トップ国内沖縄【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦 (下)「軍国主義」批判で印象操作

【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦 (下)「軍国主義」批判で印象操作

陸上自衛隊・与那国駐屯地
陸上自衛隊・与那国駐屯地

 台湾は、国防報告書(2021年)で「偽情報の散布などによって一般市民の心理を操作・攪乱(かくらん)し、社会の混乱を生み出そうとする(中国の)〝認知戦〟」に懸念を示している。同報告書を基に、日本の防衛省は中国軍事政策の「認知領域における戦いは、既に顕在化・進行中であると捉えられている」(22年版防衛白書)と指摘した。一般市民の心理を操作する偽情報の拡散は台湾の選挙でも確認されている。

 認知戦を展開する中国中央テレビの外国語放送(CGTN)が25年12月4日に公開した「琉球の悲劇」という動画は、結論の部分で「琉球諸島は、日本に併合され今や巨大な軍事基地に転落し、先住民は根深い差別に耐え続けている。これこそ忘れ去られた琉球人民の不幸な運命の写し絵である」と主張する。

 見逃せないのは、同動画の概要欄には冒頭、「日本は近日、琉球諸島の軍事基地に中距離ミサイルを配備することを発表しました」と書かれていることだ。沖縄県で最も台湾に近い島・与那国島で計画されている03式中距離地対空誘導弾配備への反発が明らかに含まれている。

 「琉球の悲劇」の動画が公開されたほぼ10日前に当たる11月23日には、小泉進次郎防衛相が与那国島を視察した。翌日24日、中国外務省の毛寧(モウネイ)報道局長は、同島のミサイル配備計画について「緊張を故意に引き起こし軍事的な対立を扇動している」と批判。憲法改正の動きに対しては「軍国主義が息を吹き返すことを絶対に許さない」と牽制(けんせい)した。

 近年、中国外務省の報道官は「軍国主義」との語句をたびたび使用し、今年に入ってからは「新型軍国主義」と表現し、政治的な圧力を強めている。小泉氏は、日本の状況について「わが国を取り巻く安全保障環境はかつてないほど急速かつ複雑に変化している」と危機感を示した。日本政府が進める抑止力強化や防衛費増額に対し、中国外務省は「軍国主義」とミスリードし、国内や国際社会に向けて日本の誤った印象を発信しようと画策している。

 また、「軍国主義」という言葉は沖縄でよく耳にする。小泉氏は1月28日、衆院選の応援で沖縄に入った際、演説で「那覇の学校で開催予定だった航空自衛隊の音楽隊コンサートが、『軍国主義の象徴だ』と抗議が入り中止になった」と苦言を呈した。沖縄県教職員組合(沖教組)那覇支部が中止を要請したものだが、このような問題は沖縄で過去に複数回起きている。

 8日投開票された衆院選の結果、沖縄の4小選挙区で防衛力の強化を推進する自民党候補が全勝した。離島開票所の9割以上では、自民党候補が得票率1位となった。中国船の接続水域入域や領海への侵入が常態化する尖閣周辺で中国海警局の機関砲搭載船の航行をはじめ、12月に問題になった航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)機への中国軍機によるレーダー照射や、台湾周辺海域での大規模な軍事演習実施など、離島住民の危機感は増す一方だ。

 日本沖縄政策研究フォーラム(仲村覚〈さとる〉理事長)が13日に東京都内で開いた講演会に登壇した批評家の西村幸祐氏は、「意図も持って一つ一つの嘘(うそ)をつないで物語(ナラティブ)を作っている」と中国のプロパガンダを説明。CGTNが公開した「琉球の悲劇」の動画に対しては、「反論しなければ(認知戦の)攻撃を許していることになる。日本政府は、一つずつフェイク(偽情報)を並べ立て完全に反論するビデオを作らなければいけない」と強調した。中国が仕掛ける認知戦を看過してはならない。

(沖縄「帰属問題」取材班)

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