意見割れる消費税減税
今国会では、高市早苗首相がかねて重要性を訴えていた政策が実現した。国家インテリジェンスの新たな仕組みをつくる国家情報会議設置法案が5月27日に成立した。17日に参院で可決した「国旗損壊罪」の創設法案は、自民党が野党時代の2012年から提案していた。

ただ、インテリジェンス政策の中で最も重要なスパイ防止法については、「スパイ行為」の定義や捜査権限の範囲、処罰対象などの制度設計が複雑で、保守系の各党が独自案を発表する段階で止まっている。
一方で、国民の暮らしや経済に直結する政策は進まなかった。
首相は衆院選で「食料品に限って2年間消費税ゼロ」を公約に掲げた。2月28日に米軍がイスラエルと共同でイランの核施設や軍事拠点に対する大規模な攻撃を開始したことに端を発する物価高騰が止まらない。
消費税減税や給付付き税額控除の仕組みを議論する超党派の「社会保障国民会議」は当初、6月末に中間取りまとめを行うはずだったが、その議論は滞った。国会最終盤の16日、同会議は実務者会議を開き、中低所得者を対象とする新たな給付制度を2029年度から導入することで合意した。
一方、食料品の消費税減税について、政府・与党は来年4月から2年間に限定して8%から1%に引き下げることを想定している。だが、自民内にも慎重論が根強い上、与野党間の調整が難航したため、結論を先送りにした。
首相は15日の党首討論で、8月上旬にも方針を決定する考えを表明したが、自身の考えは示していない。その後の選挙への影響から、2年後に税率を元に戻せるのか疑問視されている。秋の臨時国会以降も議論の難航が予想される。
国民が副首都に難色
日本維新の会が「改革のセンターピン(根幹)」とする「衆院議員定数削減法案」と、東京の首都機能を代替できる「副首都」機能整備の関連法案を巡る協議も難航している。
「副首都法案は成立させなければ、連立の危機になる」との声が政権幹部から上がっているが、自民党内からの強い反発が足かせになっているという指摘もある。
参院で与党が過半数を割る中で、国民民主党の意向が鍵になる。副首都関連法案では、野党のチームみらいが条件付きで合意したが、国民民主は修正協議で厳しい要求を突き付けている。無所属議員も巻き込んだ多数派工作が必要になる。与党は国会会期を延長して法案成立を目指す。

首相と維新の吉村洋文代表(大阪府知事)が7日に会談し、国会会期末を前に「衆院議員定数削減法案」と「副首都」関連法案の扱いを中心に議論した。両党の幹部はそろったが、麻生太郎副総裁は同席しなかった。
麻生氏は6月25日、国民民主党の玉木雄一郎代表と会食している。自民・維新の枠組みを維持したい首相と、国民民主との調整役を自任する麻生氏との間に、隙間風が吹いているという報道もある。
定数削減は見通せず
衆院の比例代表定数を45削減する法案については、特に野党が反発している。玉木氏は「議員定数削減ではなく野党削減法案になっている」と批判した。
7日の党首会談で、首相と吉村代表は、議員定数削減法案の今国会での成立を見送ることで合意した。与党は秋の臨時国会に改めて法案を提出する見込みだが、比例の議席比率が高い野党が強く反発しており、過半数割れしている参院で通過できるかは微妙な情勢にある。
政治評論家の田村重信氏は、「議員定数削減は、維新が大阪で成功させ、強みとしている。だからどうしてもやりたいのだろう」と話す。
国会閉会後、党役員人事と内閣改造が話題になる見通しだが、麻生氏との関係が鍵を握りそうだ。田村氏は、「首相が麻生氏の影響力をできるだけ減らして独自路線で行くのか、それとも麻生氏の意向を受け入れて長期政権を目指すのか、大きな分かれ道になるだろう」と予測する。
(豊田 剛)






