トップ国内【連載】スパイ防止法制定―公約化される背景(5)危機管理投資の重要な一環

【連載】スパイ防止法制定―公約化される背景(5)危機管理投資の重要な一環

連立政権樹立の合意書を交わす自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表=10月20日午後、国会内

 自民党の高市早苗総裁が首相に就任するに当たり、連立パートナーがスパイ防止法制定を公約した日本維新の会に代わったことで、「スパイ防止法」制定を含めたインテリジェンス(情報活動)体制を強化する論議が高まっている。

 自民と維新は連立政権合意書で、「インテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法およびロビー活動公開法等)について令和7年に検討を開始」すると明記。自民の小林鷹之政調会長は10月30日、記者会見で外国勢力やその代理人が国内で情報収集活動する場合に登録を義務付ける制度が必要との考えを示した。

 所信表明演説で高市首相は、「この内閣における成長戦略の肝は、『危機管理投資』」だと強調し、「経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障、健康医療安全保障、国土強靱(きょうじん)化対策などのさまざまなリスクや社会課題に対し、官民が手を携え先手を打って行う戦略的な投資」をする方針を表明した。そのための重要な情報は守秘されなければならない。

 また、青山繁晴副環境相は「中国の火葬場スパイを許すな」と題した自身のユーチューブ番組で、「火葬場や斎場に中国資本が入っている」と指摘。葬儀では故人とその家族の個人情報が集まり、役所、警察、病院などの機関が密接に関わるため、斎場を拠点に情報工作が可能になってしまうと警鐘を鳴らした。

 スパイ防止法は、主に国家の機密情報を外国に漏らしたり、外国勢力のために不正に情報を収集したりする行為を処罰することを目的とする。日本には現在、刑法の外患誘致罪や自衛隊法の守秘義務規定はあるが、スパイ行為が明確に定義されておらず、「包括的に禁じる法律が存在しない」(高市氏)。

 外国で認められる捜査手法が使えず、現行法による取り締まりでは法定刑が必ずしも十分でない。そのため、日本は長らく「スパイ行為を処罰できない唯一の先進国」と指摘されてきた。高市氏はまた、13日の参院予算委員会で「外国勢力から日本を守っていく。そういった対応を検討していきたい」と答弁した。

 スパイ防止法の制定を巡っては、1982年のレフチェンコ事件(日本で活動した元ソ連スパイが米国に亡命し、下院秘密聴聞会で日本人協力者について証言した)を契機に制定を求める保守系の運動が高まり、85年に自民党は「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」を国会に提出した。が、報道の自由や国民の知る権利を制限する恐れがあるとして、左翼勢力やマスコミが強く反対し、審議未了で廃案となったことがある。

 第2次安倍政権以降、インテリジェンス強化の動きが進み、2013年に安全保障の機密情報の漏洩を防ぐ目的で特定秘密保護法が制定された。22年には経済政策と安全保障を一体的に進める経済安全保障推進法が整備された。

 今年5月には、セキュリティー・クリアランス法が施行された。国家機密や安全保障に関わる機密情報にアクセスできる資格者を政府が認定するものだが、スパイ行為を直接取り締まれない課題が残る。

 インテリジェンスを扱う国家機関には、内閣情報調査室(内調)のほか、警察庁や法務省、外務省、防衛省にそれぞれ組織がある。縦割りで司令塔不足の声を受け、14年に外交・安保政策を担う「国家安全保障局」が創設された。

 高市政権では「国家情報局」を新設し、情報を扱う分野を一元化させる方針。連立合意書では「令和8年通常国会において、内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、『国家情報局』及び『国家情報局長』を創設する」と明記した。

 国家の安全保障と直結する「大胆な危機管理投資」において、インテリジェンス機能の強化は不可欠だ。

(スパイ防止法取材班)

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