
北朝鮮による日本人拉致問題をテーマとした政府主催のシンポジウムが13日に開催され、終了後の取材に応じた拉致被害者家族連絡会(家族会)の横田拓也代表は、来年90歳を迎える母親、横田早紀江さんの健康について触れ、「今日元気でも、明日は元気でないかもしれないというのが現実」と強調し、「悠長に構えている問題ではない」と訴えた。家族らは未解決のまま、さらに一年が終わっていく懸念と共に、来年に対しては「明るい兆しが見えるのでは」と期待を寄せる場面もあった。(石井孝秀)
「また解決しないで1年が過ぎてしまった」
集まった記者団に対し、横田代表は開口一番にそう切り出した。横田代表の姉、めぐみさん=拉致当時(13)=が北朝鮮に拉致されて、今年で48年が経過。横田代表は11月にめぐみさんの中学校を訪問した際、「(姉のめぐみさんが)桜の木の下で写真を撮った、その桜を見てきたが、半分幹が朽ちていた。それだけの時間が経過していることを実感した」と話した。
有本恵子さん=拉致当時(23)=の父・明弘さんが今年2月に亡くなり、政府が認定した未帰国の拉致被害者で、存命している親世代は早紀江さん一人だけだ。横田代表は、家族会初代代表で2020年に死去した自身の父・滋さん、21年12月に亡くなった前代表の飯塚繁雄さん、明弘さんの3人の名前を出し、「きっといろんな気持ちを天国で言っているだろう。何をやっているんだという思いもあれば、辛抱強く頑張れという励ましも言っているかもしれない」と吐露。その上で、親世代の健在なうちに全拉致被害者の一括帰国が果たされなければ、「対話局面から制裁局面に入り、これまで以上に強い制裁を日本政府に求める。残された時間がないことを金正恩総書記は知る必要がある」と強調した。
北朝鮮による拉致の可能性を排除できない「特定失踪者」の家族たちが抱える問題も同様だ。13日のシンポジウムでは、1972年に青森市内で失踪した平山政子さん=当時(25)=の兄、勲さんがビデオメッセージを寄せたが、特定失踪者家族会事務局長の竹下珠路さんによると、最初に登壇を依頼した際は「病気でいつまで持つか分からない。東京にも行けない」と断られた。竹下さんが「自宅まで取材に行く」と説得し、政府側の了解を得てビデオメッセージという形になったという。
これまで積極的に問題解決に取り組んできた被害者家族であっても、昨年は参加できていた集会に今年は出席できなかったり、活動を受け継いでくれる次世代の家族が誰もいないといった声があると竹下さんは指摘。「そういった家族たちの現実があると皆さんに理解していただきたく、今回のビデオでの出演となった」と説明した。
一方で、10月にはトランプ米大統領との面会が行われるなど、25年は家族会にとって大きな動きのある年でもあった。シンポの中で家族会の飯塚耕一郎事務局長は「米国政府から『共に戦う』との言葉を得て心強い」と言及。日本政府に対しては、日朝ハイレベル協議の再開と共に「拉致問題と核ミサイル問題を切り離し、命の問題である拉致問題を最優先で進めるべきだ」と求めた。
報道陣から来年の展望について尋ねられた横田代表は「どうやって会話に持ち込むかが外交の腕の見せどころだ」と指摘。北朝鮮側が交渉に動きたくなるようなシナリオを、高市早苗首相自身が熱量を込めて呼び掛けることで「今年よりも明るい兆しが見えてくるのではないか」と意見を述べた。
高市氏は問題解決のため、「手段は選ぶつもりはない」と断言している。〝タイムリミット〟が迫る中、来年こそ被害者家族の悲願達成につながる年にしなければならない。





