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沖縄にも家族会設置を ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子代表が講演 那覇市

借金返済で闇バイトも 政府の無策を厳しく批判

講演する田中紀子氏=2日、那覇市の八汐荘
違法であるにもかかわらず国内で利用が広がるオンラインカジノの実態と、ギャンブル依存症の対策などについて考えるシンポジウム「オンラインカジノの闇 子ども達を危険な闇から守れ!」(主催=ギャンブル被害を無くす沖縄県民の会、後援=世界日報社など)が2日、那覇市内で開催された。依存症当事者やその家族に対する支援に取り組む「公益財団法人ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表が講演し、「沖縄にも依存症家族の会設置を」と呼び掛けた。(沖縄支局・川瀬裕也)

昨今、オンラインカジノで賭博をし、有名タレントらが相次いで書類送検されるなど、オンラインカジノ問題に注目が集まっている。警察庁が2024年から25年にかけて実施した調査によると、全国でオンラインカジノを利用した経験があるとした人は推計で337万人に上る。年間の賭け総額は1兆2400億円超とされ、すでに巨大な市場を形成している実態が明らかとなっている。

調査の中で注目されるのは、利用経験者のうち59・6%が「自分はギャンブル依存症かもしれない」と認識し、また43・5%が「オンラインカジノは違法だとは知らなかった」と回答している点だ。

これらの問題について田中氏は、アフィリエイターやユーチューバーらによって「オンラインカジノは日本では違法ではないなどの誤情報がネット上に流布されている」ことなどを問題視。「著名人がSNSで宣伝していたから」「海外の運営会社なら国内でも合法だから」といった考えが、違法性への認識の甘さを助長していると分析する。

田中氏は、オンラインカジノが禁止されている日本が世界の売り上げ第3位の市場規模になった原因について、「政府が無策で、ほとんど対策を取ってこなかったから」と厳しく批判した。政府が18年に制定した「ギャンブル等依存症対策基本法」について、「違反者を罰する特別法ではなく、単なる理念法にすぎない」と指摘した。

今国会で、オンラインカジノのサイト開設や誘導行為を禁止することや、国や自治体による違法性の周知を図ることなどを盛り込んだ改正案が議論されているが、田中氏は、罰則規定がないため「どこまで実効性があるのか」と疑問を呈した。

政府が本腰を入れた対策に踏み込めていない現状について、田中氏は、「アルコール、薬物、ギャンブルは、その背後に『依存症ビジネス』が存在し、強い利権構造がある」と指摘。「このままでは日本が駄目になる。多くの人に現状を知ってほしい」と訴えた。

オンラインカジノ関連で特に深刻な問題として挙げられるのが借金だ。警察庁の調べでは、経験者の46・2%が、オンラインカジノが原因で消費者金融や家族、知人らから借金をしていたことが分かった。田中氏は、「依存症による金欠から闇バイトや犯罪に手を染めるケースが多い」と語り、実際に支援団体に通う依存症当事者の中に闇バイトに関与した人物がいたと明かした。

また、オンラインカジノを始めてから1カ月以内に借金をした人の割合は6割を超えるとの独自調査を紹介。公営ギャンブルなどと比べても異例のスピードで金銭的に追い込まれている実態に警鐘を鳴らし、「スマホで手軽に始められるが故に、犯罪や闇バイトの温床になりかねない」と強調した。

講演の中で田中氏は、「全国ギャンブル依存症家族の会」の支部が沖縄を含む5県にまだ設置できていないことを明かし、今後「沖縄にも家族の会を設置するために尽力したい。地域の皆さんにもぜひ力を貸してほしい」と呼び掛けた。

あいさつする砂川竜一牧師=2日、那覇市の八汐荘

主催者を代表してあいさつした、つきしろキリスト教会(南城市)の砂川竜一牧師は、「子供たちが知らぬ間に、大人の目が届かないところで、ギャンブル依存に陥り、人生を台無しにしてしまわないよう啓発活動が重要だ」と訴えた。

また、来賓としてあいさつした国場幸之助衆院議員は、「匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)や闇バイトと、オンラインカジノの借金が深く結び付いている事例が多い」とした上で、「現場の声を反映しながら、実態に即した対策に取り組みたい」と語った。

講演会に参加した宜野湾市在住の50代女性は、「知らないことばかりで驚いた。政府や県はもっと真剣に取り組んでほしい」と話した。

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