トップ国内【連載】第2次高市改造内閣の課題(4)国家情報戦略策定し法整備へ

【連載】第2次高市改造内閣の課題(4)国家情報戦略策定し法整備へ

インテリジェンス・憲法改正

 ■スパイ防止法準備

 政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化を進める高市早苗首相は、特別国会を通じて国家情報会議、その事務局となる国家情報局の設置を実現した。内閣改造後、首相は指示書の中で、「対外情報機能の充実や外国による不当な干渉防止など、国家情報会議を司令塔とする政府のインテリジェンス機能の強化」「インテリジェンスを活用した経済安全保障政策の推進」を唱えた。

連立与党の憲法改正条文起草協議会に臨む自民党の新藤義孝氏(中央右)と日本維新の会の馬場伸幸氏(同左)=4月17日、国会内
連立与党の憲法改正条文起草協議会に臨む自民党の新藤義孝氏(中央右)と日本維新の会の馬場伸幸氏(同左)=4月17日、国会内

 スパイ、謀略といった「外国による不当な干渉」は、自衛隊の機密漏洩(ろうえい)、北朝鮮の日本人拉致や日本人に成り済ました「背乗り」と呼ばれるスパイの潜伏、産業界の先端技術漏洩などの事件が起こり、これまでも発覚している。しかし、わが国にはスパイ防止法がないためスパイを取り締まることができない。

 ただ、同法制定についてはプライバシー、知る権利など人権を巡る議論や、冷戦時代からマスコミや共産党など一部野党が頑迷に反対してきた経緯もある。首相も「国論を二分する政策転換」との認識を示している。政府は年内にも国家情報戦略を策定し、公表して、政府の行うインテリジェンス活動について国民の理解を得る方向だ。また、法案策定に向け、近く有識者会議を設けて提言を受ける。

 来年の通常国会で予想される法整備は、同法のほか外国のために活動する個人、組織、企業を登録する「外国代理人登録法」「ロビー活動開示法」、安全保障目的で行政機関による通信傍受を可能にする「対外情報収集法」、偽情報工作など外国勢力による影響工作に刑罰を科す「外国干渉防止法」などだ。

 これらは自民党インテリジェンス戦略本部の「我が国の『情報防衛力』の強化に向けて」、日本維新の会の「国家安全保障とインテリジェンス構想」で提言されている。連立政権合意では「速やかに法案を策定し成立させる」としている。

 ■時間要す機能強化

 また、同合意では「対外情報機能の充実」について来年度末までに「独立した対外情報庁(仮称)を創設」。インテリジェンス活動を行う要員に関しても、同年度末までに省庁横断的な「情報要員(インテリジェンス・オフィサー)養成機関を創設する」とした。

 一方、首相を議長とする閣僚級の国家情報会議、警察庁出身の原和也氏を局長とする国家情報局は始動して間もない。警察庁、公安調査庁、外務省、防衛省、海上保安庁、金融庁など縦割りで各分野の情報収集に当たってきた事務方が、機微に触れる秘密情報を国家情報局で共有・調整し、インテリジェンスを機能させるには相応の時間がかかるだろう。

改憲発議、自維起草が試金石

 ■討論が続く審査会

 2月の衆院選で自民党は単独で3分の2を超える議席を獲得した。高市首相はこれを受け、「憲法改正に挑戦する」と宣言した。4月の自民党大会では首相が「時は来た」と述べ、「憲法改正の発議にめどが立ったといえる状態で来年の党大会を迎えたい」と訴えた。運動方針には憲法改正を「必ずや実現する」と明記した。

 しかし、国会の憲法審査会では自由討論が続いており、特別国会で実現したのは国民投票法改正にとどまった。同法改正では、改憲案に関するラジオ広報をFM放送でも実施できるようにしたほか、悪天候時の離島での投票手続き整備を盛り込んだ。しかし、憲法改正原案の策定には踏み込んでいない。

 10月召集の臨時国会では、食料品に対する消費税率を1%に引き下げるための関連法案や、議員定数削減法案が焦点となる見通しだ。いずれも大きな論争を呼ぶ案件であり、憲法改正が本格的な政治日程に上るまでには他の多くの課題が残されている。

 ■9条に軍か自衛隊

 もう一つの課題は、自民の改憲方針が①自衛隊明記②緊急事態条項③参院選挙区の合区解消④教育の充実、という4項目のままでよいのかという点である。とりわけ①の自衛隊明記案は、第2次安倍政権下で、連立を組んだ公明党の加憲路線に配慮したものとみられている。民主党政権時代に野党だった自民党がまとめた「日本国憲法改正草案」では、9条改正で「国防軍」を規定した。

 現在の自民と維新による連立政権合意には、維新の提言「21世紀の国防構想と憲法改正」を踏まえ、9条改正の条文を検討する起草協議会を両党で設置することや、衆参両院の憲法審査会に条文起草委員会を常設することが盛り込まれた。

 政治評論家の田村重信氏は、「憲法9条を巡る議論では、自民党の『9条への自衛隊明記』案に対し、維新は自衛隊にとどめず、軍隊として明確に位置付けるべきだと主張している。まずは自民党内で改憲方針の再検討を行う必要がある。防衛力整備の進展や消費税問題への対応を踏まえれば、本格的な議論は来年以降になるのではないか」と予測する。

 自民・維新の条文起草協議会は昨年設置され、協議を開始した。改憲発議には、まず叩(たた)き台として連立与党で改憲原案を起草できるかが試金石となろう。

 一方で、憲法改正が発議されれば初の国民投票が実施されることになる。そのため、国民の理解を得やすい改憲項目に絞り、国民民主党や参政党、日本保守党など改憲に前向きな野党との合意形成を図る可能性もある。(窪田伸雄)(終わり)

【連載】第2次高市改造内閣の課題(1)維新閣内、連立新たな段階へ

【連載】第2次高市改造内閣の課題(2)「骨太」に基づく新体系へ

【連載】第2次高市改造内閣の課題(3)日米軸に「力強い外交」推進

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »