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中曽根元首相追悼の社説は書かず「赤旗」ファンに評伝を書かせた朝日


◆他紙は全て社説掲載

 元首相の中曽根康弘氏は戦後体制をしばしば「蒸留水」に譬(たと)えた。2006年に見直された教育基本法(旧法)はこんな具合だ。

 「(内容は)世界で通用する立派なヒューマニスティックな教育基本法ではあるんですね。民主主義とか自由とか人格とかね。だけれども一番大事な国とか国家とか、あるいは共同体、あるいは郷土、家庭、文化、伝統、歴史、そういうものが欠落しているんですよね。あれはブラジルに持っていっても適用できるし、メキシコに持っていっても適用できる。あれは蒸留水なんですよ。日本の水の教育基本法ではないんです」(産経新聞2000年8月17日付)

 国家・国民のアイデンティティーが日本の水。それを抜きに普遍的・理想的な価値観を求めても身に付かない。「花」は「桜の花」や「菊の花」「バラの花」といった属性を通して存在する。蒸留水のような「花」は存在しない。憲法もまた然(しか)り、だから日本の水の憲法に改める―。

 そんな中曽根氏が亡くなった。その業績は今さら言うまでもあるまい。戦後政治を共に駆け抜けてきた渡辺恒雄・読売主筆は「私にとっては親の死と同様のショックです」、同じ読売の橋本五郎・特別編集委員は「まさに『巨星墜(お)つ』」と歎じておられる。読売ならずとも、同感する新聞人は多かろう。

 各紙11月30日付朝刊はそろって1面トップで報じ、評伝、各界・海外の追悼の声、写真特集などに紙面を割いている。社説も一斉に掲げた。読売は「戦後史に刻む『大統領的』首相」と言い、産経は「指導力発揮の政治貫いた」とたたえ、毎日は「戦後政治の針路を変えた」と評した。日経は「現実を直視した中曽根政治」に着目し、東京は「権力の魔性を自戒して」と安倍政治にくぎを刺す。本紙はずばり「冷戦終結に寄与し改憲に尽力」と総括している。

◆1面トップも小さめ

 さて、こう羅列すれば、お分かりになっただろう。そう、社説も一斉と書いたが、朝日にはないのである。1面トップは他紙と変わらなかったが、中央紙で唯一、社説が欠落していた。扱いも他紙に比べて小さい。評伝はあるにはあった。だが、末尾の筆者名を見て驚いた。「元本社コラムニスト・早野透」とあったからだ。

 早野氏は北朝鮮による拉致被害者を「朝鮮半島に拉致された」と書いた人物で、中曽根政治の足を引っ張り続けた土井たか子・元社会党委員長のシンパとして名高い。評伝にはこんな一文がある。

 「『敗戦は民族の恥』と感じた27歳の中曽根氏が矛先を向けたのは国家指導者のだらしなさである。『赤旗と戦う』ため内務省の退職金で買った『白い』自転車に乗って衆院選挙に打って出る」

 「赤旗と戦う」ことにやけにこだわっている。それもそのはず、早野氏は正真正銘の「赤旗」ファンなのだ。「赤旗」とは共産党機関紙「しんぶん赤旗」。同紙の創刊85周年にこんな寄稿文がある(13年2月1日付)。

 「いわゆる一般紙の政治記者だった私の楽しみは、例えば、新内閣ができたときの『閣僚の横顔』である。一般紙の『横顔』はほめるでもないけなすでもない微温的な人物紹介なのに対して、『赤旗』は、そのあしき行動、失言を書き立てて、すこぶる面白い。…いわば極北のアンテナとして私は敬意を表する。その昔、『日本帝国主義の戦争準備と斗(たたか)へ!』と書き、『一人の兵士も送るな』と反戦を貫いた紙面は、やはり歴史への尊い貢献といっていい」

 戦前の「赤旗」はソ連の手先となり、「戦争を内乱へ」を企て、武装闘争を繰り広げ、「スパイに死を」と公然と人殺しを叫んだ。それが「歴史への尊い貢献」とは共産主義者しか吐かない言葉だ。

◆赤みがかった蒸留水

 こんな人物を朝日が中曽根氏の追悼記事に登場させるのは嫌味でしかない。朝日の論調も蒸留水だが、こっちはいささか赤みがかっている。

(増 記代司)