

「これまで5期13年間、衆議院議員をやってきましたが、今回の選挙ほど、国会に送っていただきたいと思ったことはありません」
自民党候補として出馬した中村裕之は後志(しりべし)管内倶知安町(くっちゃんちょう)で行った出陣式の第一声で、有権者を前にこう語った。麻生派に属する中村だが、過去3回にわたる自民党総裁選では北海道選出議員の中で唯一、高市早苗の推薦人に名前を載せた。「3年前に自民党内に仲間と共に『責任ある積極財政を推進する議員連盟』をつくり、さまざまな政策を練り上げて提案してきた。政治家や官僚に対しても信頼関係をつくり、いよいよ高市政権による国造りが始まる。高市首相の側近としてもう一度国会に送り出していただきたい」と懇願する。
北海道4区は小樽市を含む後志管内に札幌市手稲(ていね)区と西区一部を含めた選挙区。北海道電力泊(とまり)原発の再稼働や高レベル放射性廃棄物の最終処理場問題、さらには、北海道新幹線の札幌延伸、ニセコ町を中心とした外国人旅行客の急増や外国人土地取得問題など、話題に事欠かない地域である。
そもそも4区では、自公連立政権時の昨年6月、中村は比例名簿順位の北海道ブロック1位、小選挙区は自民が公明党候補を応援するという体制でまとまっていた。ところが公明が与党を離脱。中村はその報を受けるや自身の小選挙区出馬を表明したという経緯がある。
そこで今回の選挙。構図としては中村と中道改革連合の大築(おおつき)紅葉(くれは)による一騎打ち。2人の戦いは今回が初めてではない。前々回(2021年10月)、前回(24年10月)に続いて3度目。前々回は中村が僅差(696票差)で勝利したものの、前回は7000票以上の差をつけられて敗北、何とか比例復活を成し遂げて当選した。もっとも、どちらの選挙も公明票が加算されての結果であるだけに、公明が与党を離脱した当初、中村にとって今回の選挙は厳しい戦いと目されていた。
ところが、ここにきて風向きは大きく変わる。革新王国といわれてきた北海道にあっても、高市人気で盛り上がる。1月28日、高市が中村応援のため札幌に入り、JR手稲駅前では高市を一目見ようと黒山の人だかりができるほど。「中村さんは総裁選の推薦人だけでなく、早くから『高市早苗を総理にする会』のメンバーとして草の根で支えてくれた人。私にとっても北海道にとっても必要な人」と中村を持ち上げた。
こうした高市旋風に大築は警戒感をあらわにする。「前回の選挙とは全然違う。立憲と公明が手を組んだからと言って、すべての公明票が乗っかるわけではない」(大築陣営)と公明票の行方に気をもむ。前回選挙は自民にとっては「裏金」問題などを抱えた逆風の選挙。今回は、高市旋風が吹き荒れる中で、大築にとっては向かい風を受ける形。「物価高対策をしっかり行い、原発に頼らず、核のゴミを認めない政策を推し進める」と生活者の視点を訴える。高市を前面に出し安全保障を軸に積極財政で地域経済の再活性化を訴える中村と、物価対策や消費税率ゼロなど「生活者ファースト」を訴える大築。両者一歩も譲らず、互角の戦いを続けている。(敬称略)
(衆院選取材班)
=おわり=
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