北方領土問題への理解と関心を深めるために制定された「北方領土の日」は今年で46回目を迎える。
択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の四島からなる北方領土は、日本固有の領土である。1855年に調印された「日露通好条約」を根拠に、歴史的にも国際法的にも揺るぎない事実だ。それでも、戦後80年近くが経過した現在も、日本の主権は回復されていない。
北方領土が占拠されたのは1945年8月、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連が対日参戦し、終戦直後に武力で占領した結果だ。当時の国際法の原則から見てもまったく正当化できるものではない。51年9月に調印、翌年4月に発効したサンフランシスコ平和条約で、日本が放棄した「千島列島」に北方四島が含まれないことも、政府の一貫した解釈であり、国際社会でも支持されてきた。
歴代政権は厳しい現実を直視しつつ、交渉の柔軟化や段階的解決を模索してきた。結果、問題は解決されるどころか、ロシアの実効支配を既成事実化する時間だけが与えられた。特に近年は、ロシアによる軍備増強やインフラ整備が進み、四島の軍事拠点化が一層鮮明になっている。
2022年2月にロシアがウクライナを侵攻した。力による現状変更を露骨に示した出来事だった。外交には軍事・経済のハードと文化や理念のソフト両面が必要だ。主権と領土の問題において、譲歩や妥協を先行させる外交は、相手に誤ったメッセージを与えることにもつながるため、日本政府としては難しい選択を迫られている。
ソフトパワーを担っている北方領土の元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)」は23年4月、ロシア検察庁から「好ましからざる団体」に認定された。千島連盟はこれまで返還運動のための啓発活動を長年続け、交流事業なども行ってきたが、この認定によってロシア国内での活動が禁止され、関係者の入国も制限されている。
元島民の平均年齢が90歳と高齢になり、残された時間は少ない。現在、語り部の活動をしているのは70人ほどとされる。学校での授業や修学旅行での講演などの依頼が多くある一方、人材の確保が長年の課題になっている。
そこで、当時の経験を後世に伝え続けるため、元島民や後継者ではない第三者が北方領土の歴史や暮らし、元島民の記憶を伝承者という立場から語り継ぎ伝承していけるように仕組みを変えることが検討されている。千島連盟は、早ければ2027年度にも伝承者の募集を開始する予定だという。この制度により、多くの国民が領土問題に関心を持つことに期待を示している。
日本が取るべき道は、四島一括返還という原則を明言し続け、国際法に基づく正当性を国際社会に訴え続けることだ。
高市早苗首相は昨年10月24日の所信表明演説で「日露関係は厳しい状況」にあると前置きし、「日本政府の方針は、領土問題を解決し、平和条約を締結すること」と強調した。これを受け、ロシアのペスコフ大統領報道官は「歓迎できる。我々も平和条約締結を支持している」とコメントした。高市氏がプーチン大統領と良い関係にあった安倍晋三元首相の政治スタンスに近かったことから、経済交流が再び活発になることを期待したのであろう。
ただ、日本側としては、ウクライナ侵攻が続く限り、対露姿勢を軟化させるのは難しい。国民から高い支持が得られている高市政権が、硬直したロシア外交をどう変化させられるか、その手腕が問われている。






