トップ国内沖縄「沖縄県民は日本人を選んだ」宮城能彦氏 ―世日フォーラム沖縄講演会

「沖縄県民は日本人を選んだ」宮城能彦氏 ―世日フォーラム沖縄講演会

 本紙の沖縄県内読者でつくる「世日フォーラム沖縄」講演会が15日、浦添市内で開かれ、元沖縄大学教授の宮城能彦氏が「沖縄人とは何か~地域社会学からの考察」と題して講演した。宮城氏は沖縄の本土復帰について「沖縄県民は日本で唯一、日本人であることを選んだ」と説明し、「沖縄は良い日本にする責任を負っている」と呼び掛けた。

講演する元沖縄大学教授の宮城能彦氏(右奥)=15日、沖縄県浦添市(竹澤安李紗撮影)

 地域社会学や共同体論を専門とする宮城氏は、徹底したフィールドワークから導き出した、戦後沖縄のアイデンティティーの変遷について講演した。小学6年生で経験した1972年の沖縄本土復帰を振り返り、「沖縄人のアイデンティティー」に問題意識を持つようになった生い立ちを語った。

 沖縄人のアイデンティティーについて、歴史と最新のゲノム(全遺伝情報)研究の両面からひもといた。沖縄の歴史を研究した安良城(あらき)盛昭・元沖縄大学学長は1609年の薩摩支配で、実質的に沖縄は幕藩体制の中に組み込まれたとし、1879年の琉球処分を「上からの・他律的な民族統一」と位置付けた。これについて宮城氏は、安良城氏の「17世紀から藩の一つ」という見解には賛同するが、「民族統一」という表現には「気を付けなければならない」と指摘した。

 「民族統一」とはナチス・ドイツの独裁者ヒトラーがオーストリアを強制的に併合した際や、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻など、「侵略の口実に使われてしまう」と説明。「そもそも民族とは何で、近代国家とは何か、という視点に立って慎重に歴史を取り扱わなければならない」と語った。

 近年のゲノム研究では、「沖縄の人々が11世紀ごろに九州から移住した集団をルーツに持つ」ことが示されており、遺伝子研究では本土の人たちと同じと強調した。

 近年、左翼系の学者から「本土復帰は必ずしも沖縄の人々が望んでいたものではない」という言説が出ていることについて、宮城氏は「これこそ歴史の修正主義だ」と異議を唱えた。「本土復帰運動は確実に沖縄の人々が望んで行動したものだ」と強調。沖縄は自らの意思で日本人であることを選んだ稀有(けう)な存在であり、「県民は日本批判ばかりしていないで、日本を選んだ国民として日本全体の未来に責任を持つべきである」と訴えた。

 沖縄の本土復帰の前後で教職員の性質が変容したことについては、復帰運動を主導した教員らが世代交代し、新たな世代の教員が戦後に誕生した日本教職員組合(日教組)に取り込まれ、「勢力が変わってしまった」と分析した。

 宮城氏は現在の課題として、平和教育が「被害者性」に偏りすぎることで、本土の修学旅行生など若者のリピーター減少を招いている問題や、SNSと既存メディアの間で起きている深刻な世代間の認識分断に危機感を示した。

 講演後の質疑応答で、世代間の分断を乗り越える方法を問われ、「意見が異なる相手をすぐに批判するのではなく、相手がなぜそのような意見を持つに至ったかなど寛容な心で相手の話を聞き、客観的な事実に基づいた対話が必要だ」と答えた。

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