
任期満了に伴う沖縄県うるま市長選挙が4月27日投開票され、現職の中村正人氏(60)=自民、公明推薦=が2期目の当選を果たした。対立候補には玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力が擁立した無所属新人の照屋大河氏(53)=共産、立民、社民、社大推薦=が立候補した。前県議会副議長で無所属新人の照屋守之氏(69)も出馬し保守分裂の構図となったが、「実績」や「国との連携」をアピールし、市政継続を訴えた中村氏に軍配が上がった。(沖縄支局・川瀬裕也)
「三つどもえとなり、スタート時点から大変厳しい選挙だった」。27日、当確の報道を受け、中村氏は事務所に集まった支援者を前に、涙をにじませながら感謝を述べた。
選挙戦で中村氏は、市内公共施設の建て替えなどのインフラ整備や、雇用政策などの経済政策を訴えていた。一方、玉城知事や「オール沖縄」の全面支援を受けた対立候補の照屋大河氏は、子育て支援や基地問題を争点に選挙戦に挑んだが、及ばなかった。照屋守之氏も「保革を超えた市民目線の市政運営」を掲げ市政刷新を訴えたが、票の掘り起こしには至らなかった。
大河氏の敗北で、「オール沖縄」勢力は、県内11市全ての市長を失った状態が続く。内情を知る関係者によると、特に今年1月の沖縄市長選とうるま市長選は「オール沖縄」にとって「エース級候補を擁立した重要選挙だった」といい、支持離れが顕在化している。夏の参議院選を控え、態勢の立て直しが急務となっている。
昨今の「オール沖縄」の連敗について、自民県連関係者は、「市政課題に対する現実的な対案の欠如」によるものだと分析する。かつては「オール沖縄」の旗印の下、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を軸に広範な支持を得られたが、「生活密着型の課題では、他陣営との差別化ができていない」(同関係者)と指摘した。
近年の選挙で、国との協調を通じた予算確保やインフラ整備、子育て支援策を訴える保守派が連勝している現象はまさに、有権者の関心が「イデオロギー」から「実務能力」へとシフトしていることの顕著な表れといえる。
また、「オール沖縄」は多くの選挙で、いわゆる政党色の強い候補を擁立し続けていることも敗因の一つだとの見方がある。保守・中道層の支持を得られないだけでなく、「オール沖縄」の支持母体の一角であった連合沖縄も一部が離脱するなど、組織力の低下も見られる。
さらに昨年の衆院選で地域政党・社会大衆党議員が「オール沖縄」の候補者を支援しなかった結果、今夏の参院選に向け2期目の立候補を表明していた現職の高良鉄美参院議員=社大党委員長=が出馬を取りやめるなど、足並みは揃(そろ)っていない。
中村氏陣営のある市議は、「最近の選挙は、まるで沖縄が保守王国のような結果だ」と口にした。今回の選挙で自民、公明など県政野党は、夏の参院選と来年の知事選に向け、さらなる足掛かりを築いた形となった。
かつてのように、基地問題のワンイシューで選挙を戦う戦略が限界に達しつつある中、「オール沖縄」は抜本的な戦略転換が求められている。
うるま市長選得票数
投票率53・88%
▼(当)中村正人氏 25699票 自民、公明推薦
▼照屋大河氏 18725票 共産、立民、社民、社大推薦
▼照屋守之氏 8069票 無所属