トップ国内沖縄【連載】沖縄の〝地殻変動〟(中)玉城人気に頼るも限界、消えた「オール沖縄」

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(中)玉城人気に頼るも限界、消えた「オール沖縄」

 沖縄県知事選告示日の8月27日、3期目を目指す現職の玉城デニー知事(66)は「必勝」と書かれたオレンジ色の鉢巻きを頭に巻いた姿で登場した。「ぐすーよ、まきてぃーないびらんどー(みなさん、負けてはなりませんよ)」と沖縄の方言を混ぜながら力強く訴えた。

落選が確実な情勢となり、会場に集まった支持者に頭を下げる玉城デニー氏(手前)=13日夜、那覇市(時事)
落選が確実な情勢となり、会場に集まった支持者に頭を下げる玉城デニー氏(手前)=13日夜、那覇市(時事)

 普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を訴えた「オール沖縄」革新県政は12年で終焉(しゅうえん)を迎えた。13日午後8時すぎ、古謝(こじゃ)玄太氏(42)の当選確実が報じられ、玉城氏は「(落選が)政治の結果だとしたら、しっかり受け止める」と眉をひそめた。今後について問われると「4年後をどうぞ待ってくださいと言いたい気持ちはある」と述べた。任せられる後継者が不在であることの表れなのだろう。

■目玉公約の辺野古封印

 玉城氏は選挙戦を「不利な戦いだった」と振り返った。3月の辺野古沖転覆事故以降、県外からも玉城氏の対応に注目が集まった。事故を起こした抗議船の運航団体「ヘリ基地反対協議会」が玉城氏の支援団体であり、共産党との関係が深いことから、SNSを中心に玉城氏への批判・中傷が相次いだ。

 玉城氏は、これまで支援を受けてきた「オール沖縄」のアイデンティティーであり、一丁目一番地の政策でもあった「辺野古反対」という項目を公約の中心政策七つの柱から外した。公約の目玉として、物価高対策で「おきなわゆいまーる基金事業」の創設などを強調した。

 22年の知事選で玉城氏は立憲民主、共産、社民、れいわ新選組など革新系の各政党から推薦を受けた。しかし今回は推薦を受けずに各党からの支援にとどめ、「県民党」と宣言。「オール沖縄」という言葉は選挙演説で聞かれなかった。

 「オール沖縄」は、元自民党沖縄県連幹事長の翁長雄志氏が「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに掲げ、保革を超えて「辺野古移設反対」のワンイシューで結集した。しかし、2023年には、移設を巡る訴訟で県の敗訴が確定し、工事を止める手だてを失った。辺野古反対を前面に出せなかったことは玉城陣営にとって痛手だった。

革新系の元国会議員らと街頭演説をする玉城デニー氏(上段中央)=5日、那覇市(竹澤安李紗撮影)
革新系の元国会議員らと街頭演説をする玉城デニー氏(上段中央)=5日、那覇市(竹澤安李紗撮影)

辺野古の争点埋もれる

■弱者救済、若年層響かず

 「オール沖縄」勢力にとって玉城氏は「最後の砦(とりで)」だった。県内全11市長はすべて保守・中立系。昨年の県議選では議席を大きく減らし、2月の衆院選では全4選挙区で落選した。仲間の政治家がどんどん減っていく中で、今回の選挙は、玉城氏個人の「人気」に頼るしかなかった。

 第一声で玉城氏は、米兵の父と沖縄出身の母の間に生まれた自身のルーツや、米軍統治時代にいじめを受けるなど苦労した経験を語った。

 玉城陣営が選挙戦で最重要と位置付けたSNSのショート動画でも、自身の少年時代のモノクロ写真を用いた。演説では、応援弁士に女性を多く起用し、女性目線でも県民の感情に訴えた。選対本部長を務めた高良(たから)沙哉(さちか)参院議員(無所属、沖縄選挙区)は、演説で玉城氏の生い立ちに触れ、「だからこそ弱い立場の人の声や小さな声にも耳を傾け、誰一人取り残さない優しい沖縄を実現できる」と強調した。また、選挙期間には、勝敗を握る無党派層に向け、若者と未来を語るライブを夜の時間帯に配信。2期8年の実績として経済成長と子供の貧困率の改善をアピールした。しかし、足元の経済は疲弊し、所得格差は広がった。玉城氏の訴えは10代~40代に浸透しなかった。

 玉城氏個人の人気や知名度だけでは無党派層への浸透に限界があった。約15万という圧倒的な票差は、現県政への不満の表れだ。得票を41市町村別に見ると、大宜味村を除く40市町村で古謝氏が玉城氏を上回った。盤石な革新地盤だった中頭郡(なかがみぐん)の6町村(西原町、北谷町、嘉手納町、読谷村、中城村、北中城村)もそろって保守に傾いた。

■県議選では大物が敗北

 選挙結果を受け、地元メディアは「オール沖縄」の「時代が幕を閉じた」と報じた。同日に行われた県議補選で、うるま市区に出馬した照屋大河氏は落選した。同氏は、昨年4月のうるま市長選挙に立候補するため、県議を辞職。今回、県議復帰を目指していた。元社民党衆院議員で沖縄を代表する政治家・照屋寛徳氏を父に持つ大河氏が負けたことは、「沖縄の地殻変動の象徴」(地元記者)だ。

 県議補選の結果、県議会(定数48)は移設容認派が25人、反対派が23人となり、容認派が過半数を占めることとなった。島袋大県議は移設容認派の知事誕生を「悲願」と語り、県政の前進に期待を示した。

 また古謝氏は、沖縄が日本に復帰した1972年以降に生まれた初めての知事だ。世代間の分断に歯止めをかけることができるか、手腕が問われる。(沖縄支局・竹澤安李紗)

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