予算・消費税
■予算膨張の可能性
高市早苗内閣の政策の要は、わが国の「強い経済」に向けた「責任ある積極財政」だ。この政策は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を踏まえ、来年度予算編成への準備をもって本格始動する。その途上、秋の臨時国会(10~12月)では、来春から2年間限定で実施予定の飲食料品への消費税1%への減税に向けた関連法案の成立が主眼となる。

「骨太の方針2026」は来年度予算編成に向け、以下のような新たな体系を示す。①人工知能(AI)・半導体など戦略17分野への集中投資を行う②シーリング(要求上限)を設けない「強く豊かな日本」投資枠を新設し、複数年度にわたる予算措置で民間の予見可能性を高める③脱・補正予算を図り当初予算へ一本化し透明性を高める――。
方針を踏まえた各省庁からの来年度一般会計への概算要求は、総額143・1兆円規模となった。今年度当初(122兆円超)比で、急増しているように映る。しかし当初への集約化に従い、2025年度補正(18・3兆円)と2026年度当初(122・3兆円)の合計である140・6兆円と比べるべきである。すると伸びは約2・5兆円(1・8%)にとどまり、政府が目標とする名目成長率2%と比べても抑制的といえる。
だが予算規模は一旦(いったん)、是としても、新設の投資枠には膨張の可能性、また中長期計画(2027~40年度)との整合性、さらに市場への説明責任(示す頻度や材料)という三つの難所がある。シーリングのない投資枠には12兆円超が集まった。ただし複数年度にまたがり、防衛費など金額を示さない「事項要求」も多く、最終的に予算は膨らみ得る。また従来の単年度予算と、中長期経済財政計画との整合、進捗(しんちょく)の管理についても説明を要する。
■市場への説明責任
さらに長期金利が上昇し円安も進む中、日本の財政への「市場の信認」を問う声も根強い。骨太では、高い成長力と財政の持続可能性を確保するため、「政府債務残高対GDP比の安定的な低下」という目標が明示された。ここでも金利・為替・国債需給など、市場が注視する複数の指標との連関など、説明体系化の課題が残る。
改造内閣では全閣僚共通に広報充実への指示が下った。特に片山さつき財務相と城内実経済財政政策担当相には、コミュニケーションを強化し、経済財政運営について透明かつ一貫性ある説明を求めている。新しい予算編成を巡り、あらゆる機会を捉えた発信は、特に重要となろう。
参院野党交渉と財源確保
■財源具体化が焦点
高市内閣の年末にかけての焦点は、臨時国会で消費税関連法をどう通すかだ。引き続き自民・日本維新の会の与党会派は、圧倒する衆院議席とは裏腹に参院で過半数に数議席届かない。今年度予算を可決させた経緯にならい、政治的には日本保守党、チームみらい、無所属議員の取り込みが不可欠だ。保守は協力実績から地続きの交渉が可能だが、みらいは高所得者にも恩恵が及ぶ消費減税に慎重で、デジタルを活用した「所得連動型給付」を対案に掲げる。減税方針を譲らない政府・与党に対し、給付施策の抱き合わせや修正に応じられるかも、可決への鍵を握る。
制度面では最後まで問われるのが財源論だ。2年間の消費減税分に計10兆円の補填(ほてん)が必要と試算される。高市首相は「特例公債に頼らない」と明言し、この一線を守る以外に選択肢はない。「見通しはしっかり立っている」と自信を示すが、税制改正大綱でも財源の明示はない。年末の予算編成に向け関連法案の成立を急ぐ臨時国会の日程と、財源の具体化の足並みがそろうかを注視したい。
■無駄排除に維新閣僚
財源の捻出では片山財務相が担当する租税特別措置や補助金の見直しも注目される。改造内閣の指示書でも片山氏に、「租特・補助金の適正化」と「EBPM(証拠に基づく政策立案)推進」が明記された。ただ片山氏は参院全国比例選出で、商店街や士業、飲食業など幅広い業界団体の支援を受ける。支持基盤に切り込む見直しの断行は容易でないとの指摘(国会議員)もある。
同様に新任の規制改革担当相、中司(なかつか)宏氏(維新)にも指示書は「財務大臣と協力し、予算の無駄を排除する」よう求めている。財務省任せにせず改革政党からの初閣僚が、規制改革の観点から切り込む建て付けであり、二正面の実効性を見ていきたい。
税収の上振れや税外収入は、財源論の前提として見積もっておきたい。税収は6年連続で過去最高を更新し、外為特会(外国為替資金特別会計)の剰余金も2025年度に5兆円を超え、うち3・1兆円は26年度当初予算に既に繰り入れられた。過度な円安という危機局面での円買い介入では、米債売却で為替差益が生じる構造があり、その余剰金を柔軟に活用する対応は内外への説明としても分かりやすく、財政規律の補強にもなる。
新たな財源への可能性という意味で、県民所得倍増を目指す古謝(こじゃ)玄太・新知事率いる沖縄県にも目を向けたい。「オール沖縄」県政が幕を下ろし、基地問題が辺野古移設で前に進み、地域経済が大きく底上げされれば、結果として国税収入の増加にもつながろう。(司馬俊太)
【連載】第2次高市改造内閣の課題(1)維新閣内、連立新たな段階へ








