トップ国内沖縄【連載】沖縄の〝地殻変動〟(下)安保面で施設整備推進へ、経済政策でも国と連携

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(下)安保面で施設整備推進へ、経済政策でも国と連携

■超党派の支援実る

 「経済や安全保障の面でも大きな勝利だった。古謝(こじゃ)氏と連携し、沖縄を元気にするため力を尽くす」

 高市早苗首相(自民党総裁)は15日、次期沖縄県知事の古謝玄太氏も出席した党役員会でこう述べた。

自民党本部でのあいさつ回りを終え、記者団の取材に応じる次期沖縄県知事の古謝玄太氏(中央)=15日、東京・永田町(時事)
自民党本部でのあいさつ回りを終え、記者団の取材に応じる次期沖縄県知事の古謝玄太氏(中央)=15日、東京・永田町(時事)

 高市政権は今回の知事選を「政権基盤を占う」と強調し、「総力戦」で臨んだ。首相は「できることは全てやる」との覚悟で取り組んだ。報道によると、首相は選挙戦最終日の12日も、沖縄の有力者への「電話作戦」を続けたという。

 自民に加え、日本維新の会、国民民主、参政、日本保守の保守各党が古謝氏を応援した。公明党県本部からも推薦を取り付けた。与野党の国会議員が沖縄入りしたことは、自民も「オール沖縄」も支持しない無党派層の過半数を取り込む一助となった。

 首相の沖縄入りを待望する声も現場にはあった。高市内閣の支持率は各種世論調査で6割前後と高水準を保っており、沖縄でも首相の人気は高い。ただ、直前の情勢で古謝氏がリードしていることや、国政と違い、県内では自民と公明が密接な協力関係にあることから、「必要ない」という判断になった。

■南西防衛に追い風

 大差での勝利に、政府高官は「政策を進めやすくなる」と胸をなで下ろした。

 その一つが、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設だ。古謝氏は移設を容認している。過去3回の選挙と異なり、移設の是非は最大争点にならなかった。NHKの投票日の出口調査によると、辺野古移設の「容認」は「反対」を上回った。「オール沖縄」県政が誕生した2014年の選挙では、移設に「反対」が67%、「賛成」が33%だった。

 古謝氏の当選は、防衛力の「南西シフト」にも追い風になる。

 自衛隊は、16年から台湾に近い与那国や宮古、石垣各島に駐屯地を設置してきた。玉城デニー氏はこれまで、県民の負担増を理由に反対してきた。古謝氏は対照的に南西シフトに理解を示す。

 また、有事に自衛隊や海上保安庁が利用できる「特定利用空港・港湾」は、燃料や弾薬の供給網の維持に重要な役割を果たす。平時の訓練にも活用できる。

 台湾に近く、対中最前線でもある沖縄では12カ所が候補に挙がった。だが、玉城県政が指定に難色を示し、実際に指定されたのは国管理の那覇空港と石垣市管理の石垣港だけだった。

 古謝氏は特定利用空港・港湾について「整備を進めていくのは非常に重要だ。制度を使いながら平時でも機能を拡張できるような取り組みをしていきたい」と話している。

 県内の空港・港湾を指定すれば自衛隊機の使用を前提とした滑走路の延長や岸壁の整備が可能になる。利便性を高めるため周辺道路の拡張や延伸もできる。石垣空港などは地元の市が整備を求めている。

■振興予算は増額へ

 県議会は移設容認派が過半数を占めており、県執行部と議会の足並みがそろう。県内11市長はすべて保守系または中立であり、国・県・自治体の連携が強化される。中でも、古謝氏は与野党を超えた関係を構築できたことで、今後、予算交渉をはじめとする沖縄側の要求を訴えやすくなる。

 古謝氏は選挙戦で、10年後を目途(めど)とする県民所得倍増など経済政策を主軸に据え、「誰かのせいにして今をあきらめるのはもうやめよう」と訴えた。

 古謝氏は首相に「暮らしや経済分野、離島振興など早めに政策を打っていきたい」と話し、知事就任後の連携を確認した。政府と対立した「オール沖縄」とは一線を画し、協調路線に転換する。

 政府、与党は14日、27年度の沖縄振興予算を3000億円超に増やす方向で調整に入った。内閣府は8月31日、27年度予算の概算要求で2897億円とする方針を示していた。

 沖縄県は3000億円を要望してきたが、沖縄振興予算は22年度から2600億円台が続いていた。当初予算も14年度の3501億円をピークに、25年度まで減少傾向にあった。

 木原稔官房長官は8月27日の記者会見で、政府の沖縄振興予算と知事選の結果の関係を否定した。ただ、辺野古移設に反対する県に対し、菅義偉(すがよしひで)官房長官(当時)は「リンクしている」として予算を減額した。

 そのため、知事が予算の陳情などで政府・与党に赴くことはほとんどなかった。政府は県を通さず市町村に直接財政支援する「沖縄振興特定事業推進費」を19年から計上し続けている。

 県と対立するリスクが減ることは国にも県にもメリットとなる。自民党本部など、古謝氏が当選のあいさつで回る先々で大歓迎されたことも、その表れだ。(報道部長・豊田 剛)

《沖縄振興予算(当初)の推移》

2014年 3501億円
 15年 3340億円 ※翁長雄志知事誕生
 16年 3350億円
 17年 3150億円
 18年 3010億円
 19年 3010億円 ※玉城デニー知事誕生
 20年 3010億円
 21年 3010億円
 22年 2684億円
 23年 2679億円 ※玉城知事2期目
 24年 2678億円
 25年 2642億円
 26年 2647億円

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(上)過去最多42万票獲得ー沖縄知事選

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(中)玉城人気に頼るも限界、消えた「オール沖縄」

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »