普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る日本政府と沖縄県の協議の経緯は複雑で難解だ。同志社国際高校は辺野古研修に際し、移設に反対する抗議団体「ヘリ基地反対協議会」に研修を依頼した。反対側意見のみを提示したことは、平和学習の中立性から明らかに逸脱している。そもそも、抗議活動家は地元住民の声を代表していない。

「住民の多くは辺野古移設を条件付きで容認している」
こう語るのは、県内で飲食店を経営する玉利朝輝・辺野古商工社交業組合理事。辺野古区は人口約1600人の小さな集落だ。その中で、玉利氏が知る限り、反対活動を行っている区民は数えるほどしかいない。抗議活動をしている人のほとんどが県外から来た人だと区民の多くが知っているという。
「抗議活動家には、漁民も区民もみんな本当に迷惑している。区としても迷惑だと言い続けてきた。この声はこれまで地元メディアが報じてくれなかった。県が違法性を認め、早く違法テントが撤去され活動が制限されていれば、転覆事故は起きなかった」
沖縄県や玉城デニー知事、そして辺野古反対を訴える勢力は、普天間の危険性除去を叫びながら辺野古移設には反対している。一方、玉利氏は「各地に市民を守るために警察がいるように、国には国民を守るための基地が必要だ」と沖縄の地政学的な重要性と周辺の安全保障環境への理解を語る。
辺野古の米海兵隊基地「キャンプ・シュワブ」は、地元の久志村(当時、現在の名護市辺野古)が村の発展のために誘致したことが公文書からも分かっている。同キャンプが所在する辺野古区は、戦後、ドルが使われていた時代に飲食店が立ち並び、米兵らでにぎわった。多くの住民が恩恵を受けた。玉利氏もその一人だ。レストランを経営していた両親は9人の子供を全員、大学や専門学校に送り出すことができたという。
ただ、諸手(もろて)を挙げての賛成ではない。「危険な飛行場に対しては条件付きで容認だ。各世帯が命の代償として補助金を求めることは、日本と東アジアを守るための義務を果たしている住民の権利だ」と強調。また、飛行場を軍民共用で利用できれば「地域の発展につながり、未来の子供たちの財産になると信じている」と展望を語った。
こうした住民側の意見を伝えずして、辺野古移設問題の正しい理解ができるのだろうか。
玉城知事を支える「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は4月30日、声明文を公開した。転覆事故の原因究明と抜本的な安全対策の構築を進めるとした上で、「この事故を機に一部で平和学習そのものの価値を否定したり、思想への介入を是とするような動きが見られることについては民主主義の観点から深く懸念している」と主張した。
辺野古移設を巡る国と県の幾つもの裁判で、県が敗訴となる最高裁判決が出ても、県は政府に抵抗し続けている。

事故で亡くなった同志社国際高校2年の武石知華さん(17)の遺族は13日、投稿サイト「note(ノート)」を更新し、2015年の同校の辺野古研修を疑問視した。当時学年主任だった西田喜久夫・現校長は、沖縄タイムスの記者を研修旅行の講師に招いた。ある生徒が当時の基地反対運動の違法性に触れ、「今、違法行為をしても、その人の良心を果たすことは正しいことですか」と問うと、この記者は「バックボーンを理由に(違法と)断じることはできず、意思表示は大事」と一蹴した。
基地問題に真剣に向き合った生徒が10年前に投げ掛けた鋭い問いに、いま沖縄県が正面から向き合う時だ。あらゆる政治的主張や発信は自由だが、学校の研修では主観と客観的事実は分けて教える必要がある。
(沖縄平和教育問題取材班)
(おわり)
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