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朝日新聞の慰安婦報道、新たに2本取り消し


第三者委の指摘受け訂正

 朝日新聞社は23日付朝刊で、新たに慰安婦記事の訂正とおわび、説明の全1㌻の特集を掲載した。その中で、同社が設置した従軍慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書や独自に検討した結果を受け、強制連行に携わったとする吉田清治氏の証言を取り上げた記事について、新たに「連載 韓国・朝鮮人Ⅱ27 命令忠実に実行 抵抗すれば木剣」(1980年3月7日朝刊、川崎・横浜東部版)と「連載 うずく傷跡 朝鮮人強制連行の現在① 徴用に新郎奪われて」(84年1月17日夕刊 大阪本社版)の2本を取り消した。

用語メモの「朝鮮人慰安婦」数、「8万~20万人」は「わかっていない」に

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慰安婦報道で新たに記事取り消し、訂正、おわび、説明を一括して特集した朝日新聞紙面(12月23日付)

 また92年1月11日付第1面掲載の「軍関与示す資料」の記事に付けた用語メモで「8万~20万人」としていた「強制連行した」朝鮮人慰安婦の人数などについて、「強制連行した」などの表現は誤りで取り消し、人数などは「はっきりわかっていない」とする断り書きをデータベース上に付記するとした。

 さらに、8月5日の検証紙面で取り消した16本の記事のうち、掲載日などのデータが未公表だった4本(小紙が10月18日付などで特定し公表)の中の1本、「女たちの太平洋戦争 従軍慰安婦 木剣ふるい無理やり動員」(91年5月22日朝刊、大阪本社版)を明らかにした。

 吉田氏の証言を取り上げた記事は、ほかに「朝鮮人こうして連行 樺太裁判で体験を証言」(82年10月1日付)があり、22日の第三者委員会の記者会見で小紙がその取り扱いについて問いただした。この記事についても、同社は裁判での証言を伝えた内容は取り消しになじまないとし、データベース上に「証言に信用性はなく、虚偽だと考えられる」などの注釈を加えるとした。

 なお、軍需工場などに動員された「女子勤労挺身隊」と慰安婦を混同した過去記事について、第三者委の22日の報告書が「読者の誤解を招くものだった」と指摘したことに対し「長期間にわたり対応を怠ったことをおわびし、訂正する」と謝罪した。8月5日付の検証記事では挺身隊と慰安婦の混同を認めたが、謝罪はしなかった。

 韓国人の元慰安婦の証言を初めて取り上げた1991年8月11日付朝刊の記事も「挺身隊の名で戦場に連行された事実はない」と訂正した上で、おわびした。

続「朝日新聞誤報」第三者委の報告書要旨

慰安婦報道が国際社会に与えた影響

 朝日新聞社のいわゆる従軍慰安婦問題での記事取り消しをめぐり、第三者委員会がまとめた報告書(要約版)のうち、専門的立場からの報告を併載した「12 国際社会に与えた影響」の要旨は次の通り。

〈岡本行夫委員・外交評論家、北岡伸一委員・国際大学学長〉

 今回インタビューした海外有識者にしても、日本軍が、直接、集団的、暴力的、計画的、に多くの女性を拉致し、暴行を加え、強制的に従軍慰安婦にした、というイメージが相当に定着している。

 朝日新聞がこうしたイメージの形成に大きな影響を及ぼした証拠も決定的ではない。

 しかし、韓国における慰安婦問題に対する過激な言説を、朝日新聞その他の日本のメディアはいわばエンドース(裏書き)してきた。その中で指導的な位置にあったのが朝日新聞である。それは、韓国における過激な慰安婦問題批判に弾みをつけ、さらに過激化させた。

 第三国からみれば、韓国におけるメディアが日本を批判し、日本の有力なメディアがそれと同調していれば、日本が間違っていると思うのも無理はない。朝日新聞が慰安婦問題の誇張されたイメージの形成に力を持ったと考えるのは、その意味においてである。

〈波多野澄雄委員・筑波大学名誉教授〉

 92年1月11日の朝日の1面トップの「軍関与」報道は、韓国メディアが軍による強制を明白にしたもの、と大きく報じ、韓国世論の対日批判を真相究明、謝罪、賠償という方向に一挙に向かわせる効果をもった。さらに宮沢訪韓の直前、「女子児童までもが挺身隊に」という韓国メディアの報道は、朝日の「軍関与」報道の相乗効果をもって「日本政府糾弾」の世論や運動を地方にも広げ、訪韓した宮沢首相は謝罪と反省をくり返すことになる。朝日の報道は宮沢訪韓にも影響を与え、韓国は対日交渉への利用を意図していた。

 朝日にとって「軍関与」とは、強要・強制の意味をもつものであった。統治下の朝鮮で日本官憲は「男性には労務や兵役を、女性には兵士の慰安という役割を強要した」のである(1月12日社説)。

 97年3月31日の特集記事で、それまでの「狭義の強制性」に傾いた報道から、吉田証言の危うさが明らかになって、河野談話を梃子として論点をすりかえた、と指摘されてもやむをえまい。

 朝日は、強制連行の実行者としての吉田氏を度々紙面に登場させたが、内外メディアに全く注目されず、その意味では女性の尊厳を貶めている日本、という国際的評判を広めたわけではない。

〈林香里委員・東京大院情報学環教授〉

 過去20年間の英・米・独・仏4カ国、10紙の慰安婦報道、合計約600本の記事、ならびに韓国の全国紙5紙の慰安婦報道合計1万4千本の記事を対象に、「国際社会に対する朝日新聞による慰安婦報道の影響」について、定量的分析を行った。

 その結果、朝日新聞が日本のメディアの中では欧米の報道機関によってもっとも頻繁に引用されているものの、引用数は31本にすぎなかった。

 韓国の慰安婦報道でも朝日新聞はもっとも頻繁に言及されていた。記事本数にすると827本あり、次に多い共同通信の378本を大きく引き離している。

 次に吉田清治氏の証言をもとにした報道の影響だが、本年8月5日以前に欧米の新聞で吉田氏が引用されている記事は3本だった。吉田証言の影響力は限定的と考えられる。

 韓国における吉田清治氏への言及も、全体に記事量からすると高くない。吉田氏が言及されていたのは68本。このうち、朝日新聞の引用がもっとも回数が多く、6本あった。