トップ国内【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(4)国家情報局強化の鍵は人材力

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ(4)国家情報局強化の鍵は人材力

「国家情報会議」設置法が賛成多数で可決、成立した参院本会議=27日午後、国会内
「国家情報会議」設置法が賛成多数で可決、成立した参院本会議=27日午後、国会内

 「私は、日本と日本人の底力を信じてやまない者として、日本の未来を切り拓(ひら)く責任を担い、この場に立っております」――高市早苗首相が昨秋、臨時国会で行った首相就任後の施政方針演説冒頭のフレーズである。これは高市氏が繰り返し強調する「日本人の底力」の代表的な発言舞台となった。

 高市氏が持論として温め、今年度予算の成立後に「国論を二分する政策」の一つとして着手したインテリジェンス(情報収集・分析)政策は、高い潜在性を持つ日本の人材力で実現させようとする意思と通底すると言えよう。

 首相が掲げる「日本列島を、強く豊かに」する国力強化構想を支える6本の柱(外交・防衛・経済・技術・情報・人材)のうち、人材力は他の5分野全てに関わる。「情報力を強くするには、人材力が何より大事」との認識のもと、情報力強化と人材力強化の結節点を見ていく。

 設置法の衆院通過後、参院審議を待たずに今夏発足予定の国家情報局(700人規模)の人員計画が伝えられた。内閣情報調査室を引き継ぎ、発展的に格上げされる同局は2027年から専門キャリア採用で増員を図るとともに、AIや海外対応への必要性から技術・語学人材の即戦力・中途登用にも乗り出す方針だ。

 自民党はこれまで皆無に等しいと言われる省庁横断的な情報要員養成制度、インテリジェンスアカデミー構想による再教育を提言。同盟・同志国の情報機関同士の連携を強化し、人材交流・派遣も積極的に推進している。

 25年から施行された、国家の機微情報を扱うセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度も活用される。これは人員となる本人や家族の国籍、外国との関係などを厳格に審査し、経済安全保障上の安全性を確保する人的資格制度で、同盟・同志国間での連携に生かされる。

 国論二分の政策の一つとして位置付けた背景には、強いリーダーシップを全国の保守・改革支持層に訴える狙いがあり、与党として日本維新の会との連立政権合意書に掲げた公約実行のアピールともなる。一方で、左派野党など反対派の反発を覚悟した上で決断した側面もある。

 緊縮財政の縛りを越えた積極財政という経済政策の転換、武器輸出5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海)の撤廃に象徴される防衛政策の転換などと並び、長年「放置、無視されてきた」(三谷秀史・元内閣情報官)インテリジェンス政策では、とりわけ抜本的な政策転換を図ろうとしている。

 そのため、インテリジェンス改革では各省庁に蔓延(まんえん)する既得慣習を打破しなければならない。今後、政府の情報部門に携わる人材は「国論二分論」の中で、情報力強化を通じた新しい国力強化ビジョンに共鳴した側で働くことが求められることになる。

 根底には、安倍晋三元首相が唱えた「戦後レジームからの脱却」がある。第1次安倍政権(06~07年)で、新たに「公共の精神」「愛国心」「伝統尊重」「家庭教育」などを教育基本法に盛り込んだ(2、10条)ことが一例だ。

 第2次政権での特定秘密保護法(13年)や安保法制(15年)などの安全保障改革を受けた今日のインテリジェンス改革では、改正教育基本法の下、育むべき国家観・倫理観を持ち、AI・語学・経済安全保障の専門性を兼ね備える、わが国ならではのインテリジェンス人材を持続的に育成していくことが基盤となろう。人材力こそが、日本が情報戦に勝つ日を左右する大きな分水嶺(ぶんすいれい)の一つとなる。(司馬俊太)

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