トップ国内【連載】日本が情報戦に勝つ日へ (1)「情報後進国」 存立の危機 インテリジェンス体制整備急げ

【連載】日本が情報戦に勝つ日へ (1)「情報後進国」 存立の危機 インテリジェンス体制整備急げ

高市内閣のインテリジェンス政策-将来組織図
高市内閣のインテリジェンス政策-将来組織図

 高市早苗政権が最重要政策の一つに位置付ける「情報力強化」。先進7カ国(G7)の中で最も立ち遅れていた日本のインテリジェンス(情報収集・分析)体制は、ついに本格的な改革に乗り出した。今国会で「国家情報会議設置法」が衆院を通過したことを契機に、戦後最も厳しい安全保障環境の下で、日本は情報戦への対応力を抜本的に高めようとしている。

 なぜ今、情報力の強化が必要なのか。

 近隣の中国・ロシア・北朝鮮は核・ミサイルを背景に軍拡と影響工作を加速させ、サイバー攻撃や技術流出、選挙干渉などの情報戦が日常化している。わが国が「情報後進国」のままでは、もはや国家の存立基盤すら危うくなる。

 こうした危機感が、高市政権による情報力強化を強く後押ししている。今年の衆院解散総選挙で高市首相は、「日本列島を強く、豊かに」のスローガンを掲げ、自民党の歴史的大勝を収めた。強い民意を背に、首相が推し進める国力強化のビジョンは、6本の柱(外交・防衛・経済・技術・情報・人材)から成る。情報力の強化はその一角として明確に位置付けられている。

 日本維新の会との「連立政権合意書」では、インテリジェンス政策に関する具体的な方針が盛り込まれた。安全保障分野における国家機能強化に向け、首相をトップに政策部門と情報部門を同格に配置する体制整備である。

 政策部門は、首相を議長とする国家安全保障会議(NSC)と国家安全保障局から成る(2013年から)。これに対し情報部門は、国家情報会議(NIC)と国家情報局を新設する。

 従来の情報部門は内閣官房長官を議長とする内閣情報会議と内閣情報調査室(内調)が中心だったが、これを発展的に解消し、首相を議長とする閣僚級の国家情報会議と国家情報局へと格上げする。これが同法の核心だ。

 25年の参院選では、自民党をはじめ、日本維新の会、国民民主党、参政党、日本保守党など保守・中道系の複数政党が「スパイ防止法」の制定を公約に掲げ、外国勢力による情報窃取から国家を守る必要性を強く訴えた。この背景には、日本の防衛体制や先端技術を巡り、中国による組織的なスパイ活動・技術流出が深刻化している現実がある。

 海上自衛隊イージス護衛艦「しらね」乗組員の中国人妻が関与した機密情報漏洩(ろうえい)事件(07年、入管法違反で有罪)や、「産業技術総合研究所(産総研)」の中国籍研究員が研究情報を中国企業に流した事件(23年、不正競争防止法違反で有罪)は、被害が顕在化した事例だ。G7諸国で標準的に整備されているスパイ防止法が日本にはないため、これら刑事事件では、関連する他の法律で処罰されるにとどまっている。

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談が融和ムードを演出する中、東アジア情勢は依然として予断を許さない。わが国は日米同盟を基軸にその深化を図りつつ、中国をはじめとする外国勢力の情報戦の攻勢から国家と国民を守るため、インテリジェンス体制の整備を急がねばならない。国家情報会議設置法の衆院通過は、その重要な第一歩となる。(司馬俊太)

    ◇

 日本は長らく「スパイ天国」とも揶揄(やゆ)されてきた。国家情報会議設置法制定の動きを軸に、情報力強化の戦略的必要性、国会での論戦、実務的な準備状況、今後の「攻守一体」の次なる体制構築の展望を、事実ベースで整理する。

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