
――家庭連合(旧統一教会)を念頭に置いた、文部科学省(文科省)の「指定宗教法人の清算に係る指針」(指針)の趣旨・目的について、どう考えるか。
指針の「被害者への弁済等の対応」には、「清算人は、債権の申出期間内に被害を申し出た被害者及び知れている被害者はもとより、債権の申出期間経過後に申し出た被害者を含め、一人の被害者も取り残すことのないよう、被害者に対し誠実に対応する…」と書いてある。一見、もっとものように読めるが、家庭連合に限り無限と言ってよいほどに救済に取り組むものになっている。これは他の宗教法人で被害を受けた被害者との間で公正、公平でない。
――指針には、「被害の申し出を促す工夫」として、「清算法人が保有する寄附等を裏付ける記録から判明する一定の範囲の相手方に対して、被害の申出をする意思があるか…照会する」とか、「不相応に高額な金額を寄附した者と申し出た被害者の数との比較から、客観的には潜在的な被害者が相当数存在していると見込まれる…」など、高額献金者を潜在的な被害者と決め付けるような記述もある。
本来、宗教法人への金品の寄贈は、信仰に基づいて寄贈した場合は、後に信仰を失ったとしても返還を求めることはできない。例外は、金品を受ける宗教法人側に不法行為があった場合だが、あくまでも公開の裁判によって法人側の不法行為が法的に確定された場合に限定されるべきだ。
清算人が勝手に「不相応に高額な金額を寄付した」と決めつけたり、教団の献金記録に基づいて被害者となる「一定の範囲」を決めたりすることは、信教の自由の本質を無視する、とんでもない暴挙だと言える。
――指針が持つこのような問題の根源は何か。
それは、文科大臣が東京地裁に家庭連合への解散命令を請求した令和5(2023)年10月13日のちょうど2カ月後に成立した「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律」(特例法)だ。
同法は不法行為が成立して、その損害賠償をしなければならない時のために、家庭連合の財産の移動を監視するための法律で、その限りにおいて制定には理由があるが、根本において、家庭連合の被害者のみを優遇している。また、付則第5条で「この法律は、この法律の施行の日から起算して三年を経過した日に、その効力を失う」と書いてある。ということは、この法律は事実上、家庭連合のみを対象とした法律になる。
特定の対象のみに限定した特別法としての立法は、対象の側に利益がある場合は許されるが、不利益になる場合は立法できないというのが、法治主義の原則だ。そうではなく、特定の宗教法人のみを対象として不利益を与える特別法は、法治主義、法の支配、法治国家の名の下に制定してはならない。従って、この同法は廃止されなければならない法律だ。このような法律の制定を認めた衆議院法制局、参議院法制局、国会は、通常の法的常識では考えられないことをしでかしたことになる。
――同法は議員立法だ。
法案提出議員は自民3人、公明2人、国民民主1人の6人だが、公明党議員が提出者の中にいるのは、とんでもないことだ。
公明党の母体である創価学会も、家庭連合と同様に無限に遡(さかのぼ)れば、不祥事はいくらでも出てくるだろう。被害を受けたという人も過去に遡ればいくらでもいよう。そうした創価学会を母体とした公明党が、期限を付けて他の宗教法人だけを標的とする法律の提案者になるとはどういうことか。それによって自分のみ助かろうというのであれば、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の犍陀多(かんだた)よりも悪質ではないか。
(信教の自由問題取材班)






