トップ国内沖縄「狼魔人日記」ブロガー 江崎孝氏の功績称える

「狼魔人日記」ブロガー 江崎孝氏の功績称える

浦添で偲ぶ会

指一本で事実を伝える 妻・洋子さん
歴史戦は勝訴と慰められ 徳永信一氏

江崎氏の遺影を前に、思い出を語る妻の洋子さん(左)=6日、浦添市社会福祉センター
江崎氏の遺影を前に、思い出を語る妻の洋子さん(左)=6日、浦添市社会福祉センター
沖縄の保守系ブログ「狼魔人日記」の管理人として知られたブロガーの故江崎孝氏(享年85)を偲(しの)ぶ会が6日、浦添市内で有志らによって開かれた。江崎氏と長年活動を共にしてきた人々が出席し、江崎氏が残した功績を振り返り、その遺志を受け継ぐことを誓い合った。(沖縄支局・川瀬裕也)

江崎氏は1941年、沖縄県に生まれ、戦前戦後の混乱期に少年時代を過ごし、慶應大学経済学部を卒業後、東京で貿易会社に勤務した。2004年に沖縄の歴史や政治に関するブログ「狼魔人日記」を開設。革新勢力が席巻する沖縄言論界に果敢にメスを入れ、沖縄戦における集団自決問題や、基地問題などについて、膨大な資料を基に独自の視点を発信し続けた。

地元紙などの論調と真っ向から対立する江崎氏の歯に衣(きぬ)着せぬ筆致は、多くの読者を惹(ひ)き付けると同時に、時に賛否両論を巻き起こすこともあった。しかし、一貫して沖縄の未来を憂え、自由な言論空間の必要性を訴え続けた姿勢は、沖縄の世論に大きな影響を与えてきた。

さまざまな功績を残してきた江崎氏だが、25年1月、沖縄県内の自宅で死去した。偲ぶ会では冒頭、江崎氏に全員で1分間の黙祷(もくとう)が捧(ささ)げられた。式典であいさつに立った江崎氏の妻・洋子さんは、江崎氏が03年に脳出血で倒れた後、半身麻痺(まひ)を患いながらも「不自由な体で、指一本を使いながら一文字ずつパソコンの文字を打つようになった」と明かし、「とても大変そうでしたが、沖縄の事実を伝えるという新たな生きがいを見つけ、本人はとても楽しそうで生き生きしていた」と振り返った。

江崎氏に感謝を伝える我那覇真子氏=6日、浦添市社会福祉センター
江崎氏に感謝を伝える我那覇真子氏=6日、浦添市社会福祉センター

江崎氏と共に保守系市民団体、「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」を立ち上げ、現在代表を務めるジャーナリストの我那覇真子氏は、「(琉球)新報、(沖縄)タイムスの嘘(うそ)、捏造(ねつぞう)記事の証拠は全部(江崎氏の)ブログに残っている」と語り、「これから言論戦を戦う力として師匠(=江崎氏)がブログをわれわれに残してくれた。これからも師匠と一緒に戦っていく」と感謝と決意を述べた。

続いて、沖縄戦における「集団自決」に「軍命」があったかなどが問われた「沖縄集団自決冤罪(えんざい)訴訟」(大江・岩波裁判)や、ドキュメンタリー作家の上原正稔氏が集団自決の真相について触れた連載を琉球新報社が一方的に中断したことの違法性が問われた「パンドラの箱訴訟」など、江崎氏が関与した裁判で弁護人を務めた徳永信一弁護士がマイクを握った。

江崎氏とのエピソードを語る徳永信一氏=6日、浦添市社会福祉センター
江崎氏とのエピソードを語る徳永信一氏=6日、浦添市社会福祉センター

徳永氏は、沖縄集団自決冤罪訴訟の一審判決で敗訴が言い渡され、落ち込んでいた際、江崎氏から「裁判では敗訴だったが、長年沖縄で歴史的事実として信じられてきた集団自決の軍命の存在が『立証されていない』と判決文に書かれたという意味で、歴史戦では立派な勝訴だ」と励まされたとのエピソードを明かし、「その言葉にとても慰められた」と語った。

来賓として参加した石垣市議会議員の友寄永三氏は、江崎氏が革新系の前石垣市長の女性職員性的暴行疑惑、歴史教科書問題などを徹底的に追及したことで、保守系の市政誕生を後押ししたと振り返った。「(革新市政では)子供たちに自虐史観に基づく教育が行われ、国防についても学ばせず、市役所には日の丸も掲げていなかった」とした上で、「石垣は江崎さんのブログによって救われた」と感謝を述べた。

式典では、江崎氏の長年の活動をまとめた映像が流され、出席者の中には涙を拭う姿もあった。主催者の一人で、長年江崎氏と活動を共にしてきた錦古里(にしこり)正一(まさかず)氏は、「きょうは江崎氏を偲ぶ会ではなく、称(たた)える会にしましょう」と呼び掛け、会場は拍手に包まれた。錦古里氏によると、これまでの江崎氏のブログのデータを今後、書籍かアーカイブなどの形で残していく計画を模索しているという。

かつて、革新勢力からの罵詈(ばり)雑言で溢(あふ)れたこともあった江崎氏のブログの最後の投稿は、「このブログで、私の人生、生き方、考え方が変わりました」や、「沖縄の真の姿を教えていただきました」などの、感謝のコメントで埋め尽くされている。より良い沖縄を目指して戦った「狼魔人」の足跡は、沖縄のあるべき姿を人々に問い続けていく。

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