
あまり知られていないが、沖縄県与那国島には固有の馬が生息している。
日本の最西端、台湾までわずか111㌔のこの島では、肩の高さが1メートルほどしかない小さな馬が草をはむ姿を見ることができる。その名は「与那国馬(ヨナグニウマ)」。日本に現存する8種の在来馬のうちの1種で、1991年には国の天然記念物に指定されている。
与那国馬は、小柄ながらも、岩場や起伏の多い地形を力強く踏み締める太くて丈夫な足腰と踵(かかと)の強さを持ち、素直でおとなしく、人に寄り添うような優しい気質が特徴的だ。
与那国馬の誕生の起源には諸説ある。確かな資料は残っていないが、琉球国時代に台湾や中国との往来が活発だったことから、海を越えて馬がもたらされたとする説が有力だ。江戸時代の書物「与那国島由来記」には馬の記述が残っていることから、少なくとも18世紀以前から島にいたことがうかがえる。
馬が多く使われたのは戦前から1960年代にかけて。島には舗装道路がなく、農業や運搬、日用品の移動に至るまで、馬は生活の基盤を支えるインフラの役割を果たした。
しかし、自動車や農機具の普及により馬の役割は急速に失われた。50年代には100頭以上いた与那国馬は、90年代には50頭を割り込むまでに減少。飼育者の高齢化も進み、一時は絶滅さえ危ぶまれた。
転機となったのは90年代に始まった保存活動だ。与那国町が保存会を設立し、馬を観光や教育に活用する取り組みが始まった。その結果、80頭前後(2024年時点)が確認されており、馬とゆっくり島内を歩く「外乗(がいじょう)」体験などが観光資源となっている。
与那国を訪れる際は、ぜひおとなしくて可愛(かわい)い馬に会いに行ってみてはいかがだろうか。
(K)





