
「勝利の余韻に浸っている余裕は私たちにはない」
高市早苗首相(自民党総裁)は歴史的勝利を収めた衆院選後の記者会見で、笑顔を見せることなく、険しい表情でこう語った。
速やかに特別国会を召集し、選挙で遅れた来年度予算を一日でも早く成立させ、給付付き税額控除制度、2年間に限る飲食料品に対する消費税率ゼロについてスケジュールや財源の在り方などを検討していくことを表明した。
特に2年間の食料品消費税ゼロの実現については、超党派で近く設ける予定の「国民会議」で、少なくとも夏前に中間取りまとめを行いたいとした。片山さつき財務相によると、赤字国債に頼ることなく、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入(外国為替特別会計)などによって2年分の財源を確保する方向という。
高市政権が掲げる「責任ある積極財政」が、外国為替市場で財政不安を招き「放漫」と受け取られていることを踏まえ、「市場からの信認確保」を重視する姿勢を早くも示した形だ。責任政党としてこれまでと同様、懸命さとスピード感をもって取り組んでほしい。
高市首相が選挙戦で「日本列島を強く豊かに」と訴えたのは、単に国民の受けを狙ったスローガンではなく、日本経済の現状に対する強い危機感からだ。
日本経済はバブル崩壊後、「失われた30年」と呼ばれ、低成長から抜け出せずにいる。世界を席巻した半導体産業はあっという間に衰退していった。
その一方で、日本を取り巻く安全保障環境は中国、ロシア、北朝鮮、とりわけ中国の軍備拡張、覇権的行動の強まりなどから厳しくなるばかり。
これらの問題に対処するため、経済での「政策の大転換」がまさしく「責任ある積極財政」なわけで、そうした首相の熱意を、国民は支持し、背中を押したわけだ。
首相の「責任ある積極財政」は、すでに2025年度補正予算や26年度予算案でも性格が示されている。
当面の対応としては、電気・ガス代支援などの物価高対策や中小企業の賃上げ環境整備などで低迷する個人消費を刺激し、賃上げで経済好循環の環境を整える。
中長期的には危機管理投資・成長投資により供給力を強化し、文字通り強い経済を実現する。具体的には経済安全保障や食料・エネルギーの安全保障強化などだ。
もちろん、経済分野だけでなく、防衛力と外交力の強化は言うまでもない。
「責任ある積極財政」が外為市場で「放漫」批判を浴び、円安に振れやすくなっているが、財政規律がないわけではない。
高市政権は、政府債務残高を対国内総生産(GDP)比で減らしていく方針を明らかにしている。危機管理投資・成長投資などの先述の諸政策を進める上で必要な資金のうち、税収で賄えない部分は赤字国債の発行はやむを得ないが、対GDP比漸減という現実的な対応で縛りを設けた。経済情勢を無視した機械的な財政赤字削減は経済を痛め、「強い経済」づくりのマイナスとなるからだ。
もっとも、高市政権は先述の食品消費税ゼロの対応の通り、赤字国債に頼らないという「市場からの信認確保」重視の姿勢をも示す。市場も国民の高市政権への高い支持を受け、また米景気指標の弱まりもあって、為替相場は円高に振れだした。消費者物価の先行指標である東京都区部で物価上昇に鈍化の兆しが出ており、今選挙での高市自民の圧勝は円安による輸入インフレのリスク減という援軍をも引き寄せた。本腰を入れて取り組む「強い経済」実現へ好スタートを切った。
(衆院選取材班)
=終わり=
【連載】自民圧勝 ’26衆院選から探る(1)高市1強時代の幕開け







