板山真弓氏、番匠幸一郎氏、村井友秀氏、久保文明氏=1日、那覇市のノボテル沖縄那覇.jpg)
米国で第2次トランプ政権が発足したことを受け、今後の日米同盟の在り方や、日本の安全保障戦略について考えるシンポジウム「米国新政権と日米同盟」(笹川平和財団、平和・安全保障研究所共催)が1日、那覇市内のホテルで開かれた。防衛大学校長の久保文明氏が基調講演をしたほか、安全保障の専門家らによるパネルディスカッションなどが行われた。(沖縄支局・川瀬裕也、写真も)
首脳会談は大きな成果 久保氏
南西諸島の抑止力強化を 番匠氏
基調講演で久保氏は、現在の安全保障情勢について、昨今のウクライナ戦争や中国の覇権拡大などを念頭に、「法の支配に基づく国際秩序の在り方が問われる事態になっている」と指摘。これまで、圧倒的な軍事力で国際秩序を支えてきた米国は、2016年の第1次トランプ政権誕生以降、対中抑止に「一気に舵(かじ)を切っている」ことから、「その役割を終えようとしている」と分析した。
その上で、2月7日に開かれた石破茂首相とトランプ大統領の日米首脳会談について、「日本にとって重要な文言が共同声明で出されたことは大きな成果だ」と語った。特に「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性」が組み込まれたことについて、「これまでよりも強い言葉で踏み込んでいる」と評価した。
続いて行われたパネルディスカッションでは、防衛大臣政策参与で元西部方面総監の番匠幸一郎氏らが登壇した。番匠氏は、かつてヨーロッパだった世界の安全保障問題の中心は、現在アジアに移り変わったと指摘。抑止が破綻したことにより、ウクライナ戦争や中東危機が発生していると述べた上で、軍事的動向を強める中国やロシア、北朝鮮などに対処するため、「沖縄を含む南西諸島における、反撃能力を含めた抑止力の強化が必要不可欠だ」と語った。
国際関係学に詳しい東京国際大学の村井友秀特命教授は、日米同盟の問題点として「非対称性」を議題に上げ、過去に日米同盟についてトランプ氏がしたとされる発言「米国は日本を守るが、日本は米国を守らない」を紹介した。共通の犠牲や価値観を伴う同盟が最も強固であるとの持論を語り、「『自分の国は自分で守る』という姿勢を前面に出すことが、一番米国人の理解を得られる方法だ」と訴えた。
一方、国士舘大学の板山真弓准教授は同問題について、両国の歴史を振り返った上で、「日米同盟は対称・非対称ハイブリッド型の同盟だ」と主張。日本が基地を提供し安全保障の利益をもらう構造だけが注目されやすいが、「範囲は違えど、日米で共同防衛をしてきた歴史がある」と語り、「人と物だけでなく、しっかり人と人も繋(つな)がっているのが日米同盟だ」と述べた。
このほか、米国が今後関税などで日本に対し厳しい立場を取った場合の日本側の対応や、自衛隊と米軍の指揮系統や共同訓練の在り方などについて議論を深めた。登壇者らは、国際的に不安定な安全保障情勢の中、一層の外交努力と日米同盟のさらなる強化が必須であるとの認識で一致した。