
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設現場を視察した同志社国際高校(京都府)の学習に対し、文部科学省は5月、政治的中立性違反認定を出した。沖縄の基地問題を学習するに当たり、政治的中立性をどう担保できるのか問われている。
沖縄の平和教育は本土の教育現場にも影響を与えてきた。例えば東京都世田谷区の和光小学校は、1987年から沖縄の平和学習に力を入れており、現在も沖縄研修を続けている。約1年間の事前学習と3泊4日の沖縄訪問で戦争証言や基地問題に触れる。沖縄地元メディアは、和光小の児童が首相宛てに「なぜ沖縄の声を聞かないのか」と辺野古移設に言及する手紙を出したり、先の大戦で「沖縄は捨て石」とされた認識を発表したりする様子を近年報じている。
和光小が基地問題を取り上げるようになった理由を『沖縄に学ぶ子どもたち』(大月書店/2006年)で一人の教諭が記している。第5回学習旅行から「沖縄戦が今につながる基地の問題を大きく取り上げた」とし、基地問題に対して自分の考えを持つように指導するためと学習内容の変更を語っている。
沖縄の教育現場でも辺野古視察は珍しくない。基地問題の象徴的な場所で、工事を巡って国と県の対立の構図が一目で分かるからだ。辺野古での学習を是とする沖縄県教職員組合(沖教組)などは5日、文科省の違反認定に抗議する記者会見を開き、認定は「不当な政治介入」と平和教育の萎縮に懸念を示した。沖教組は本土復帰後、日本教職員組合(日教組)に加盟し、国旗掲揚・国歌斉唱拒否運動を展開するなど組合として教育現場に一定の影響力を持ってきた。
文科省が問題視したのはあくまでも政治的中立性であり、「政治介入」ではない。県の教育現場が検証すべきは、辺野古学習において基地反対派の声だけではない多様な視点をどのように提示できるかという問いだ。
ヘリ基地反対協議会などの基地反対派の一部は、異なる意見や考えを排斥する傾向がある。
2005年には、宜野湾市青少年健全育成協議会が計画した講演会が中止になった。保守論客の高橋史朗麗澤大学大学院特別教授(当時、明星大学教授)が「親学と子供の居場所づくり」をテーマに講演する予定だった。ところが、沖教組や沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)、平和ネットワークなど反米・反基地団体が講師変更を要請し、中止に追い込まれた。
それだけにとどまらない。沖教組は自衛隊や米軍を「好戦的な組織」とレッテル貼りし、さまざまな交流に圧力をかけてきた。25年1月には、沖教組那覇支部が、那覇市で開催予定だった航空自衛隊音楽隊コンサートの中止を求めた。
沖教組などの団体こそが、多様な学びや交流を妨げ、平和教育を萎縮させてきたのだ。
沖縄の教育問題に詳しい宮城能彦(よしひこ)元沖縄大学教授は、「自分と異なる意見を歓迎しなければ健全な議論は生まれない」と指摘し、沖縄地元メディアがつくる沖縄の言論空間を批判する。沖縄問題における〝思考停止〟状態に懸念を示し、「議論できる沖縄にしたい」と発信を続け、平和教育において「学生に考えさせるような問い掛けが大切だ」と訴える。
宮城氏は「さまざまな立場や考えの人が意見を持ち寄って議論する。多様な見方が双方に刺激を与え、思考を停止させない建設的な学習や議論につながる」と、沖縄問題への認識を高めるための教育の在り方を提示した。
(沖縄平和教育問題取材班)






