トップ国内【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(5)信頼で結ばれた情報強国へ

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(5)信頼で結ばれた情報強国へ

米連邦捜査局(FBI)本部で会談した原和也内閣情報官(右)とカッシュ・パテルFBI長官(パテル氏のXより)
米連邦捜査局(FBI)本部で会談した原和也内閣情報官(右)とカッシュ・パテルFBI長官(パテル氏のXより)

 連休中に訪米した原和也・内閣情報官は7日、ワシントンで米連邦捜査局(FBI)のカッシュ・パテル長官と会談した。高市早苗政権のインテリジェンス強化構想を説明した原氏に対し、パテル氏は日本の一元的情報集約と司令塔機能に期待を示し、「サイバーセキュリティー、防諜、諜報、テロ対策での支援と協力が楽しみ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

 日米情報機関トップの信頼関係構築は、政策の実効性を高める重要な要素だ。政府と国民の信頼、省庁間の信頼、そして国際的な信頼――これらが揃(そろ)って初めてインテリジェンス政策は成功する。

 一方、長らく「スパイ天国」と揶揄(やゆ)されてきた日本が熾烈(しれつ)な情報戦時代に立ち向かう上で、27日に成立した国家情報会議設置法はあくまで第1段階にすぎない。第2段階では「守り」と「攻め」の両輪を強化する多段階アプローチが想定されている。

 「守り」の柱はスパイ防止法の制定と外国代理人登録法の整備だ。一方、「攻め」の柱として対外情報庁(仮称)の創設が議論されている。国家情報局が国内中心の司令塔機能を担うのに対し、対外情報庁は海外における積極的な情報収集・戦略活動を専門的に担う構想である。

 こうした全体像は、年内にも策定・公表される「国家情報戦略」(政府の中長期的な情報活動の推進方策)に体系的にまとめられる見通しだ。政府は秘匿性の高い情報活動に対する国民の理解を得るため、この戦略の積極的な公表を方針としており、人権・プライバシーへの配慮とともに、丁寧な説明責任を果たす姿勢を明確にしている。

 1980年の宮永スパイ事件(自衛隊情報を受け取ったソ連大使館コズロフ大佐は事実上国外逃亡)が示すように、過去の情報保全体制の脆弱性は、国民の安全と国益を直接脅かす深刻なリスクを生んできた。外国の影響工作を透明化する外国代理人登録法、スパイ防止法の制定は、こうしたスパイ事件を繰り返さないためにも不可欠だ。今夏、有識者会議を設け、国民の権利、義務に直接関わる法整備のあり方も含め、多角的に検討する。

 参院内閣委員会・参考人質疑で北村滋・元国家安全保障局長は、国家情報会議が「国会議員である閣僚によって構成される」点を挙げ、国民の負託を受けた国会議員が情報活動を統制することで、民主的正当性が担保されると強調した。この仕組みを法的に位置付ける設置法は、情報活動の秘匿性と国民の信頼をつなぐ「政治の回路」を明確にしたといえる。

 ただし、この回路が十分に機能するためには、政治家自身が情報活動の「カスタマー」としての自覚を強く持つ必要がある。自民党インテリジェンス戦略本部(小林鷹之本部長・政調会長)も、過去の政府高官へのヒアリングを通じて「在任中のインテリジェンスへの理解・関心に大きな個人差がある」ことを指摘しており、国会議員には情報を政策に最大限活用する責任感と主体的な参画が求められる。民主的統制とは制度の問題ではなく、政治の責任感そのものだからだ。

 国家情報会議設置法は、遅れて出発した日本のインテリジェンス政策を体系化する歴史的な第一歩である。

 信頼を基盤に、国民が主体的に国防意識を共有し、政府が情報機能の強化を国民に説明し続ける。その循環が生まれたとき、日本のインテリジェンス政策は遅れを取り戻し、他国に引けを取らない情報強国へと高められていくだろう。日本が情報戦に勝つ日は、制度の巧拙ではなく、信頼の深さによって決まる。(司馬俊太)(終わり)

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ (1)「情報後進国」 存立の危機 インテリジェンス体制整備急げ

連載】日本が情報戦に勝つ日へ(2)守るべき価値観を国民に喚起

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(3)「司令塔」と「統制」の要は政治

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(4)国家情報局強化の鍵は人材力

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