台湾有事念頭 那覇で公開憲法フォーラム

ウクライナ戦争や、今後予想される台湾有事などを念頭に、日本の安全保障と憲法の在り方について考える公開憲法フォーラム「日本の未来を守りたい」(主催=神道政治連盟)が8日、那覇市内のホテルで開かれた。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が基調講演を行ったほか、中山義隆石垣市長や、元陸上自衛隊西部方面総監の本松敬史氏らが登壇し、有事の際の住民保護の問題点などについて議論を深めた。
(沖縄支局・川瀬裕也、写真も)
日本の有事、肌身で感じる 中山・石垣市長
国民保護、発動条件難しい 元陸自・本松氏
「日本を取り巻く環境と安全保障」と題して基調講演した櫻井氏は、現在も戦闘が続いているウクライナ戦争について、ロシアがウクライナを侵攻した際、中国がロシアの背後にいたため、「国際社会はほとんど彼(プーチン大統領)を止められなかった」と振り返った。その上で、対中強硬派で固められた米国の第2次トランプ政権の停戦に向けた一連の動きを評価した。
一方で先日、トランプ大統領が、日米安全保障条約について「不公平である」との見解を示した件について、在日米軍に対する基地提供などで「どれだけ米国側も利益を得ているかを(石破茂首相は)しっかり主張するべきだ」と訴えた。
「今まで我々は安倍(晋三)元首相の成功体験によって守られてきた」とし、「理想主義が全く通用しない世の中になった。現実を受け止めると、中国を抑止できるのは軍事力だけだ」と語った上で、「憲法改正し、日米台で手を携え、絶対に中国に侵略戦争を起こさせないだけの力と気力を沖縄から発信していこう」と呼び掛けた。
また櫻井氏は、憲法には「家族を大切にする心がどこにも書かれていない」と指摘。「日本人は『両性の合意にのみ基づいて』結婚するものではない」と不快感を示し、「誰よりも家族を大切にする沖縄の人々が、現行憲法を読んだら違和感を覚えるはずだ」と憂いた。「憲法9条も含め、現行憲法には、日本人らしからぬ価値観があちこちに書かれている。なんとしても今、憲法を変えなければならない」と強調した。
その後、有事の際の住民保護などに焦点を絞りパネルディスカッションが行われた。中山市長は、石垣市の尖閣諸島周辺で中国海警局の艦船が接続水域での航行をスカレートさせている現状を説明。昨年1年間で同艦船が確認された日数が355日だったと明らかにし、「台湾有事は日本有事という言葉があるが、実際に我々はその感覚を肌身で感じている」と強調した。
中山義隆氏、本松敬史氏、櫻井よしこ氏ら=8日、那覇市の沖縄ハーバービューホテル.jpg)
日本に対する武力攻撃が予測された事態の際、宮古・八重山地域5市町村の住民を全員九州に避難させる計画について、「(国や県の)想定は十分なものとはいえない」と指摘。「いつも図上訓練ばかりで、実際に人を動かす訓練は昨年初めて実施された」とし、「令和4年から始動した計画の全体像がまだ全く決まっていない。有事はいつ起こるか分からない状況で、不安が強まっている」と危機感を示した。
また、有事の際に台湾から大勢の避難民が漁船やボートなどで押し寄せた場合、市の職員だけでの対応には限界があるとの認識を示し、「治安維持をどうするのか、避難民の中に工作員が紛れ込んでいたらどうするのかを考えなければならない」と警鐘を鳴らした。
続いて本松氏は、台湾有事に伴う武力攻撃事態を想定した国民保護訓練は「かなり前進してきてはいる」としつつも、武力攻撃予測事態の認定以降でなければ国民保護措置が発動されないことを問題視した。一方で同事態を認定した時点で、国際法上「交戦国」になるため、先島諸島の島民が逃げ遅れた場合、人質となる可能性があるとして、同事態の認定条件が「非常に難しい」と指摘した。
この時点で自衛隊は作戦準備と国民保護を同時に行わなければならない状態に陥るとして、「これは沖縄戦の教訓を学んでいないことになりかねない」と危険視した。
このほか、土地に愛着がある住民らを避難させる際の説得の難しさや、避難民の避難先での生活保障の問題点などについても議論が交わされた。
主催者の打田文博神道政治連盟会長は、「自衛・防衛の力を備えることが抑止力となり、平和を維持できる。そのために憲法改正をする時が来ている」とあいさつした。