トップ国内沖縄少子化で「墓じまい」が急増 「無縁墓」問題考えるシンポ

少子化で「墓じまい」が急増 「無縁墓」問題考えるシンポ

高良倉吉・琉大名誉教授が講演

現在は多様な個人墓が散在

シンポジウムで発言する堤純一郎理事長(左から2人目)=沖縄県メモリアル整備協会公式ユーチューブより

墓を引き継ぐ親族などがいなくなり、放置された「無縁墓」の問題について考えるシンポジウム「沖縄のお墓~過去・現在・未来~」(主催=沖縄県メモリアル整備協会)がこのほど、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。琉球大学の高良倉吉名誉教授が県内の墓の歴史について基調講演を行ったほか、無縁墓を防ぐ取り組みについて議論が交わされた。(沖縄支局・川瀬裕也)

自治体と民間の協働が不可欠 堤・メモリアル整備協会理事長

本土と比べ、先祖崇拝の強い沖縄において、墓は重要な意味合いを持つ場所だ。しかし近年、核家族化や少子化に伴う、継承者不足や経済的負担増などにより、管理者が不在となる「無縁墓」が増加傾向にある。那覇市では墓全体の約10%を無縁墓が占めており、放置された墓が荒らされたり、粗大ごみが不法投棄されるなど、社会問題化している。

墓を無縁墓にしないための取り組みの一つに、墓地や納骨堂内の遺骨を、親族が管理しやすい別の場所に移す「改葬(墓じまい)」がある。県メモリアル整備協会によると、改葬の件数は全国的に増加傾向にあるといい、県内では昨年4841件(許可申請数)に上り、過去最多を記録した。

シンポジウムで講演する高良倉吉氏=沖縄県メモリアル整備協会公式ユーチューブより

同協会は、沖縄の無縁墓や乱立墓地などの「墓地問題」を民間のノウハウを取り入れた整備事業で解決するため、1994年に設立された公益財団法人。県内各地に散在する個人墓地の改葬促進や、管理型公園墓地の建設などに取り組んできた。同シンポは設立30周年を記念し開催されたもの。

冒頭、同協会の八城正明理事は「改葬の増加と無縁墓の増加は表裏一体の事象だ。自分事として考えてもらうきっかけになれば」とあいさつした。

基調講演では、沖縄の歴史に詳しい高良氏が登壇。歴史研究を始めた当初、「沖縄は墓だらけの島」との印象を持ったと振り返った。かつて県内には個人墓はほとんどなく、血のつながりは関係なく、集落ごとで死者を供養する「村墓」や、門柱(親族)が一緒に入る「集団墓」が主流だったと解説し、現在は県内各地に掘り込み式の墓(フインチャー)や亀甲墓、破風墓など、多様な種類の個人墓がつくられるようになっていったと説明した。

不法投棄の警告看板などが並ぶ墓地=浦添市内(川瀬裕也撮影)

これまでの研究で、墓に残された数々の碑文を目にしてきた高良氏は、「沖縄のお墓は、当時の人々の精神性・社会性を反映しており、その人々の生きた歴史を現代のわれわれに伝えてくれる」と強調した上で、「これらの伝統的価値観や意義を大事にしながら、現代、未来に向かって、お墓をどう整備していくかに向き合わなければならない」と語った。

引き続き各界有識者を交えたパネルディスカッションが行われ、無縁墓を防ぐ取り組みなどについて議論が交わされた。

同協会の堤純一郎理事長は、沖縄で改葬が行われる際、遺骨を移動するだけで、残った墓石がそのまま放置される事例が多いことなどを紹介。「墓石の撤去には多額の費用がかかるため、改葬のみで終わってしまう人が多いようだ」とした上で、「これらの無縁墓や空き墓が、都市開発の障害となっている」と問題視した。

公益社団法人全日本墓園協会の横田睦専務理事は、沖縄特有の墓整備の問題点について、墓の面積が大きい点と、墓の管理者と土地の所有者が別であるケースが多いことなどを指摘。「墓だけではなく、土地の所有相続の問題もセットで考えなければ解決しない」との見方を示した。

元那覇市都市計画部長の新垣昌秀氏は、かつて公園整備事業に携わった際、墓の所有者が分からず苦労したエピソードなどを紹介。都市整備計画に伴う墓の移転が進まない理由について、「無縁墓だけが原因ではなく、移転先が決まらないことも大きな問題だ」と新たな視点を提示した。

元那覇市環境部長の島田聡子氏は、無縁墓での不法投棄の問題を議題に上げた。家具・家電やシーミー(清明祭)後のごみなどが無縁墓に放置されるケースが相次いでいる現状を紹介し、これらの問題が「非行や犯罪の温床と化したり、地域の景観の悪化につながる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

これらの議論を踏まえ、堤理事長は、「今後、無縁墓や空き墓を管理するための体制が必要だ」と提言した上で、そのために「自治体と民間の協働が必要不可欠だ」との見解を示した。

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