トップ国内沖縄【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦(上)中国が国連で「先住民族論」発信 国営放送が特集で偽情報

【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦(上)中国が国連で「先住民族論」発信 国営放送が特集で偽情報

中国中央テレビの外国語放送の「琉球の悲劇」より引用
中国中央テレビの外国語放送の「琉球の悲劇」より引用

 「沖縄県は日本の領土である」。この日本人にとって疑う余地もない認識に対し、中国は「琉球諸島(沖縄)の主権は本当に日本のものなのか」と疑問を投げ掛ける主張を展開する。台湾有事を巡る高市早苗首相(自民党総裁)の答弁があった2025年11月以降、中国は日本への揺さぶりを強めると同時に国際社会への発信を強化している。戦後の米軍統治など沖縄の帰属を巡る複雑な歴史と沖縄県民が抱いてきた政府への不満が中国に利用されている。(沖縄「帰属問題」取材班)

 中国が仕掛ける認知戦の一つが沖縄の「先住民族論」だ。中国中央テレビの外国語放送(CGTN)は25年12月、「琉球の悲劇 映像で分かる琉球の歴史」という約12分の動画を公式サイトや動画配信サイト「ユーチューブ」で公開した。

 CGTNは米国務省が過去に「中国の外交機関」と認定し、中国共産党政権の宣伝組織と見なした国営メディアの国際放送部門だ。同番組は「琉球王国がなぜ歴史から消えたか」を伝える内容で、英語で話すキャスターの言葉に日本語字幕が付けられている。

 動画内で「15世紀に建国された〝琉球王国〟は明(みん)王朝と朝貢(ちょうこう)関係」があり、「(明は)琉球王国に安定した貿易をもたらしただけではなく、政治制度、儒教文化、暦法や生産技術の形成にも深い影響を及ぼした」と説明。その上で「数世紀にわたり琉球人は自らの風習、礼儀、文化的アイデンティティーを形成してきた。これらは日本とは全く異なるものだ」と断言している。

 しかし、沖縄に根付いている文化は15世紀以前の古代日本との共通点が多い。独特な沖縄の方言「うちなーぐち」は、日本語と文法が共通。「愛(いと)おしい」という意味がある古語の「かなし」が沖縄の方言「かなさん」と同じ意味で残っているなど、平安時代などの古代日本語の語彙(ごい)が多く残っている。イザナミなど沖縄の信仰においても日本神話とのつながりもあり、「日本と異なる」というCGTNの主張に誤りがある。

 このほか同動画には、県内でも米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対の活動家として知られる米国ハワイ在住のロバート・カジワラ氏が登場する。「琉球(沖縄)原住民のミュージシャン」と紹介されたカジワラ氏は「沖縄がある琉球は古来、独立した国で、他国や日本自身も琉球を独立国家として認めていた」と発言した。

 注目すべきは、カジワラ氏が「琉球(沖縄)原住民」と紹介されている部分だ。「原住民」の表現に中国の思惑が表れている。原住民とは先住民・先住民族のことだ。動画では10回以上「琉球人」「沖縄人」「琉球人民」「先住民族」などと表現し、中国は沖縄には「先住民族」がいると国際社会へアピールしたい考えだ。

 中国共産党機関紙系の環球時報も11月、沖縄の日本帰属を巡る「論争が絶えず存在している」とする社説を掲載。日本政府はこれまで「日本にアイヌ民族以外に少数民族は存在しない」という一貫した立場を取ってきた。木原稔官房長官は12月、「中国の報道にコメントする必要はない。なぜならば沖縄がわが国領土であることには何ら疑いもないからだ」と強調した。

 10月には、人権問題を扱う国連総会第3委員会で、中国の孫磊(スン・レイ)国連次席大使は「沖縄人のような先住民族に対する偏見と差別をやめよ」と日本政府を批判した。専門家によれば中国政府の代表が公式の場で沖縄の「先住民族」と発言したのは初めてだ。

 中国の認知戦に対して危機感を募らせる県内の一部地方議員は、中国に対して抗議するよう玉城デニー知事に要請したが、玉城氏は「県庁内で民族論の議論は行っていない」として明確に反論する姿勢は見せなかった。

 沖縄問題に詳しい評論家の篠原章氏は国連の人権を扱う委員会について「自国内にとんでもない差別を抱えている国々が他国の差別を問題にする場」であり、「矛盾の塊」と評価している。中国の認知戦は日本の主権を脅かす段階に入っている。

【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦 (中)

【連載】沖縄の「帰属問題」-中国が仕掛ける認知戦 (下)

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