トップ国内沖縄続・検証 沖縄平和教育(上)基地負担強調する県広報 文科省、「偏った内容」問題視

続・検証 沖縄平和教育(上)基地負担強調する県広報 文科省、「偏った内容」問題視

 先の大戦末期、沖縄県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦から81年。沖縄で平和を学ぶと銘打った同志社国際高校(京都府)の校外学習は5月22日、文部科学省により教育基本法に反すると認定された。沖縄の平和教育は今、どうなっているのだろうか。(沖縄平和教育問題取材班)

辺野古漁港の乗船場所に供えられた花=5月7日、沖縄県名護市辺野古(竹澤安李紗撮影)
辺野古漁港の乗船場所に供えられた花=5月7日、沖縄県名護市辺野古(竹澤安李紗撮影)

 3月16日、名護市辺野古沖の船転覆事故で同校2年の武石知華さんが犠牲となった。文科省の認定が出されると、知華さんの父親はインターネット投稿サイト「note」で、「事故から2カ月余り、知華に報告できることが初めて一つできたように思います」と心中を綴(つづ)った。

 文科省は同校を調査し、事前の下見が行われていなかったことや、引率教員が船に同行していなかったことなどから、安全管理が著しく不適切だったとの見解を示した。また、ヘリ基地反対協議会による座り込みへの参加を呼び掛ける文書が掲載されていた点、辺野古移設工事の学習で、さまざまな見解が十分に提示されていたとは確認できなかった点を問題視。「政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反すると考えられ、是正を図る必要がある」と指摘した。

 文科省は、同校が「沖縄県の見解を学習させていた」一方で「これ以外の見解の学習は確認できない」とし、県の見解が「特定の見方・考え方に偏った内容」であると認定したのだ。

 玉城デニー知事は5月29日の定例会見で、「今回の事故を契機として教育内容を点検することは本来あってはならない。事故は事故として厳正に対応されるべきだ」と批判的な姿勢を示した。

 知華さんの父親はさらに2日後の投稿で、「もし沖縄県が辺野古への基地移設問題を高校生向けの平和教育の題材とするならば、玉城氏としてどのような取り上げ方やコース設計を推奨するのか、参考までに教えていただきたい」と問い掛けた。これに対し、玉城氏は具体的な内容への言及を避けた。

 県の平和教育に対する姿勢を示す資料がある。令和8年2月、沖縄県公式ユーチューブチャンネルで公開された全12回の短編動画「基地と平和」である。県が戦後80周年平和祈念事業の一環として制作したもので、辺野古移設現場の写真をメイン画像に用いた特設サイトでは、「平和学習や教育旅行の現場で活用できる動画各回と連動したワークシートなどの補助教材(ダウンロード版)」も提供している。

 県のホームページには、動画視聴を通じて「沖縄の過重な基地負担の軽減や国際平和の実現を『自分ごと』として考える一つのきっかけにしていただけたら」と制作意図が記されている。約1時間30分の動画のうち、半分以上を「沖縄の過重な基地負担の現状」や「辺野古新基地建設問題」の解説に割いている。

 動画には玉城氏をはじめ計12人の語り手が出演する。平和ガイド講師の派遣などを行う沖縄平和ネットワークの事務局長で、琉球大学教育学部准教授の北上田源氏、安保法制への反対活動を展開した学生団体SEALDs元メンバーの元山仁士郎氏、地元紙記者らが名を連ねる。一方、基地問題に詳しい防衛省や自衛隊、米軍の関係者をはじめ、基地容認の立場に立つ県民は一切登場しない。両論併記とは言い難い内容である。

 玉城氏は動画の中で、沖縄に米軍専用施設が集中している現状を「不平等な状態」と述べた上で、「さまざまな考えに触れ、真摯(しんし)な姿勢で耳を傾け、言葉の背景をくみ取ろうとすることで(基地問題への理解が)深まっていく」と語っている。知事が真摯に耳を傾けるべきなのは、辺野古沖船転覆事故で娘を失った遺族の切実な声ではないか。

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