トップ国内沖縄近代空手の父 糸洲安恒 【美ら風】

近代空手の父 糸洲安恒 【美ら風】

 沖縄が世界に誇る武道・空手。その礎を築き、「空手の父」と称された人物が沖縄出身の糸洲安恒(いとすあんこう)だ。

 空手発祥の地・沖縄(琉球)では、古くから士族(武士)たちが「手(ティー)」と呼ばれる武術の腕を磨いており、19世紀ごろになると中国拳法の影響を受けて、戦闘技術に特化した「唐手(トゥーディー)」が誕生する。

 しかし明治になり、士族の存在が薄れていくにつれ「手」や「唐手」を伝承する人数も減少の一途をたどることとなった。そこで、唐手の技術や稽古方法を改良し、初めて学校教育に取り入れた人物が糸洲だった。

 那覇手流の大家・長浜筑登之親雲上に弟子入りし、腕を磨いた糸洲は、明治12年、自宅で子供たちに唐手を教え始める。その中で、単なる戦闘武術としてではなく、武道としての精神性に重きを置き、学校での教育の枠組みに準じるよう「形」の訓練を主体として試行錯誤を続けた。

 そして明治38年、沖縄県立第一中学校と沖縄師範学校において、体育の授業で初めて「唐手(からて)=空手」の指導が始まった。これが近代空手誕生の瞬間である。公教育に取り入れられたことにより空手は瞬く間に広まり、その波は全国、全世界へと拡大していった。

 その後、糸洲は、空手を学ぶ上での心得を説いた『糸洲十訓(唐手心得十カ条)』を書き上げる。ここで確立された武道としての高い精神性は、糸洲の下で修行を積んだ船越義珍が後に残した「空手に先手なし」の格言にも受け継がれている。

 現在、空手の競技人口は全世界で約1億3000万人以上いるとされている。多くの人が日々鍛錬に励む姿は、糸洲の功績なしには見ることのできない光景だったかもしれない。

(K)

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