2025年12月以降、インフルエンサーなど日本人女性の動画が盗用され中国のSNSに投稿されている。動画には、女性が日本語で話している内容とは関係のない、「琉球(沖縄県)は日本ではない」「琉球が早く(中国に)返還されてほしい」と偽翻訳の中国語字幕が付けられている。同様の動画が中国SNSに100本以上投稿され、多くの「いいね」が付いている。
「沖縄は日本ではない」と発信する工作に対し、「沖縄県が47都道府県の一つ」と分かり切っている日本人が影響を受けることはほとんどない。しかし、国民や沖縄県民が知らないところで「琉球・沖縄の人々を先住民族と認めて権利を保障すべき」とする日本政府に対する勧告が2008年以来、国連の自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会などから6回も出されている。これに対し、日本の外務省は国連の勧告に対し「沖縄県に居住する人あるいは沖縄県の出身者は日本民族」と反論している。

その一方で、米ニューヨークやスイス・ジュネーブの国連では、沖縄の政治家が政府の意に反する演説をしている。当時、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り基地問題を「人権問題」と発信したい目的があった。
14年9月には、沖縄選出の糸数慶子参院議員(当時)が沖縄の伝統衣装を着て「先住民族世界会議」で演説。15年9月には翁長雄志沖縄県知事(当時)が人権理事会の先住民族問題を扱う会議に出席して「沖縄が自ら自己決定権を持つ主体である」と述べた。23年9月には玉城デニー知事が国連人権理事会で「辺野古移設は民意ではない」旨のスピーチをした。
一部県民の中に「米軍基地は差別だ」と感じる人がいることも事実だが、復帰50年の22年に共同通信社が県民を対象にした世論調査で94%が「本土復帰して良かった」と答えている。17年の地元メディアの調査では、沖縄独立を望むのは2・6%だった。
13年5月に設立された「琉球民族独立総合研究学会」は、国連の諸会議に精力的に参加し、沖縄の「差別」や「先住民の権利」を訴えている。日本への帰属を支持する県民が圧倒的多数で、先住民族として独立を望む県民はごく少数であるにもかかわらず、国連の各委員会が一部の声を「沖縄全体の声」だと捉えている。
日本に詳しくない外国の人々が「日本の北にアイヌ民族という先住民族がいるのだから、南に先住民族がいてもおかしくない」と勘違いすることも十分に考えられる。沖縄にある米軍基地反対運動は、中国が仕掛ける認知戦の「先住民族論」にも結果として利用されている。
豊見城市議会が15年12月、「国連各委員会の『沖縄県民は日本の先住民族』という認識を改め、勧告の撤回を求める意見書」を賛成多数で可決した。危機感を募らせた県内の政治家や有志が、翁長氏の言動が「沖縄は独立を望んでいる」と国際社会に間違ったメッセージを送るものだと批判運動を展開する動きもあった。25年12月にも、石垣市、豊見城市、糸満市は国連の先住民族勧告などを非難する議会決議を出している。

中国の認知戦に詳しい一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長は、中国の工作について「(沖縄の)中国の影響下への編入を正当化しようとするものだ」と分析。1月30日に記者会見を開き、国連人権委におけるさらなる勧告を警戒し、同委員会へ「沖縄(日本)に対する悪意ある外国の影響工作への対処」という意見書を提出したと発表した。
日本政府が有効な反論を行わなければ、国連から追加勧告がなされ、先住民族認定を足掛かりに沖縄を「非自治地域(植民地)」リストに登録する。自衛隊や米軍の駐留が先住民族への抑圧と定義され、日本は戦わずに主権を失うことになる。仲村氏は中国による国連工作のシナリオを強く警戒。「先住民族論は沖縄のローカルの問題ではなく、日本の国防の最前線の問題として全国民が知らなければならないことだ」と警鐘を鳴らす。
(沖縄「帰属問題」取材班)







