トップ国内防衛【連載】憲法改正 国会発議への船出(下)緊急事態、合区解消が先行か 最大公約数を探る改憲派各党

【連載】憲法改正 国会発議への船出(下)緊急事態、合区解消が先行か 最大公約数を探る改憲派各党

 

「緊急事態条項」について集中討議を行った衆院憲法審査会=4月23日、国会内
「緊急事態条項」について集中討議を行った衆院憲法審査会=4月23日、国会内

 今国会の憲法審査会で議論の軸となっているのは、自民党が提示する憲法改正4項目(①自衛隊明記②緊急事態条項③参院選挙区合区解消④教育の充実)だ。きっかけは、2017年の憲法記念日に当時の安倍晋三首相が「9条1項2項を維持したまま自衛隊を明記する」と提案したことだった。これを受け、同党の憲法改正推進本部が論点整理を行い、同年12月に4項目を発表した。

 元航空自衛隊総隊司令官で、アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム会長の大串康夫氏は、4項目の①について「自衛隊を追加するだけで、自主憲法制定を党是として結党した自民党、『国防軍』を明記した平成24年(12年)の日本国憲法改正草案からみても後退している」と手厳しい。

 半面、「初めて国会発議をして憲法改正を実現するには、とりあえずこれで行い、軍とするのはその次の改憲の時になるのではないか」と述べ、第一歩としての位置付けという見方を示した。

 安倍氏の提案は、国会発議に必要な「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」(96条)の確保を念頭に、連立を組む公明党の「加憲」路線に配慮したものとされる。しかし、公明は自衛隊の加憲に慎重で、緊急事態条項のうち選挙困難時の議員任期延長についても「参院の緊急集会(憲法54条2項)で対応可能」と主張した。結党時から護憲を掲げてきた公明は、「政権内野党」を自認し、自民の保守路線の「ブレーキ」を買って出た経緯があり、4項目提案も改憲論議の加速につながらなかった。

 局面が変わったのは、公明が連立を離脱し、日本維新の会が自民と連立を組んだことだ。自民・維新の連立政権合意書の中で憲法改正の実現が確認され、「ブレーキ」は「アクセル」に変わった。

 高市早苗首相は1月の衆院解散後の選挙期間中に憲法改正に言及し、2月の開票結果で自民が単独でも3分の2を超える議席を得ると、「改正に向けた挑戦を進める」と表明した。4月12日の自民党大会でも「来年の党大会までに発議のめどを立てたい」と述べ、政治日程に憲法改正を明確に位置付けた。

 自民党では改憲本部の会合で来春の国会発議に向けて「全党一丸で取り組む」ことが確認され、参院自民党では憲法改正実現議員連盟が発足するなど、機運を上げている。

 連立を組む維新は、衆院選マニフェストで「国会発議の実現」を掲げた。維新は①自衛権・自衛隊の明記②教育無償化③統治機構改革④憲法裁判所設置⑤緊急事態条項―などを提示しているが、重点は「政治を動かす」ための国会発議実現に置かれているとされる。

 他の野党にも国民民主党、参政党、日本保守党など改憲を掲げる政党が増え、中道改革連合やチームみらいも議論に前向きだ。ただし、各党の主張には隔たりがある。参院では与党が少数だが、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党の反対勢力を合わせても、発議阻止に必要な3分の1(83議席)には約30議席足りない。

 このため、参院で発議を実現するには、改憲に前向きな野党との間で合意可能な「最大公約数」を探ることが不可欠となる。衆院憲法審査会の古屋圭司会長は9日の会合で「緊急事態条項のうち、選挙困難時の議員任期延長は条文案を詰める段階にある」と述べた。国民民主の玉木雄一郎代表も「有力なテーマの一つが選挙困難事態における選挙期日、議員任期の特例の創設を含む緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正だと思う」と発言した。

 一方、改憲派の参政党の和田政宗衆院議員は、人工ウイルスが作られるなど「パンデミックによる緊急事態が演出できる」恐れを指摘し、「感染症の蔓延(まんえん)、パンデミックが含まれる緊急事態条項創設に反対」を表明した。各論を巡る調整は、今後の大きな焦点だ。

 東日本大震災では、被災地の地方選が延期された。国会議員の任期は憲法で定められており、選挙困難時の任期延長は検討課題となって当然だろう。また、参院憲法審査会では、鳥取・島根、徳島・高知の2合区を抱える参院選挙区の合区解消が先行議題となっている。いずれも議員の身分に関わるテーマであり、憲法改正も「まず隗(かい)より始めよ」との構図が浮かぶ。

(窪田伸雄)

【連載】憲法改正 国会発議への船出(上)試される軍なき国の同盟

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