国防の変化
海上自衛隊が原子力潜水艦を保有することは以前から望まれていたが実現しなかった。だが高市首相に変わると流れが変わり始める。自民党と日本維新の会の連立合意書には長射程ミサイルを搭載した原子力潜水艦の保有と内閣情報調査室を格上げした国家情報局を創設する内容が盛りこまれた。

戦後日本ではアメリカのCIAのような国家情報局を持つことは忌避されていたが、原子力潜水艦と同様に国防に必要な兵器と組織を持てる可能性が高くなった。これに合わせて日本国内では危険性を主張する声と国防強化に賛成する声が出ている。
原子力潜水艦の保有は良いことだ
戦後日本は敗戦の影響で反戦病が蔓延していた。だが今の日本は国防強化を求める声が多くなった。このため60年前では考えられない原子力潜水艦の保有と国家情報局の創設が検討される時代に変わった。現段階では海上自衛隊が原子力潜水艦を保有する可能性が出ただけだが、仮想敵国が保有する原子力潜水艦を追尾できることは国防として有益なのだ。
■小泉防衛相、原子力潜水艦の導入「排除しない」 抑止・対処力の向上へ3文書改定にも意欲
https://www.sankei.com/article/20251022-VRJ6WRWLE5OP5EMXBPD7EVRZ3E/
財務省は原子力潜水艦の保有に難色を示しているようだが、日露戦争準備の時の日本の財政は今よりも苦しい状況だった。それでも勝利に向けた準備によって日露戦争で勝利を得て日本を後世に残したことを忘れてはならない。
日本では戦争反対だとか軍拡反対を叫ぶ者がいるが、日本から戦争を始めるわけではない。仮想敵国が日本に侵攻した時に反撃する能力を持つことと、軍拡により仮想敵国が日本に侵攻することを諦めさせるためなのだ。戦争アレルギーを持つ者にはアメリカのレーガン元大統領が「軍拡競争によって平和をもたらした」実例を理解しないだろう。
【海洋国家・日本の仮想敵国(核保有国)に対する条件】
(1)海洋国家は外交的に他の海洋国家から孤立しない。
(2)海洋国家アメリカと共同する。
(3)隣接する大陸国家に対して勢力均衡政策を駆使する。
日本が核兵器を運用する場合としない場合では条件が異なる。地下300mまで核爆発の衝撃効果がある300KT級の軌道自律修正式核弾頭(MaRV)を運搬する多弾頭巡航ミサイルでCEP20m(CEP:半数必中界=発射数の半分の着弾が見込める範囲)で核攻撃すれば95%で命中して破壊する。日本が核弾頭搭載の巡航ミサイルと原子力潜水艦(1万トン級で巡航ミサイル16基搭載)を4隻も保有すれば核保有の仮想敵国と相殺作戦が可能になる。
この場合だと核弾頭搭載の巡航ミサイルと原子力潜水艦を前提とした戦争は全面戦争に至る。これは仮想敵国の核兵器による恐喝を日本の核兵器で阻止する理論だから、戦争の想定を全面戦争に限定した対核戦略は過剰な軍拡であり戦争理論の邪道である。さらに海洋国家アメリカが「核兵器拡散防止戦略」を追求している間は、日本がアメリカの戦略に反して核武装に向かうことは日本の国家戦略に合致しないことになる。
日本が通常弾頭の巡航ミサイルと原子力潜水艦のセットで運用するならば、日本とアメリカは共同して中ロ対立を作為奨励し、中国とASEANの接近を妨害し、中国が南北に分裂するように外交政策を駆使することが好ましい。
日本は核弾頭の代わりに通常弾頭1発搭載の巡航ミサイルを装備する原子力潜水艦(1万トン級で巡航ミサイル16基搭載)10隻態勢が望ましい。なぜなら160発で仮想敵国の核基地への反撃を確保できるからだ。
日本の軍事戦略
海洋国家・日本の軍事戦略は「海から大陸に火力を投射する戦略」で、大陸周辺海域の制海権・制空権を支配し、海から大陸の軍事基地を攻撃することが基本になる。すなわち作戦は「一撃離脱」方式となる。
