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それでも中国人スパイは「脱日本」せず

漫画家 孫向文

 最近中国政府は、高市首相が台湾問題で発した一言に過剰反応。「日本観光は控えよ」「留学も控えよ」と“脱日本キャンペーン”を展開しています。

 中国国民からは「本当は日本に行きたいんだぁ!」という声が聞こえてきそうですが、一つだけ確実に言えることがあります。それは、本物の中国人スパイだけは「脱日本」することなど絶対にあり得ない、ということです。

 表面上は反発しているものの、実際には日本に張り付き、むしろこれを好機とばかりに浸透工作を強めようとしています。実際、XなどのSNS上では、この“政治ショー”に騙される日本人は少なくありません。

 一方で、日本では高市首相の誕生をきっかけに参政党や日本保守党との連携でようやく「スパイ防止法」が本格検討の段階に入ろうとしています。戦後80年かけて、ようやくここまで来たと言えるでしょう。遅すぎると言えばそれまでですが、そこで今回は、欧米における最新の、しかも衝撃的な「中国人スパイ事情」について紹介していくとともに、私の提言が日本のスパイ防止法の制定、今後の審議の一助になれば幸いです。

イギリスから学ぶ「中国スパイ浸透の現実」

 11月18日、BBCが発表した調査報道は衝撃的なものでした。21世紀に入って以降、中国は英国に総額450億ポンド(約9兆円)もの投資を行い、その中には軍事転用可能な技術獲得の結果となった案件も含まれていたということです。

 実際に中国が本格的に動き始めたのは2015年。「中国製造2025」で半導体・航空宇宙・EV(電気自動車)・ロボットなどの10分野で“世界トップを目指す”と宣言した年からになります。

 BBCは象徴的な例として、ハートフォードシャー州の半導体企業イマジネーション・テクノロジーズを挙げています。2017年に米国の私募会社(株式や債券などの有価証券を、特定の少数の投資家に対して限定的に募集・販売する手法で設立する会社のこと)に買収されましたが、その資金源は中国政府系ファンド「中国改革基金」でした。

 イマジネーション・テクノロジーズの元CEOブラック氏が北京に呼び出され、その際「技術を全面移転せよ」と「直々に命じられた」と証言をしていて実に生々しいものでした。

 英国政府通信本部(GCHQ)の元長官は「英国は寛容すぎた」とまで語っています。わかりやすく言えば、「警戒心ゼロで門戸開放したら、スパイまで入ってきてしまった」という話です。

現代の中国スパイは「人間」ではなく、「法人・投資・研究機関・アプリ・AI」の複合型に変貌

 BBC安全保障アナリストのコレーラ氏は警告しています。今の中国の浸透工作は、スパイ映画に出てくるようなスパイというよりも、「法人・投資・研究機関・アプリ」という形でやって来るとのこと。目的は単純で、相手国を経済依存に沈め、政治判断まで丸ごと握ってしまうということです。

 2024年には中国系ハッカー集団「塩台風」が、英国政治家の通信を盗聴していたことまで判明しました。英国のサイバー当局は、「中国は膨大な個人情報を収集し、AIで世論操作の土台を作っている」と警鐘を鳴らしています。

 今やスパイ活動は「国家レベルのデータ泥棒」にとって代わり、それを支えているのは「投資・留学生・研究協力・アプリ・企業買収」になっているといえます。

日本は英国以上に危険を孕んでいる、経済安保を強化せよ

 経済協力と安全保障のジレンマについては、日本は英国以上に深刻だと言えます。

 英国の財務相は「中国と関わらないという選択肢は存在しない」とまで語っています。この発言は正しいと言えます。しかし同時にもし関われば必ずリスクも付いてくる、という裏返しの告白といえます。

 欧州はEV・バッテリー・レアメタル・原子炉・グリーン技術まで、じわじわと中国依存を深めています。例えばTikTokという「情報収集アプリ」が、若者達の間で堂々と稼働中だといえるでしょう。

 そして、この問題について日本では、「英国どころではないレベル」になっていて実に深刻な状況です。地理的にも、経済的にも、人的にも、中国との接触密度は比較にならないほど高くなっています。

 だからこそスパイ防止法は急務だといえます。スパイ防止法がなければ、日本はずっと丸腰のまま、だといえます。

 結論として、日本は「スパイ天国」からやっと卒業準備段階に入ったといえます。しかし、これを本気で成立させられるか否かが試金石になるでしょう。たとえ中国が観光客や留学生を減らすと脅したとしても、日本にとって本当に危険なのはその裏で増え続ける「経済・データ・企業買収型スパイ活動」だということです。

 しかしながら、現況の日本の経済系・左派メディアはひたすら「中国人観光客と中国人留学生が減れば日本はとんでもない損失になる!」という「中国お客様万歳報道」を煽っています。そんなわけで中国は絶対に「脱日本」はしません。むしろ今こそぴったり張り付き、日本のどこかにスキマがないかと探っています。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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