トップ国内防衛中露は戦略的脅威、自衛隊増強で太平洋進出牽制を

中露は戦略的脅威、自衛隊増強で太平洋進出牽制を

ロシアが自衛隊統合演習を恐れる

 ロシアは2022年にウクライナに侵攻したが今も勝利できない。それどころかロシア軍の損害が多いため極東のロシア軍をウクライナに移動させるなど戦力不足が明らかになっている。そんな時に日本の陸海空自衛隊が10月20日から31日に北海道で自衛隊統合演習を行った。

 これに対してロシア外務省は10月31日に在ロシア日本大使館に安全を脅かす脅威だと抗議した。さらにアメリカ軍が運用する中長距離攻撃能力を持つタイフォン・ミサイル・ランチャーが今も日本に配備されていることに懸念を示した。

訓練を行う陸上自衛隊の90式戦車
訓練を行う陸上自衛隊の90式戦車

 高市首相は所信表明演説で国防費を国内総生産(GDP)比2%にすると表明した。金額にすれば約11兆円のため自衛隊の増強は明らかであり、ロシアが時期的に自衛隊統合演習を日本からの警告と見なした可能性がある。

政治的な恫喝

 軍事演習の目的は練度向上と練度維持。なぜなら軍事演習は敵がいないだけの戦闘だから実戦を想定した運用・指揮命令が行われる。同時に国際政治では軍事演習の裏の意味として政治的な恫喝の意味がある。

 ロシアはウクライナに侵攻したが損害が増加するだけで勝利が見えない。ロシア軍は増加する損害を補う目的で極東からもウクライナに部隊を移動させた。そうなると北海道付近のロシア軍の戦力不足から日本とアメリカの軍事的圧力が自然に高まる。ロシアは常に政治的な恫喝目的で軍事演習を行うから、日本も同じ手段を使っていると誤認したと思われる。

■ロシア、北海道での自衛隊統合演習に抗議 「挑発的な軍事行動」と主張
https://www.sankei.com/article/20251101-72GKYGHWD5JWDECRWOMV4JVSYM/

 なぜならロシアから見れば日本が北方領土(南樺太・千島列島・北方四島)を奪還する動きに見える。仮に日米連合軍が北方領土奪還に動いたら日本付近に展開するロシア軍は防御戦闘すら困難。それに日本は南樺太・千島列島を1951年のサンフランシスコ講和条約で放棄したが帰属先は未定。帰属先は未定だから南樺太と千島列島は今も日本の領土なのだ。ロシアは知っているから日本を警戒している。

 さらにロシアが自衛隊統合演習を恐れるのは、奪還された北方領土にアメリカ軍基地を置かれること。仮にアメリカ軍基地が置かれたらロシア海軍は太平洋に進出できない。だから自衛隊の演習を恐れたのだ。

ロシアが恐れる兵器と配置

 アメリカ軍が運用するタイフォン・ミサイル・ランチャーは、弾道弾迎撃ミサイルSM-6と巡航ミサイル・トマホークを搭載できる。このためロシア軍が日本を弾道ミサイルで攻撃しても迎撃される確率が高まる。これは核兵器で日本を脅すロシアには困る存在なのだ。なぜなら弾道弾迎撃ミサイルの迎撃率が50%以上になると核兵器の価値が低下する。これは核攻撃を生き残った部隊が報復するため核攻撃の意味が低下する。だからロシアは日本に配置される弾道弾迎撃ミサイルを嫌うのだ。これは中国も同じ。

 さらに巡航ミサイル・トマホークは通常弾頭だとしても報復攻撃に使えるからロシアは日本が巡航ミサイルを保有するだけではなく、在日米軍が日本に巡航ミサイルを配備することも報復攻撃が多くなるから嫌う。次はロシアと中国が嫌う自衛隊の配置と戦力を説明したい。

 ロシアと中国は日本の陸上自衛隊が海兵隊化することを嫌う。なぜなら大陸の海岸線に置かれている港湾施設をヒット・エンド・ランで継続的に攻撃されたら対応が困難。海洋国家イギリスが実際に実行し成功させており、歴史的事実からロシアと中国には実行されたら悪夢の世界なのだ。

 海上自衛隊の海上戦力は日本海・太平洋・オホーツク海・東シナ海・宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡の制海権を確保するために3個空母機動部隊の保有が望ましい。さらに作戦行動海域をバシー海峡で南北に区分し、日本列島を東西に区分すると、それぞれの海域に1個空母機動部隊が展開できる。

 ロシアがタイフォン・ミサイル・ランチャーを警戒するのだから、巡航ミサイルは核弾頭ではなく通常弾頭でも効力を持つ。このため海上自衛隊が通常弾頭一発搭載の巡航ミサイルを装備する原子力潜水艦(巡航ミサイル16発搭載)10隻態勢が望ましい。この場合であれば最大同時発射160発の核基地への反撃が確保できる。これにロシアが嫌うタイフォン・ミサイル・ランチャーを加えれば複数同時攻撃と縦深攻撃が成立する。これは核保有国のロシアと中国に対して相殺戦略が辛うじて成立することを意味する。改めて言うが、だからロシアは嫌うのだ。