さらにアメリカが進めている「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」における航行の安全と自由を確保するためには、海・空軍基地を網状に配置し空と海で優勢でなければならない。したがって日本の外交は日米地位協定を改定して西太平洋における日米基地を相互使用できるようにしなければならない。
さらに日本は八重山列島・硫黄島・大東島を空軍基地化することが求められる。次に中国・ロシアなどの核保有国からの核攻撃を素早く発見するために早期警戒網を北海道から南西諸島まで展開しなければならない。
これは高々度弾道ミサイルから海面を飛翔する巡航ミサイルを発見する必要があるので、高山山頂に固定式レーダー(MTI)基地を展開し、戦場管理システムと連結して移動目標の追跡と友軍の位置関係を管理する必要がある。
日本を狙って大陸に配置されている核兵器は射程が約3000Km、飛翔速度約2500Km/hrと推定されるので早期警戒レーダーの発見・識別距離を500~600Kmとすれば対応可能時間はわずか12分である。このために指揮・統制・通信・計算・情報・警報・迎撃の統合システムを設置し、迎撃指揮官の意思決定を12分のうち4分以内にする施策が必要である。それでも迎撃システムに利用できる時間はわずか8分である。
早期警戒システムの目標発見距離を伸ばすには弾道ミサイルの接近に対して検知・回避能力を有する静止型の早期警戒衛星か、早期警戒機による常続的監視によって少なくとも800Km以上の遠隔で発見できることが望ましい。こうすることで日本は約20分の対応時間が得られる。これらのことから、高市首相は平時から迎撃ミサイル指揮官に発射権限を委ねておくべきだ。
「反撃は強固な防御を基盤として成り立つ」という軍事理論に従えば、仮想敵国の弾道ミサイルや巡航ミサイルに対する発見・識別・迎撃体制を整えて、次に日本の反撃システムを展開することになる。
中国大陸に沿って北から南へ細長く連なる日本列島に反撃基地を展開すると、日本は反撃力を機動的に集中できない。それどころか仮想敵国による先制核攻撃によって日本は簡単に撃破される危険性が高い。
このため日本は硫黄島・グアム・大東島などに空軍基地を展開して縦深防御を行うと同時に、原子力潜水艦に搭載した通常弾頭1発搭載の巡航ミサイルを用いて反撃作戦の機動性と柔軟性を確保する必要がある。
空母運用を加えれば柔軟性が増す
日本もアメリカ海軍のように空母打撃群の保有が求められる。アメリカの空母打撃群は原子力空母と原子力潜水艦がセットで運用されており、さらに島に展開した空軍戦闘機が制空権を獲得し、制空権の下で空母打撃群が機動防御を実行する。
これは第二次世界大戦時のアメリカ海軍がミッドウェイ海戦で実行し日本海軍に致命的な損害を与えている。それに対して日本海軍は空母に戦闘機半分、攻撃機半分で挑み制空権獲得と攻撃力が半減していた。日本海軍は硬直的な戦術しか採用できなかったが、アメリカ海軍は柔軟な海の機動防御を実行していた。
今の日本はミッドウェイ海戦の反省から島に航空自衛隊の戦闘機を縦深配置して防御を高めると同時に、空母打撃群と原子力潜水艦は航空自衛隊が獲得した制空権の下で機動防御を実行することが好ましい。
さらに平時は海上自衛隊が原子力潜水艦と通常弾頭1発搭載の巡航ミサイルを仮想敵国の近海に展開することで、仮想敵国に対して日本は何時でも反撃できることを示す政治的なアピールになる。こうなると核保有国の仮想敵国は日本への核攻撃を躊躇する。これはレーガン元大統領が軍拡で平和をもたらした再現になるのだ。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)





