
衆院選の開票段階だが、高市早苗首相が設定した「過半数」の勝敗ラインを自民党と日本維新の会の連立与党が大きく上回り大勝した。
首相が解散総選挙で信を問うた大義名分は、連立の枠組みが変わり、政策が変わり、首相が高市氏でいいのかということ。また、保守改革路線を強く打ち出した自維連立政権の政策合意を具体化するには、少数与党では難しい。首相は選挙中も「高市内閣、もうよろよろです」と吐露し、「与党で過半数を取れなかったら内閣総理大臣を潔く辞めます」ときっぱり述べた。
首相はまず「私を選ぶのか、野田さんか斉藤さんを選ぶのか」と中道改革連合の野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表の名を挙げて選挙戦をスタートした。争点に首相選びを前面に出すことで、今回の選挙の性格を「首相公選」に近づけた。これが奏功したと言える。
半面、批判的な野党は首相に対するネガティブ・キャンペーンに力を注ぐ陥穽(かんせい)に陥ったのではないか。扇情的な一部マスコミの批判報道も加わり、首相のイメージダウンを図った。しかし、衆院選はやはり政党同士が政策を競っての政権選択選挙だ。その点、日本という国をどうするのかという政策に魅力を持たせる前向きなアピールが弱い。
全国各地、首相が自民候補を応援演説する先々で大勢の群衆がひしめいた。集まったのは必ずしも現地選挙区の自民候補支持者ではなく、日本初の女性宰相を一目見ようと足を運んだ人も多かったことだろう。高市内閣の支持率(1月時事世論調査で61%)から自民支持率(同22.5%)を引いた数値は自民支持率より高い。これが投票に結び付くかが注目された。
自民は、前政権までのリベラル化で支持を落とした。一昨年の衆院選で単独でも安定多数だった247議席が191議席に減り、当時連立与党の公明党と合わせても過半数を割り込んだ。昨年の参院選では改選52議席を39議席に減らし、やはり公明と合わせても過半数を割った。党も選挙地盤も弱くなっている。
さらに連立を離脱した公明が急遽(きゅうきょ)、立憲民主党と合流して中道を結成した。立民を支援する連合の労組票、公明の母体である創価学会票がまとまる計算だ。片や日本最大労組、片や日本最大の巨大宗教団体。その組織票が小選挙区で中道候補に流れるとなれば、前回まで公明・創価学会の票をもらっていた自民候補は前回以上に落選するはずだった。
首相は高い支持率を背景に、「高市早苗」を首相にするため自民候補および自民への投票を促した。演説は「国もチャレンジ。まだまだ日本には底力がある」と有権者を激励し、「日本列島を強く豊かにする」ため「責任ある積極財政」「成長投資」「危機管理投資」などの政策で未来を語った。さらに「政治を動かすのは人、人を動かすのは希望だ」と、政策に「希望」を乗せた。
明るい演説で有権者にアピールし、中道はじめ多くの野党に囲まれた組織的劣勢を跳ね返したと言えよう。高市政権の政策は自民・維新の連立政権合意文書12項目に基づいている。あとは、国会で法案にして成立させる政策遂行が正念場となる。






