トップ国内沖縄【連載】沖縄の〝地殻変動〟(上)過去最多42万票獲得ー沖縄知事選

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(上)過去最多42万票獲得ー沖縄知事選

 沖縄県知事選は13日、投開票が行われ、新人で前那覇市副市長の古謝(こじゃ)玄太氏(42)=自民、維新、国民民主、参政、保守、公明県本部推薦=が、3期目を目指した現職の玉城デニー知事(66)らを大差で破り、初当選を果たした。保守勢力が支援し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を容認する古謝氏が勝利した。政府との対立を続けてきた玉城氏の支持基盤「オール沖縄」による県政は終焉(しゅうえん)を迎える。

支援者から受け取った花束を手にする古謝玄太夫妻(手前右)=13日、那覇市(竹澤安李紗撮影)
支援者から受け取った花束を手にする古謝玄太夫妻(手前右)=13日、那覇市(竹澤安李紗撮影)

 古謝氏は14日朝、那覇市で記者団に対し、過去最多となる42万票余りを得たことに触れ「責任の重さを感じる」と語った。

 13日夜、当確を受け古謝氏は、「2期8年務めた現職による県政を継続するのか、刷新するのかが問われた」とし、「沖縄を前に進めてほしいという期待が結果に表れた」と振り返った。

 県選挙管理委員会によると、確定投票率は61・57%で、前回(2022年)を3・65ポイント上回った。

「家族一丸で戦った」

与野党超え6党が推薦

■掲示板1番で景気付け

 「ポスター掲示板の番号がくじ引きで1番を取れたって。古謝さんやっぱり持ってるね」

 8月27日の告示日の朝、古謝玄太氏が県民広場で開いた出陣式後に支持者が嬉(うれ)しそうに話した。「掲示順1番は吉兆だ」と語った通り、古謝氏は現職の玉城デニー氏ら5人を破り、過去最多の42万3124票を獲得。沖縄の日本復帰後生まれで、県政史上最年少の知事が30日に誕生する。

 沖縄選挙の天王山とも呼ばれる県知事選は波乱の幕開けとなった。告示日の前日、第三極として県知事選へ出馬を予定していた元郵政民営化担当相の下地幹郎氏が出馬を取りやめる会見を開いた。22年の知事選に出馬した際には約5万4千票獲得しており、今回も古謝氏と保守票を分け合うと予測されていた。下地氏の不出馬による構図の変化に県民の注目が一気に集まった。

 会見で下地氏は、自民党と4項目の政策協定を結んだと発表した。党幹部が県連を介さずに合意を結んだことで、自民県連は反発を示し、玉城陣営は「令和の琉球処分」という表現で非難した。玉城氏はX(旧ツイッター)で「裏取引」という誤った情報を拡散したが、後に訂正した。こうした経緯もあり、下地氏を巡る騒動は尾を引かなかった。

■下地氏不出馬で風

 下地氏の不出馬は古謝陣営に風が吹く一因となった。下地氏の出馬の是非は結果に「大きく影響しない」と陣営は捉えていた。しかし、立候補取り下げによって「油断はいけないが、心の底で『これは行けるぞ』と、支援者に勢いがついたことは確かだ」と選対関係者は語る。古謝氏は当選後の囲み取材で、「下地氏の決断と、各所での支援活動に感謝を申し上げたい」と述べた。

 古謝陣営の選対本部長を務めた那覇商工会議所会頭の金城克也氏は「物価高対策や子育て支援など県民の生活を重視する政策が県民の理解を得られた」とし、自民をはじめ5政党と公明県本部の推薦も後押しになったと分析した。

総決起大会で推薦各党の代表らと握手する古謝玄太氏(左から2人目)=2日、那覇市の県立武道館アリーナ(竹澤安李紗撮影)
総決起大会で推薦各党の代表らと握手する古謝玄太氏(左から2人目)=2日、那覇市の県立武道館アリーナ(竹澤安李紗撮影)

 古謝陣営が選挙戦中盤で力を入れた県立武道館アリーナ(那覇市)での総決起大会では、政権与党の自民、日本維新の会に加え、野党の国民民主、参政、保守、公明県本部の各代表者が並んで古謝氏の応援弁士を務めた。維新の藤田文武共同代表は「(古謝氏は)改革へのエネルギーと相手を理解し調整する力を持ったリーダーだ」と演説した。

■無党派層取り込みに注力

 沖縄知事選で長年続いた自公対革新の構図が一変した。古謝陣営は、近年無党派層から支持を集めてきた維新、国民民主、参政などの「無党派層を取り込む力」に期待していた。連日、各政党幹部が来沖して古謝氏の横でマイクを握った。選挙戦最終日には自民の西村康稔(やすとし)選挙対策委員長と共に、維新の吉村洋文代表と国民民主の榛葉(しんば)賀津也幹事長が街頭演説に立った。榛葉氏は「右でもない。左でもない。沖縄を前に進めよう」と呼び掛けた。

 選対関係者によれば、保守と革新の岩盤支持層はそれぞれ約27万票。両陣営に差はないとみられ、無党派層の動向がカギを握っていた。ふたを開けてみると、古謝氏は玉城氏に対し約15万票の大差をつけた。

■際立った妻の存在感

亜希子夫人から花束を受け取る古謝玄太氏=13日、那覇市(竹澤安李紗撮影)
亜希子夫人から花束を受け取る古謝玄太氏=13日、那覇市(竹澤安李紗撮影)

 課題とされていた知名度の向上に加え、女性票の取り込みに、妻・亜希子さんや長女が一役買った。当選後のインタビューで古謝氏は「(妻は)私の分身以上の存在で本当に助けてくれた。家族一丸となって戦った」と、演説が高く評価されていた亜希子さんや長女の支えに感謝を示した。18年の名護市長選では、無所属新人の渡具知武豊氏(現市長)の娘がマイクを握り市民の感情に訴え、革新の牙城を崩した。

 こうした過去の例から、知事選で古謝氏の子供の応援に期待が寄せられていた中、長女が総決起大会で約5000人の聴衆を前に登壇し「父は心が折れない人物」と紹介。この演説はXで約178万回表示され、広く拡散されるなど、大きな反響を呼んだ。合計特殊出生率が40年近く全国トップの沖縄で、子育て世代や若い世代など県民の感情に働き掛け、支持拡大に成功した。

 投開票日、当選確実の報道を受けてから口を真一文字に結び、冷静な表情だった古謝氏は、家族に関する質問で初めて笑みをこぼした。任期4年で子育て世代の期待に応えられるかに注目が集まる。

(沖縄支局・竹澤安李紗)

《沖縄県知事選開票結果》

当423124 古謝 玄太 無新
 276060 玉城デニー 無現
  4657 兼島  俊 無新
  3542 比嘉  隆 無新
  2467 屋良 朝助 諸新
  2270 末吉 正弘 無新
 (敬称略、開票率100%)
  =確定投票率61.57%=

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(中)玉城人気に頼るも限界、消えた「オール沖縄」

【連載】沖縄の〝地殻変動〟(下)安保面で施設整備推進へ、経済政策でも国と連携

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »