トップ国内【連載】未来を守る命の教訓 東日本大震災から15年(6)AI活用し新たな防災力

【連載】未来を守る命の教訓 東日本大震災から15年(6)AI活用し新たな防災力

h国立研究開発法人建築研究所の公開実験で、柱の調査をする二足歩行のロボット(右)と四足歩行ロボット=10日午後、茨城県つくば市(辻本奈緒子撮影)
国立研究開発法人建築研究所の公開実験で、柱の調査をする二足歩行のロボット(右)と四足歩行ロボット=10日午後、茨城県つくば市(辻本奈緒子撮影)

 「災害大国」と呼ばれる日本。その防災力を高める一環として、AI技術の可能性に熱い視線が注がれている。

 国立研究開発法人建築研究所などは10日、倒壊の恐れのある被災建築物の調査を、二足歩行のヒューマノイドロボット(人型ロボ)と四足歩行ロボットが連携して実施するという公開実験を、同研究所内(茨城県つくば市)で開いた。

 人型ロボには、人工知能によって機械が自律的に動く「フィジカルAI」の技術を導入。遠隔操作する人間と対話しつつ、四足歩行ロボットがサポート役となって調査する。災害の初動や復旧のみならず、平常時においての運用も目指しているという。

 公開実験では遠隔操作する調査員が「この柱の傾きを調査してください」と話し掛けると、人型ロボが指示に応じて動き、問題点などをAI音声で報告。さらに奥の壁下に損壊を発見した際は、人型ロボが「この先は私が立ち入るのは危険だと判断しました。四足歩行ロボットでの調査をお勧めします」と遠隔操作する調査員に進言する場面もあった。

 同研究所上席研究員の宮内博之氏は、人型ロボの研究を進めるメリットとして、自動車や重機など人間向けに設計された既存の道具をそのまま活用できる点を挙げる。一方で「(フィジカルAIや人型ロボなどは)黎明(れいめい)期で人間にはまだ及ばない。行ったことのない初めての場所で、どう判断して作業するかなどは非常に難しい」と指摘。公開実験を通じて、カメラの視野の狭さや音声への反応が不完全な点など、実用化に向けた課題を提示し、「フィジカルAIやヒューマノイドを使う方々と共有していきたい」と述べた。

 災害の情報収集や予測といった面でもAIが活躍している。SNS投稿を収集し、自治体などに情報提供する「スペクティ」(東京都千代田区)の代表取締役CEO・村上建治郎氏は2月5日、震災対策技術展(横浜市)の講演会で「現地に入れない状況下で、被災地から発信されるSNS上の情報は、災害対応において切り離せない。被災地の情報を一番早く知ることができる」と強調した。

 同社ではSNSや気象情報、ライブカメラなどのデータをリアルタイムで解析し、災害が発生すればすぐさま通知が届く「危機の見える化」に取り組む。一方、SNSにはデマやフェイク、誤情報もあるため、対策としてAIによる解析だけでなく人間のチェックも挟んでフェイク情報を除外。村上氏によると、同サービスを導入していた石川県では、能登半島地震で偽の救出依頼などが数多く投稿される中、「情報の正誤判断はスペクティを通じ、より確かな意思決定ができた」としている。

 防災に取り組む同社の創業のきっかけは東日本大震災だった。村上氏がボランティアで避難所を訪れると、壁一面に手伝いや物資を求める紙が貼られていたが「この情報を最も目にするのは同じ避難者。被災地の外に伝えなければ復興は進まない。そこから発想し、支援の情報をネットで配信するようになったのが始まりだった」と語る。

 村上氏はAIによる災害予測について、さまざまな情報を学習させればAIは予測データを出すものの、当然分からないことも出てくるとした上で、「人間は過去の経験に加えて想像力で補える。生成AIと組み合わせることで、人間の想像力に近いことができるかもしれない」と言及。今後、AI開発が進むことで「地震はまだ難しいかもしれないが、洪水や台風はかなり精度の高い予測ができる未来がくるのではないか」と見解を述べた。

 (東日本大震災15年取材班)

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