
2月8日に投開票された衆院選で自民党は圧勝し、憲法改正発議に必要な3分の2以上の議席を獲得した。高市早苗首相は早期の発議に意欲を示し、改正の国会議論は加速するとみられている。沖縄の視点から憲法改正の必要性を説いてきた元沖縄県副知事の牧野浩隆氏に、改憲を進めるに当たっての沖縄の役割や課題について語ってもらった。(沖縄支局・竹澤安李紗)
沖縄の自民党は現行制度で初めて、四つの選挙区全てで勝利した。とはいえ、牧野氏は今回の選挙戦を通じて、「憲法改正や安全保障政策の議論が深まらなかった」と指摘。衆院選で争点となった物価高対策は全国共通の課題だが、憲法改正や安全保障の問題は「沖縄から訴えるべき問題であり、憲法改正が日米地位協定の改定につながる」と主張する。
沖縄県は30年以上にわたって「日米地位協定の見直し」を訴えてきた。1995年に起きた米兵による少女暴行事件は、沖縄県民のみならず全国的に大きな衝撃を与えた。同事件に抗議して開かれた「沖縄県民総決起大会」には8万5000人(主催者発表)の県民が集まった。日米両政府は地位協定の運用改善を図ってきたが、「不十分」との声があり現在に至るまで抗議は続いている。
地位協定は60年に発効してから一度も改定されていない。改定は沖縄県民の悲願とも言える。地位協定を含むあらゆる「基地問題」の根本的な解決に向けて、「憲法改正が重要な鍵を握る」と牧野氏は語る。日本が集団的自衛権を行使できるようになることが改定の前提となるからだ。
憲法の第2章(第9条)「戦争の放棄」には「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とあり、戦力不保持、交戦権の否認を規定している。
現在の日米安全保障体制では、米国は日本を防衛する義務を負うが、日本は「自衛のための必要最小限度の実力を保持(防衛省)」しかできないため、米国を防衛する義務を負わない。
トランプ米大統領は1期目(2017年)から、この「片務性」を指摘してきた。トランプ氏は「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守らない」と繰り返し述べ、日米同盟は「不公平だ」と不満を示してきた。25年4月にも関税を巡る協議で、トランプ氏は赤沢亮正経済再生担当相(当時)に「日本が防衛費を十分に負担していない」と批判した。牧野氏は「トランプ氏が日本を批判する理由に注目しなければ、米国側の本音は見えてこない」と語る。
高市首相は25年10月に来日したトランプ氏と初会談し、故安倍晋三元首相の遺志を引き継ぎ、日米同盟の深化を図っている。今年2月20日の施政方針演説でも、国家安保戦略をはじめとする安保3文書を年内に前倒しして改定すると示した。
沖縄の地元2紙は翌日の社説で、施政方針に対し「国民の不安や疑問を無視した審議があってはならない(琉球新報)」「『基地の島』である沖縄は今以上に負担を強いられかねない(沖縄タイムス)」と懸念を表明した。
衆院選で自民は憲法改正の具体案に「自衛隊の明記」を掲げたが、牧野氏はそれだけでは足りず「自衛隊の海外派遣も検討すべきだ」と強調する。沖縄県内の言論空間では保守政治家が声高に、基地問題解決のために憲法改正を訴えられる環境ではなかった。自民党の候補者が4選挙区で勝利し、風向きは変わった。牧野氏は「今こそ、彼らが沖縄を代表して高市総理に、憲法改正議論に地位協定改定の視点も追加するよう要請できる絶好の機会だ」と訴える。
日米地位協定 在日米軍が日本国内で円滑に行動できるよう、国内の基地使用や米軍人の法的地位を定めたもので、1960年の日米安保条約改定時に締結された。一部の犯罪行為に関して、日本の裁判権が制限されるなど、米国の特権を認めている。日本の外務省は「日米安全保障体制にとって極めて重要なもの」と位置付けている。






