17年5月、憲法9条に自衛隊の存在を明記するなどの改憲案を表明し、新憲法の20年施行に意欲を示した。こうして安倍改憲の中身が明らかになった後、18年の調査では、安倍改憲への『賛成』がすべての年代で低下した」

 ことほど左様に朝日は自衛隊明記の改憲案にこだわり、それを安倍改憲が進まない根拠にしていた。それにもかかわらず、今回調査では質問から外した。磯部氏は改憲理由に「古くなったから」が少なからずあり、「改憲必要派の内実は、ふんわりとした意識によるもの」とし、「調査結果を踏まえると、安倍氏ら政治家が改憲の旗を振っても国民の間で機運が盛り上がらない、というのもうなずける」と改憲派増に水を差している。

◆中国の脅威も問わず

 こんな解説はばかばかしいったらありゃしない、だ。そもそも朝日の質問自体が「ふんわりとした意識」しか問うていない。読売のように尖閣諸島沖への中国公船侵入の安保脅威も問わなければ(脅威94%)、日米同盟の強化も問わない(強化82%)。「いまの暮らし向きをどう感じていますか」「いまの社会では、少数意見がどの程度尊重されていると思いますか」といった抽象的質問を重ね、その後にふんわりと憲法質問に入っている。これでは「キャリーオーバー効果」(前の質問の内容が後の質問に影響を及ぼす一種の誘導)を疑わざるを得ない。

 改憲派が増えているのは安保やコロナ禍の足元を見据えるからだろう。その世論から朝日はふんわりと軽く浮き、漂っている。空想的平和主義の所産である。

(増 記代司)