
高市早苗首相(自民党総裁)は衆院選に圧勝し、安定的な政権基盤を獲得することに成功。自身の高い人気で自民の議席数を大きく増やした。「高市1強」の時代を迎えた中での政治の課題を探る。(衆院選取材班)
「日本列島を強く豊かに。重い重い責任の始まりで、身の引き締まる思いだ」
高市氏は衆院選翌日の記者会見で、慎重に言葉を選びながら語り、「勝利の余韻に浸っている余裕はない」と強調した。
自民の歴史的な勝利が確定的になった8日夜、自民党本部の開票センターで当選者のバラ付けを行ったが、そこでも満面の笑みは見せず、終始、低姿勢に徹した。
「高市人気」がそのまま反映された衆院選だった。高市内閣の支持率は昨年10月に発足して以来、7割前後の高水準を維持している。ただ、自民の支持率は低迷したままで、年始の首相の急転直下の解散決断には党内に動揺が走った。その直後には、公明が立憲民主党と合流し中道改革連合を結成した。公明票が中道候補に乗っかれば、自民と日本維新の会を合わせての過半数すらも安泰ではないと思われたからだ。
そうした空気感は、衆院選公示後に吹き飛んだ。高市氏の応援演説では、どこも会場に入り切れないほどの聴衆であふれ返り、東京都世田谷区で行われた最終演説には1万人(主催者発表)が詰め掛けた。日の丸を振ったり、若い女性が手作りのうちわを使ってまるでアイドルのように応援する光景が目に付いた。
ある選対関係者は、「注目されているのは自民党や候補者本人ではなく、高市早苗という人間の魅力」と話し、選挙結果にどれだけつながるのか未知数だと気を引き締めていた。
結果、高市氏が応援に入った候補のほとんどは選挙区で当選した。演説会場周辺では高市氏の顔写真入りのポスターが貼られたり、首相の演説予告のアナウンスが繰り返されるなど、お祭り会場の様相を呈した。
連立パートナーである維新の戦い方にも変化があった。自民と候補者調整をせず選挙戦に挑んだが、「高市政権を支える」など、高市ブームに乗る戦術を取った。埋没する懸念があったが、2議席を積み増し、存在感を示した。
「やはり、選挙は『顔』が大事になる」。自民党の元政務調査役で何人もの首相に仕えた経験がある政治評論家・田村重信氏は、党首の差が決定的になったと強調する。
選挙期間中の各党党首のX(旧ツイッター)公式アカウントのフォロワー数は高市氏が約3万5000人増え、他を圧倒した。一方で、自民党の公式アカウントのフォロワーの伸びは緩やかだった。
SNS分析ツール「ブランドウォッチ」によると、各党党首によるXの1投稿当たりのリポスト(転載)数でも、高市氏は中道の野田佳彦共同代表の7倍以上で、反響は圧倒的だった。
見方を変えれば、自民は高市氏個人の人気にすがらざるを得ない状況にあるということ。政治資金収支報告書の不記載問題やここ数年の党内リベラル化に対する国民の不信は残ったままだ。
安倍晋三元首相が2022年7月に亡くなると、自民の迷走が始まった。岸田文雄、石破茂両首相の3年の間で支持率は下がり続けた。岸田政権でLGBT理解増進法が成立し、石破氏は選択的夫婦別姓制度にも意欲を見せていた。岩盤保守層が離れると、参政党と国民民主党が躍進した。
今回の衆院選では保守層を取り戻すことに成功したと言える。今後、党としての信頼を取り戻すには、公約を一つ一つ実現していくことだ。
【連載】自民圧勝 ’26衆院選から探る(2)旧民主党時代の終わり







