
止まらないエスカレーション
高市首相が国会答弁で台湾有事に関する発言をすると中国が反発した。中国は高市首相の発言撤回と経済制裁で報復するが効果が出ない。そんな時に12月6日になると中国軍戦闘機が航空自衛隊戦闘機を2回にわたりロックオンした。さらに12月9日には中国とロシアの軍用機が共同で日本周辺を飛行した。
アメリカは以前から日米の共同訓練が予定されていたと報じるが、アメリカ空軍のB-52戦略爆撃機2機、航空自衛隊の戦闘機6機が12月10日に日本海海上で共同訓練を行った。さらに日本の防衛省は12月12日に、関東南方の海域で海上自衛隊と米海軍が共同訓練を実施したと発表した。以前から予定されていた訓練だとしても中国・日本・アメリカの動きが活発化している。
日本海海上における共同訓練の意味
アメリカ空軍のB-52戦略爆撃機2機と航空自衛隊の戦闘機6機が12月10日に日本海海上で共同訓練を行ったが、航空自衛隊のF-35戦闘機3機、F-15戦闘機3機が含まれていた。この共同訓練が以前から予定されていたのであれば、アメリカの国防線と作戦方針の手掛かりになる。
■日米が共同飛行訓練、10日に日本海で 米軍のB52爆撃機参加
https://jp.reuters.com/world/us/TAYMKHA5QRJPFPOZIDTQOOYKWQ-2025-12-11/
【アメリカの冷戦期における作戦方針】
・国土戦域の核戦争 =戦略核戦争(米ソ全面戦争)であり米国が戦う。
・前方戦域の核戦争 =戦域核戦で核保有国(米英仏)が連合して対処。
・前方戦域の通常戦争=通常戦で連合対処。
・覇権戦域の局地戦争=同盟国が第一次責任、米国は軍事援助
アメリカがアジアで想定する国防線は常に変化している。基本的に中国大陸の海岸線と朝鮮半島の38度線だが、アメリカ大統領が変わる度に台湾と日本列島のラインに変更されるサイクルが繰り返されている。このためアメリカの作戦方針はアメリカが想定する戦場だから、共同訓練から少なくとも今の想定されている戦場を推測できる。
アメリカが想定する戦場が台湾・日本列島のラインであれば覇権戦域の局地戦争となり、直接戦争するのは台湾と日本となりアメリカは台湾と日本を軍事支援する。さらにアメリカが想定する戦場が中国大陸の海岸線と朝鮮半島の38度線となれば前方戦域の通常戦争であり、通常戦によるアメリカ・台湾・日本の連合対処となる。
アメリカ空軍のB-52戦略爆撃機2機と航空自衛隊の戦闘機6機が12月10日に日本海海上で共同訓練を行ったが、これは爆撃機を用いた火力投射を中国大陸に置いていることを示唆している。さらに航空自衛隊のF-35ステルス戦闘機3機が参加していることから、ステルス性を活かした偵察・敵の捕捉・制空戦が示唆され、F-35戦闘機から受け取った敵の情報を元にF-15戦闘機が遠方からミサイルを発射する構図を読み取れる。
このためアメリカと日本の共同訓練は、アメリカが想定する戦場は中国大陸から朝鮮半島の38度線だと判明する。これまでのアメリカの台湾と日本に対する関与は覇権戦域の局地戦争だったが、中国の覇権拡大がアメリカの国防線を変更させた可能性がある。この仮説が正しければ、中国は高市首相に対してエスカレーションをしたことが逆に中国の立場を悪くしたと言える。
海上自衛隊とアメリカ海軍の共同訓練の意味
海上自衛隊と米海軍は12月8日から11日まで関東南方で共同訓練を実施した。これも以前から予定されていた共同訓練ならば、明らかにアメリカが想定する戦場が中国大陸から朝鮮半島の38度戦に移動していることを裏付ける。何故ならアメリカが台湾有事で台湾と日本を軍事支援する計画なら不要な訓練だ。
■海自と米海軍が共同訓練、空母ジョージ・ワシントンが参加
https://jp.reuters.com/world/security/ZGRFSUJW6NONTMYG3LVQCOC4MY-2025-12-12/
アメリカの機動論は他の国の基本とは異なり火力の発揮を重視する。アメリカ空軍ではB-52戦略爆撃機は遠方に大量の火力を敵に叩き付けることを目的としている。だがアメリカ軍の機動論は戦争史の経験則を無視しているから注意が必要だ。
【機動の目的論】
・「敵を窮地に陥れるように戦術的に運動すること」
・「敵の弱点に向かって運動することによって、敵の作戦計画を崩壊させ、敵指揮官や敵部隊の神経を麻痺させること」
【機能論】
「戦場において打撃手段を有する部隊の運動を戦術的に操作すること」
【アメリカの機動論】
「機動とは敵の弱点に向かって部隊を移動し、相対的に大きい火力を発揮して撃破することである」
基本的に軍隊の機動論は目的論と機能論に分けられるが、アメリカ軍の場合は機動論として一つになっている。このことからアメリカ軍はステルス戦闘機で中国軍機を捕捉と同時に制空戦を開始、さらにステルス戦闘機が捕捉した情報を後方の戦闘機に渡し、情報を受け取った戦闘機が遠方からミサイルを発射する。これが日米共同で行われ中国軍から制空権を奪うものと予測される。
航空機は火力だから、爆撃機だけではなく空母の艦載機まで含めた火力を中国に叩き付ける機動論が実行されることは間違いない。そうなれば、中国が台湾か日本に侵攻した時に集結した中国艦隊を火力で磨り潰し、その後B-52戦略爆撃機で中国沿岸部の基地機能を破壊する流れになるはずだ。
虎の尾を踏んだ張り子の虎
中国は強気で周辺国に覇権を拡大したことでアメリカの国益に手を出した。そんな時にアメリカ大統領はトランプ大統領に代わる。さらに日本は高市首相に代わり日米関係が良くなり中国との関係が悪化した。だが、これは悪いことではなく日米関係の強化に至った。ここへ高市首相の台湾有事発言と中国軍戦闘機による航空自衛隊戦闘機へのロックオン行為が中国の立場を悪くした。
これまでのアメリカは対中国方針を隠していたが、トランプ大統領に代わると想定する戦場を台湾から日本列島のラインから中国大陸から朝鮮半島の38度戦に戻している。これは台湾と日本には良いことで、アメリカは中国からの開戦を意図的に待っている可能性がある。何故なら中国は虎の尾を踏んだからだ。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)