 航空自衛隊は海上自衛隊に日本海・太平洋・オホーツク海・東シナ海・宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡の制空権を提供しなければならない。なぜなら通常戦力だとしても核保有国と対等になれる対核戦略の基礎になるからだ。

北海道から石垣島まで

 北海道の別海から石垣島までの日本列島3000Kmだけではなく、五島列島・喜界島・奄美大島・徳之島・宮古島・多良間島・石垣島・波照間・与那国島・北大東島・南大東島・硫黄島・グアムなどで航空基地網を展開することは制空権獲得の土台になる。さらに空中給油機を用いた戦闘時間の延長はロシアと中国には迷惑な存在になる。

 航空自衛隊はF-35AとF-35Bを運用しているが、理想としてはカタパルト型空母でF-35Cを運用することが理想。だがカタパルト型空母は待つしかないから現在の運用は離島の応急飛行場・地方の民間空港を空母化することで代用可能。なぜならF-35Bであれば短距離離着陸ができるから離島の応急飛行場でも使える。さらに地方の民間空港も使えるから空母の代わりとして運用可能になる。

 運用するなら離島の応急飛行場・地方の民間空港を空母化するインフラ整備が必要だ。民間空港の滑走路がF-35Bの熱に耐えられない場合は耐えられるように整備すれば良い。これなら民間に金を出して経済効果になるし国防強化になる。五島列島・喜界島・奄美大島・徳之島・宮古島・多良間島・石垣島・波照間・与那国島・北大東島・南大東島・硫黄島・グアムなどを整備して空母化すればカタパルト型空母を運用するまで代わりになる。

ミッドウェー海戦の教訓

 日本の国防は第二次世界大戦時におけるミッドウェー海戦の教訓を土台にすべきだ。

 ミッドウェー海戦で日本連合艦隊は敗北したが、この原因の一つは日本の暗号がアメリカ軍に解読されていた。もう一つの敗北の原因は、アメリカ海軍の戦術が日本海軍よりも優れていたことだ。

 アメリカ海軍のニミッツ提督はミッドウェー基地航空部隊を増強し約150機で日本連合艦隊を見つけると牽制・抑留した。ミッドウェー基地航空部隊の援護下で日本偵察機の行動半径の外側(ミッドウェー北東)に空母部隊を待機させ、好機を見つけ日本連合艦隊を機動防御で打撃しようと待ち構えていた。

 ニミッツ提督は好機を見つけると空母部隊の攻撃隊が日本連合艦隊を攻撃する。これで日本海軍の空母3隻が航行不能に陥り、空母1隻(飛龍)が奮闘してアメリカ空母一隻に報復したに過ぎなかった。

 他の戦例であればアメリカ陸軍のマッカーサーが島伝いに南方から北上した時、マッカーサーと共同したアメリカ空母艦隊は戦闘機を占領している島の基地に配備し空母には攻撃機だけを搭載した。これは島に配備された戦闘機隊が制空権を獲得し、空母部隊は制空権の下で柔軟に作戦した。それに対して日本の空母は半数が戦闘機、半数が攻撃機の配分になりアメリカの空母部隊に戦闘を挑んで敗北した。

 航空自衛隊と海上自衛隊はこれらの教訓から学ぶべきだ。ならば航空自衛隊は純粋な戦闘機を保有し、海上自衛隊は戦闘攻撃機の艦載機を保有することになる。民間空港を空母化してカタパルト型空母の代わりにし、通常弾頭の巡航ミサイルと原子力潜水艦で遠距離攻撃を補えば良いことになる。

トランプ大統領への交渉材料

 海洋国家日本から見ればロシア・中国・朝鮮半島は戦略的に脅威の国である。日本はこの戦略環境において西太平洋の安定の維持がアメリカのトランプ大統領との交渉材料になる。それは日本が北海道から台湾までの国防線を固めてロシア・中国の太平洋進出を牽制することだ。

 日本が防波堤になることをトランプ大統領に示し、さらに北方領土を奪還した後にアメリカ軍基地を配置することを約束することだ。これでアメリカは政治・軍事で太平洋の安全を獲得すると同時に、ロシア海軍の太平洋進出を阻止できる基地を獲得できる。これはアメリカの核の傘の下で日本が軍事行動を行うことになり、結果的に核保有国のロシアと中国は容易に日本を攻撃できない立場になる。

 高市首相が所信表明演説で国防費をGDP比2%にしたことで約11兆円になる。男女共同参画費・SDGs・こども家庭庁などの無意味な組織を廃止すれば約20兆円の財源が得られる。ならば減税しながらも自衛隊の増員・最新兵器購入・基地インフラ整備・自衛官の待遇改善が可能になる。

 ならば自衛隊を強化してロシアと中国を恐れさせることは、核保有国のロシア・中国だとしても日本を簡単には攻撃できない。さらにアメリカのトランプ大統領と連携して北朝鮮に拉致された国民救出と北方領土奪還を行えばアメリカの核の傘がアジアで効力を持つことを示す。これはトランプ大統領にも有益だ。だからこそ自衛隊の強化はアジアの安定に繋がる。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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