13日に投開票される沖縄県知事選は、過去最多となる6人が立候補した。新人で前那覇市副市長の古謝(こじゃ)玄太氏(42)と、現職の玉城デニー氏(66)による事実上の一騎打ちとなっている。主な争点である、経済振興や物価高・暮らしの改善、安全保障について、両候補の主張を比較する。(沖縄支局・竹澤安李紗)

沖縄県は本土復帰から54年が経過した現在も、1人当たりの県民所得は全国最低水準が続いている。観光業やサービス業など比較的賃金水準が低い産業への依存度が高いことが課題だ。所得の低さや母子家庭の多さを背景として、子供の貧困率は全国平均の約2倍と深刻な格差が生じている。物流コストが割高になる沖縄では、急激な物価高が県民の生活を直撃する。
《玉城氏》 ゆいまーる基金創設
■分配か成長で違い

3期目を目指す現職の玉城氏は、8月27日の第一声で「学校給食費の完全無償化や18歳までの窓口医療費無料化を進める」と、子育て支援策を中心に訴えた。
物価高対策の目玉として、公的制度からこぼれ落ちる県民を救済する「おきなわゆいまーる基金事業」の新規創設を提唱。同基金については「知事選後に補正予算を組み、県税収入の1%程度を充てる」と公開討論で述べた。
演説では2期8年の実績を前面に押し出す。コロナ禍を乗り越え、25年度の入域観光客数は過去最高の約1094万人、観光収入は1兆円を超える見通し。好調な県税収入により、令和8年度の県当初予算は過去最高の9468億円に達したとアピールする。また、令和9年2月から導入される宿泊税(税率2%)の財源を活用し、持続可能な観光を推進すると訴える。観光の勢いを県民所得の向上や暮らしの豊かさにつなげたい考えだ。
《古謝氏》 手取りを10年で2倍

これに対し、保守勢力から幅広く推薦を受ける新人の古謝氏は、現県政を「8年間の停滞」と厳しく批判する。令和5年度の1人当たり県民所得は約231万円で、全国平均と約120万円の差がある。討論会で古謝氏は「全国との格差が拡大している」と指摘。「県民所得を10年で倍増」を公約に掲げる。
経済界と連携し、既存の中小企業へのデジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)の伴走支援をするほか、観光、健康、環境、海洋、起業など「新5K経済」の振興を提唱する。
さらに、那覇市副市長時代に導入した「子ども学びクーポン」による塾支援の全県展開や、県内企業に就職した場合に奨学金返済を免除する制度の拡大を約束。子育て支援予算を現在の552億円から1000億円へ倍増させる計画を示す。
討論会で玉城氏は、古謝氏の所得倍増公約を巡り、南西地域産業活性化センターの県経済予測を基に「非現実的だ」と疑問視。これに古謝氏は、アジアの成長を呼び込む民間投資や熊本のTSMC半導体工場の大規模誘致を国と連携して推進し、高付加価値な最先端産業を呼び込むことで、目標の達成は十分に可能だと反論した。
■沖縄関連予算は減少傾向
玉城氏の地域振興の要である「沖縄振興予算」の交渉姿勢も問われている。かつて3500億円台に達していた同予算は近年減少傾向をたどっており、県要望の「3000億円以上」は6年連続で下回っている。
古謝氏は「今の県政の対立姿勢や交渉力のなさが予算削減を招いた」と批判。国との信頼関係を再構築し、国と沖縄県が基本的政策を協議するために設置された「沖縄政策協議会」の早期再開を訴える。これに対し玉城氏は「知事の政治的立場で予算が増減され、県民が影響を受けること自体がいかがなものか」と反発。国の一方的削減に対し、県は好調な県税などの独自財源で補填(ほてん)し影響を防いでいると反論した。
IT企業社長の兼島俊氏(48)は、若い世代が活躍できる新興ビジネス・起業環境の整備や県内のベンチャー企業への支援などを主張する。医療法人会長の末吉正弘氏(73)は、高齢者や子供の貧困に対する支援や地場産業の支援を訴える。一方、会社代表の比嘉隆氏(49)は、公約を新型コロナウイルスのワクチン接種中止に限定している。会社経営の屋良朝助氏(74)は、琉球自治共和国を設立し、自立的経済発展を公約に掲げている。
■経済公約の比較
【古謝氏】
・10年で県民所得を倍増
・中小企業のDX・AI導入支援
・観光の「質」改善、アジア等からの航空直通路線誘致
【玉城氏】
・「おきなわゆいまーる基金事業」の創設
・子供の貧困率の改善
・持続可能な観光・産業振興








