
日本維新の会の吉村洋文代表、公明党の斉藤鉄夫代表、国民民主党の玉木雄一郎代表.jpg)
「解党的出直し」を掲げた4日の自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が女性初の総裁に選ばれた。少数与党ながらも党内基盤を固めた今、急務となる連立拡大という難題にどう挑むのか。
「やるべきことが山ほどある」と高市氏は決意を表明。党員票の強固な支持を背景に、物価高対策をはじめとする国民生活直結の課題解決、自身のビジョンである国力強化に向け、「全世代総力結集」を同僚議員らに呼び掛けた。党役員人事構想は、鈴木俊一幹事長(現党総務会長)を軸に検討が加えられ、7日にも新たな党執行部が発足する見通しだ。
高市新総裁選出は株式市場に影響を与えた。6日、総裁選後、最初の日経平均株価は、前週末比2175円26銭(4・8%)高、4万7944円76銭と最高値を更新。高市政権での日本経済拡大への期待を表す結果となった。自民は失墜した国民からの信頼回復に向け、具体的な政策実行が求められる。
だが、連立拡大は一筋縄ではいかない。首相指名選挙が行われる臨時国会召集までに枠組みを固めるため、高市氏はスピード感を意識してきたが、「相手のあること」とも述べ、現実に向き合う慎重姿勢も崩さない。
国民民主党とは昨年末の公明党を含む3党合意を基に、繰り返し強調されるガソリン減税、また「年収の壁」解消を早期の成果として目指す。日本維新の会とは、社会保険料引き下げ、副首都構想を軸に、政策一致点を探る協議を始める方向だ。最大野党の立憲民主党を意識した、中低所得者向け「給付付き税額控除」の制度設計の進捗(しんちょく)も、安定した国会運営の鍵となる。
こうした具体的連携活動を積み上げ、実績の評価とともに信頼感を構築、高市氏が提示した憲法、外交・安全保障、財政における基本政策で熟議を重ね、連立固めを狙いたいところだ。
しかし、土台となるはずの自公関係に牽制(けんせい)球が投げられている。公明の斉藤鉄夫代表は総裁選前から、高市氏の路線に一方的に懸念を示していた。当選後の表敬訪問にも、「政治とカネ」「靖国参拝」「外国人共生」を巡る不一致を強調したのだ。
公明自体、衆参で議席減(衆院24、参院21)による党勢衰退に直面するが、自民単独では衆院で37、参院で25議席不足と、過半数に及ばないため、議席数の影響力を背景に揺さぶりを掛ける。靖国参拝を持ち出す公明との関係維持に、保守の党員票で大きな支持を受けた高市氏はジレンマに立つ側面もある。丁寧な説明が必要になろう。
総裁選の事前予想を覆した高市氏選出は、「懸念」を隠さなかった公明だけでなく、野党にとっても想定外。維新の吉村洋文代表は連立協議を持ちかけられたら「協議するのは当然」と述べるにとどめ、国民の玉木雄一郎代表は「速やかな物価高騰対策に協力したい」と語り、踏み込んだ発言は避けた。
自民としては、石破茂政権との連立拒絶から軟化、前向きな態度を示す維新(衆院35、参院19議席)、国民(衆院27、参院25議席)との関係を足掛かりに、交渉を進めたいところだ。連立拡大の成否は、高市氏の手腕によるところも大きくなる。総裁選決選で党員票を反映した都道府県票に加え、議員票でも次点を凌駕(りょうが)した投票結果が交渉力の背景だ。
維新や国民との間で合意した政策が遂行され、両院での過半数に向けた議席数の補完が加速される可能性もある。自民自体の議席増を狙った衆院解散も視野に、新総裁は常在戦場の覚悟で臨むことになるが、各党、腹の内を秘めながらの交渉がスタートする。(総裁選取材班)





