
自民党と日本維新の会による連立政権が誕生するのと同時に、スパイ防止法制定の動きが進んでいる。参院選では保守系政党がそろって同法を「公約化」したが、臨時国会では具体的な「法制化」に向けて動きだしている。(スパイ防止法取材班)
首相就任後、国会での初の党首討論に臨んだ高市早苗首相(自民党総裁)は11月26日、スパイ防止法について「速やかに法案を策定する」と述べた。どういう名前になるか分からないと前置きし、「インテリジェンス・スパイ防止関連の法制を作らなければいけないと自民党の参院選の公約にも書いた」と語った。現在、考えているものとして、「まず基本法的なもの、そして外国代理人登録法、ロビー活動公開法などについても、今年、検討を開始して、速やかに法案を策定する」と説明した。
質問した参政党の神谷宗幣代表は、「国民は、政治とカネの問題や国会議員の定数よりも、国力が落ちて生活が苦しくなっていることに不満を持っていると感じている。その一因となっている、国民の情報や富を奪い、国に損害を与えている行為を止めたいと思っている」と述べた。
参政は11月25日、スパイ防止関連2法案を参院に単独提出した。
「防諜(ぼうちょう)に関する施策の推進に関する法律案」は、スパイ防止法制定の工程などを盛り込んだ「プログラム法案」だ。現在の内閣情報調査室を「内閣情報調査局」に格上げして政府の司令塔組織にし、施行から「2年以内」に法律を整備するとした。「防諜」を「外国により行われるものによる悪影響を防止すること」と定義した。
スパイ防止に向けた施策推進のための「防諜基本方針」の策定や講じた施策に関する国会への年次報告を義務付ける。外国からの指示などで日本の選挙や政策決定に影響を及ぼす恐れがある活動をする場合に、事前の届け出や定期的な報告を求め、届け出や報告をしなかった者を処罰すると明記した。
併せて提出した、特定秘密保護法などの改正案では、外国の利益を図る目的で日本の安全を害し、日本国民の生命・身体に危害を及ぼす恐れがあることを知りながら特定秘密などを漏らしたり、文書を毀棄(きき)したりした場合の罰則として拘禁刑を盛り込んだ。
法案提出後、神谷氏は記者団に「実効性のある法律にするには罰則は絶対必要だ」と強調。「与党と一緒に取り組めると考えている。何か一緒になれるのであれば予算にも協力できる」と述べ、連立政権合意書に「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」整備を盛り込んだ自民党と日本維新の会に対し賛同を呼び掛けた。
国民民主党は翌26日、衆院にスパイ防止法関連法案を単独で提出した。参政よりも広義なもので、インテリジェンス(情報活動)の態勢整備の工程を示した。
「国際情勢の複雑化、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備、情報通信技術の活用の進展等に伴い、外国によるわが国に対する不当な影響力の行使の脅威(いわゆるスパイ行為を含む)が増大している」ことが背景にある。
法律公布から1カ月以内に、首相を本部長とする「インテリジェンス態勢整備推進本部」を内閣に設置し、施行から3年以内の具体的な法整備を目指している。
国民民主案では、外国の利益を図ることを目的とする活動を行う場合の届け出制度を創設し、インテリジェンスを担う機関と実施状況を管理する行政組織を、いずれも独立した形で整備するとした。参政と異なり、罰則規定は盛り込まなかった。
スパイ問題に詳しい元警視庁北京語通訳捜査官の坂東忠信氏は本紙に対し、「企業・団体や米国に忖度(そんたく)する必要のない尖(とが)った参政党の案が良いのではないか」と話している。
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