沖縄県内に住む在日ミャンマー人らによる「水かけ祭り(ティンジャン)」が12日、那覇市の栄町市場で開催された。ミャンマーの国民的行事で、新年を祝うため色とりどりの民族衣装を身にまとったミャンマー人の若い女性ら400人以上が集まり、にぎわった。主催者で在沖縄ミャンマー人会のトウヤ・ソウさんは地域ぐるみの協力に感謝の意を示し、内戦が続く母国に対して「私たちは一刻も早い故郷の平和を願っている」と語った。(沖縄支局・竹澤安李紗)

ミャンマーはインド、バングラデシュ、中国、ラオス、タイと国境を接する東南アジアの国で、人口は推計5500万人。135の民族で構成される多民族国家で、仏教徒が9割を占める。
4月17日、仏教の伝統による「ビルマ暦(太陰太陽暦)」で新年となる。お正月を迎える前に、水かけ祭りで1年の不幸や穢(けが)れを水で洗い流す。新年を清らかな心で迎えるという宗教的な意味が込められている。
主催者らは、鮮やかな色の傘や、ミャンマーで国民に愛されている黄色い「パダウ」の花で水かけ祭り会場を飾り付けた。参加者らにミャンマーのカレーや肉料理など郷土料理を振る舞った。
ステージではミャンマー人による伝統舞踊や日本人による楽器演奏などが披露された。司会者が集まった観客に舞台から水を掛けると、会場は熱気に包まれた。玉城デニー知事も祭り会場を訪れ、沖縄とミャンマーの文化交流を通して「お互いの気持ちを深めていきましょう」とあいさつした。
主催者のソウさんは「母国の水かけ祭りは、きょう(那覇)の100倍は盛り上がる行事だ」と説明。しかし、現在のミャンマーは「思い切り祭りができる環境にないことを在日ミャンマー人たちはよく知っている。今は皆、表面的には笑っているが、心の中では泣いている状況だ」と明かした。
クーデター後に移住者が増加、中国との関係懸念
ミャンマーでは2021年2月1日、国軍がクーデターを強行した。当時民主化の指導者だったアウンサンスーチー国家顧問や大統領らを拘束し、軍が全権掌握を宣言。20年11月の総選挙で国軍系政党が大敗したことを受け、軍は利権を失うまいと反乱を仕掛けたとみられている。民主的な手続きを無視した軍政に対し国連や米欧からは非難する声や、国軍と中国との関係強化を懸念する声が上がっている。
クーデター後、国民は大規模なデモを各地で続けたが、軍から激しい弾圧を受け多くの死者を出した。5年が経過した現在も国軍と民主派や少数民族武装勢力との内戦が続いている。治安は悪化する一方で、国内経済を支えていた外国企業の撤退が相次ぎ、働く場所が減少。21年以降、日本への流入が急増している。
出入国在留管理庁によれば、在留ミャンマー人は昨年末時点で約18・2万人おり、5年前と比べ5倍に増えている。特に24年から25年の1年間では約4・8万人増え、1年の伸び率が全ての国の中で35%と最も高くなった。このうち県内には1300人以上が滞在。沖縄在住の外国人のうち4番目に多い。

ソウさん夫婦は07年に沖縄へ移住し、13年ごろから栄町市場で本場のミャンマー料理を提供する店「ロイヤルミャンマー」を開店した。店を経営しながら、来沖する人々の受け皿的な役割を果たしている。家族を離れ、日本の慣れない環境で暮らすミャンマー人らが、年に一度の水かけ祭りで集い、故郷へ思いをはせている。
今回で8回目となる那覇の水かけ祭りで、主催者は初めてスポンサーを募り、七つの県内企業・団体から支援を受けることができた。また、栄町市場の協力も得ている。ソウさんは「お祭り騒ぎをしても理解してくれる栄町市場の人たちに本当に感謝している」と語った。
チケットは前売り券だけで300枚売れた。当日も予想以上に客が集まり、今回初めて黒字化する見込み。来年も開催したいと意気込むソウさんは「売り上げは母国の避難民支援に充てるつもりだ。日本人にもミャンマーを知ってもらうきっかけになればうれしい」と話した。





