
諜報に優れる中国は脅威
スパイ防止法制定は参院選挙で複数の政党が公約に掲げ、自民党・日本維新の会の連立政権政策合意書に盛り込まれた。近年、中国の情報活動が活発化し逮捕者も出るスパイ事件が欧米各国で起きている。同法のない日本の問題点を専門家のインタビュー、各国の状況などから探った。(スパイ防止法取材班)
――7月の参院選でスパイ防止法が一つの焦点となった。同法のないわが国で40年前に自民党から議員立法で国会に提案されたが廃案になり、立法化の動きが滞った。なぜ再び注目されていると考えるか。
人間の防衛本能のように、暑いときは服を脱ぎ、寒くなるとコートを着る。国家も同じだ。冷戦時代にラストボロフ事件(1954年)や宮永陸将補事件(80年)などのスパイ事件があったが、米国が超大国でがっちりと日本をプロテクトして、日本は危機感を持つまでに至らなかった。ビニールハウスにいたようなものだ。もう一つは自民党の中に左派がいて(スパイ防止法制定に)一枚岩になりきらなかった。
ところが今日、中国が尖閣諸島などへ進出しようとし、北朝鮮はミサイルを撃つ。切実な世になった。冷戦期のソ連時代に太平洋正面の極東ソ連軍は欧州圏から遠く無駄な兵力という見方もあったが、中国はすぐ近くで日米と兵力が向き合っている。そういう観点から言えばものすごい脅威だ。
中国は孫子の兵法で間諜(スパイ)に触れるなど古来、情報戦に優れている。多くの人員による諜報(ちょうほう)力があって、日本にも親中派団体を数々つくっており、それのみならずサイバーや盗聴など考え得るあらゆる手段で情報を取る。それらをプロテクトしないと、国家の情報機密が抜かれて日本の手の内を知られる。
それ以外に企業の先端技術が盗まれるし、恫喝(どうかつ)するためのサイバー攻撃がある。これらが日常茶飯事になり、温室の中にいた日本が、風穴を開けられて隙間風どころか寒風が入るようになって、自分自身が身を固めるしかない。その一つがハードウエアの防衛で、陸海空自衛隊だ。もう一つはインテリジェンス(情報活動)だ。
――どのようなインテリジェンスか。
三つの面があると思う。一つは、高市早苗首相が創設すると言っている「国家情報局」。日本が情報を得る手段を強化する。もう一つはプロテクトの強化で、米国で言えばFBI(連邦捜査局)のような全国組織が必要だ。日本は都道府県の警察の一部門として公安警察がある。もう一つは情報を使った工作だ。
日本から情報を抜かれない。情報攻撃を受けない。さらに言えば工作を受けない。中国など相手国が諜報活動を仕掛けてくるなら、それに対抗して偽情報を流すなどカウンター・インテリジェンスをやらないといけない。
対称性と非対称性という言葉があるが、インテリジェンスや諜報の面で国対国が対称性のあるものにしなければならないのは理の当然だ。例えば西洋列強の植民地進出時代に大航海で連れて行った兵隊は少数だが鉄砲を持っている。相手になる原住民は弓矢だ。勝負にならない。それを非対称性という。中国が〝鉄砲〟、日本が〝弓矢〟でいいのか。
――戦後のスパイ事件はソ連・ロシアの事件はあったが、中国についてあまり事件になっていない。
それは検察・警察当局はロシア(ソ連)と自衛隊を捕まえようとしたということだろう。冷戦構造の時に警察、公安の最大の的(まと)がソ連だった。
――今では中国のスパイの方が脅威になっているのではないか。
ロシア人は白人で日本では目につくが中国人は目立たない。中国は日本と同群同属のような黄色人種であり、漢字の文化だ。「用間」(スパイの用い方)を説いた孫子の兵法などもあり、どんどん入ってくる。
――自衛隊で中国のスパイ活動について警戒したことは。
イージス護衛艦「しらね」乗組員と結婚した中国人妻が不法滞留で逮捕された事件(2007年)があったが、家宅捜査でたくさん機密情報が発見された。普通の人でも嫁不足で、自衛隊はさらに結婚の機会が少ないから、日本人以外と一緒になる者が少なくない。
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