トップ国内高校生弁論大会やパネル展で啓蒙 「若者たちの関心は高くない」

高校生弁論大会やパネル展で啓蒙 「若者たちの関心は高くない」

記念撮影に臨んだ弁論大会の参加者と審査員ら=1月17日、札幌市北区
記念撮影に臨んだ弁論大会の参加者と審査員ら=1月17日、札幌市北区

 北方四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)の返還実現を目指す北方領土返還要求運動が始まって今年で80年の歳月が経つ。日本政府はこれまで、旧ソ連時代を含めロシアと度重なる交渉を進めてきたが、遅々として進んでいないのが実情だ。とりわけ、2022年にウクライナに軍事侵攻したロシアを日本政府が批判したことから、ロシアは一方的に交渉を拒否。それでも地元・北海道では返還運動に向けて高校生による弁論大会やパネル展を開催するなど、領土返還に向けた地道な活動を展開している。(札幌支局・湯朝 肇、写真も)

 2月7日は「北方領土の日」。北海道ではこの日を挟む1月と2月を「北方領土の日」特別啓発期間と位置付け、全道的な普及・啓蒙(けいもう)活動を行っている。その一環として1月17日、札幌市内で「〝北方領土を考える〟高校生弁論大会」が開かれた。公益社団法人北方領土復帰期成同盟が主催。1986年から開催され、今回で40回目を迎えた。大会には全道14校から144人の応募があり、書面審査を通過した40人の中から選ばれた14人の高校生が演説。各自持ち時間7分の中、北方領土に対する思いや返還への持論を展開した。

 大会を主催した北方領土復帰期成同盟の渡邉修介会長は、「今年40回目を数える弁論大会だが、これまで延べ550校3422名の応募があった。弁論大会は若い人に北方領土への関心と理解を深めてもらうと同時に、返還運動に向けて大きな世論形成につながる」と弁論大会の意義を訴えた。さらに「ロシアによるウクライナ軍事侵攻、今年に入ってからはトランプ大統領のベネズエラ攻撃など覇権国家の軍事力による行使が目立つ。国際法の尊重と遵守という原則が揺らぐ中、日露間の交渉は厳しいものがあるが、平和条約交渉再開に向けて粘り強く取り組んでいくことが大事。そうした中で高校生には持ち前の若い発想で領土問題に向けた具体的な解決策を提示していただきたい」と激励した。

 弁論大会では、高校生が北方領土への思いや和平の在り方などをそれぞれの言葉で語った。

 「私は高校では弁論部に所属していることから北方領土への関心を持ちましたが、学校の授業で北方領土をテーマとした授業はありませんでした。部活で北方領土を知ったことは私にとって意義あることでしたが、正直言って若い人たちの間で北方領土への関心は高くないと思います。若い人に関心をもってもらうためには小学校や中学校の授業でもっと取り上げられるべきだと思います」

 「具体的に北方領土が見える根室市の先端の納沙布岬に佇(たたず)んだ時、北方領土と北海道の間には二つの境界線があると感じた。一つは政治的な境界線。もう一つは社会的な境界線。政治的な境界線は国家間の交渉に委ねられるが、社会的な境界線はSNSなど情報を駆使するなど住民同士をなくしていけるのではないかと思う。少なくとも境界線という固定的な観念を持つべきではない」

 今年は、旭川藤星高校2年の河森絢音さんが最優秀賞に選ばれた。「80年の『後片付け』」と題した演説でこう決意を述べた。

 「法学者・越智萌さんの著書『誰が戦争の後片付けをするのか』と出会い、戦争は戦火の終わりが戦争の終結ではなく、その後の戦災者の暮らしや心のケアに寄り添い、そこで初めて戦後に向かうという部分に共感した。私は著者へのインタビューをする中で、領土問題は国に任せるだけでなく、一人ひとりが関心をもって取り組むことが戦争の後片付けになると感じた。高校生になって北方領土返還運動の『北方領土サポーター』で活動しているが、今後も平和や領土問題に向き合っていきたい」

 弁論大会の第2部では、元島民3世の久保歩夢氏が、自ら手掛ける映像制作事業「ViFight」を紹介しながら、北方領土との関わりを語った。

 「北方領土が旧ソ連に不法占拠される以前、島には17921人の日本人が住んでいました。ところが現在、元島民1世は4987人になっています。僕の祖父は国後島出身ですが、島のことをよく話してくれました。写真も見せてもらいました。現在、僕はSNSを絡めたITを使った事業を行っていますが、AIを活用し、祖父が残してくれた写真と根室や遠くから見る島の風景を織り交ぜながら北方領土返還運動の手助けとなるような映像を発信していこうと思っています」

 2022年、ロシア政府はウクライナ侵略を開始後、日露間においても「平和条約は継続しない、自由訪問および四島交流は中止する、北方四島における共同経済活動に関する対話から離脱する」(3月)などの措置を一方的に発表し、さらに「自由訪問および四島交流に関わる合意の効力を停止する」と政府令を発した。従って、それまで行ってきた北方墓参も現在は根室港から出港する北方四島交流船「えとぴりか」からの洋上慰霊を余儀なくされている。

 「北方領土の日」特別啓発期間である1月、2月には高校生の弁論大会の他に全国各地でさまざまな催しが行われている。180万人の人口を擁する札幌市内では、札幌駅と大通をつなぐ地下歩行空間において、戦後80年特別啓発事業として北方領土の戦前と現在の様子を写真で見る「北方領土80年今昔写真展」(1月16~22日)と、元島民3世で写真家山田淳子氏による根室市に在住する元島民を中心とした写真展「山田淳子写真展『島々の記憶』」(1月26~30日)が開かれた。

 元島民の平均年齢が90歳に達した今日、北方領土問題を風化させず、むしろさらに世論を盛り上げるためには2世、3世のみならず幅広い国民の関心と理解、そして、若手後継者の育成が不可欠だ。とりわけ、若い世代の領土への認識の深まりが必要となってくる。そういう意味では、国民意識の啓蒙に加えて、領土問題に関する学校教育の充実が願われていることは間違いない。

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